『都市における明るい高齢化』について

 

1.はじめに

 今回学校で上記のテーマをいただいて、都市が高齢化にとってどのようなメリット、デメリットを持つか再度考えてみた。まず、現状から高齢社会における都市のメリット、デメリットを整理するとともに、自分なりの将来的な理想像を検討してみた。

2.高齢社会における都市のメリット

 高齢社会というと保健・医療・福祉、特に福祉というイメージが先行してしまうが、実際には65歳以上の高齢者の内、寝たきり・痴呆性・虚弱高齢者の割合は10〜15%に留まると予想され、残りの8割近い健常な高齢者を中心に考えることも重要である。
 健常高齢者の日常活動を考えると都市に居住するメリットは多い。
 まず、生活の利便性であるが、都市は生活に必要な食料品店、金融機関、病院、郵便局、公園、コミュニティセンター等の施設が近隣にあり、電車、バス等の交通機関も充実している。健常であるとは言え、高齢化により確実に体力が衰えることを考えると、狭い活動範囲で多くの機能が集積する都市の利便性は大きい。また、生活の選択肢充実という面でも都市にメリットがある。都市は様々な人、情報、商品・サービス等が集積しており、このような選択肢の幅の広さは高齢者にとっても重要ではないだろうか。加えて、環境のユニバーサルデザイン等においても都市の方が充実しており、この面においても生活利便性は高い。これに関しては、正確な統計はないが様々な地域を訪問した経験則として、やはり都市の方が高齢者や障害者に対応したユニバーサルデザインへの配慮が進んでいる。
 一方、保健・医療・福祉の面ではどうであろうか。
 在宅の高齢者に対して保健・医療・福祉サービスを提供する場合、サービス提供者である医師や保健婦等の移動時間が大きなネックとなる。この点において住居が集積している都市では移動時間削減等のメリットが考えられる。これはサービスを受ける高齢者が移動する場合においても同様である。また、保健・医療・福祉サービスの24時間提供や、サービス提供のための労力確保という点に関しても都心にメリットがある。高齢者の介護に関しては、介護体制が整備されてきたとは言え、依然として家族が労力を担っている部分が大きく、被介護者の多くも家族による介護を望んでいる。都市であれば、別居しているかもしれないが、子供は通える範囲で住んでおり(人口や職場の集積から)、家族の介護を受けられる可能性が高くなる。逆に地方に住んでいると、子供が都市に住んでいたりして、家族による介護は難しくなる。

3.高齢社会における都市のデメリット

 都市では逆に生活面でのデメリットもある。
 交通面では、自動車の量が多いため交通事故等の危険性が高くなる。交通事故死亡者の内3割が高齢者であることを考慮すると、自動車の多い都市は高齢者にとって安全とは言い難い。また、電車等の交通手段に関しても混雑があり、どの時間帯でも高齢者が安心して利用できるとは言えないようか気がする。
 次に経済面であるが、生活費が高い等のデメリットがある。特に住宅に関わるコストが地方と比較して高くなり、年金等で収入が固定される場合は、地方の方が生活コストを安くすることができる。また、都市では投機的な要因により、知らない間に自己所有の地価が上昇し、固定資産税が上昇したり、子供が相続税が払えず財産を償却せざる得ない等の問題が発生する可能性がある。
 前述した集積によるメリットに関しても、欠点がある。自然やアウトドア等を志向する高齢者にとっては、自然の少ない都市は生活の場として不十分なものとなる。また、光化学スモッグ、ヒートアイランド現象等、生活環境面においてもいくつかの都市特有の問題があり、高齢者の健康へのデメリットとなる。
 この他、感覚的ではあるが都市にはコミュニティの問題もあると考える。旧来の住民と新住民が混在する地域が多い都市においては、近所付き合い等を含むコミュニティ活動が地方と比較して希薄であると感じられ、これが老後の生活に大きなデメリットになる気がする(特に男性において)。高齢者になると体力的な面から行動範囲が狭くなるが、近所にコミュニティがないと高齢者は孤立する可能性があり、夫婦ではなく単身者ともなればその孤独感は大きなものになりかねない。
 また、都心では特定の地域における問題もある。多摩ニュータウン等の膨大な団地においては移住してきた人達の年齢層が偏っていることから急激に高齢化が進むことになる。この場合、保健・医療・福祉サービスの体制整備や消費構造の変化等、多くの面において問題が起こる可能性がある。

4.今後の高齢化のあり方

 昨今における高度情報化の進展は都市における集積のメリットを緩和し、地方の利便性を相対的に向上させる可能性があり、ある程度の情報リテラシーを有する団塊の世代が高齢者になった折には、都市から地方への高齢者の移住も増えるのではないか。しかし、保健・医療・福祉サービス提供のためのコスト軽減等、社会的な効率性を重視することを考えると都市居住を推進することが望ましいであろう。
 それでは、今後、都市において明るく高齢者が暮らしていけるためにはどのようなことが望まれるであろうか。
 まず、コミュニティの形成が重要である。高齢者同士の交流の場を行政なりNPOをなりを中心に設ける必要があり、具体的には欧米で行われている会食サービス等も有効であろう。高齢者の外出を促すような景観、ユニバーサルデザイン環境、利便性の高い交通手段の整備等も望まれる。また、一方で、企業のボランティア休暇制度等と連動して、働いている時期(40〜60歳)から地域コミュニティに参加してもらう仕組みを作ることも必要であろう。
 インターネット等の発展は地域を越えたコミュニティ形成の可能性を示唆しているが、当分はフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションを完全に代替するものにはならないであろう。したがって、今後も物理的に近接した地域を中心にしたコミュニティ形成が重要になると考えられる。
 次に重要なのは、経済面、特に住宅、土地等に関する支出の安定化を図ることである。既存のアンケート等を見ると老後の生活において金銭面に不安を持っている人が多数おり、これが貯蓄率の高まり(消費の停滞)につながっている。都市における経済の活性化、老後の安心した生活の創出のためにも、老後の支出が安定するような仕組みづくりが望まれる。具体的な方策に関しては、財源の問題とも複雑に関係してくるので、ここでは省略する。

5.おわりに

 10年後、20年後の高齢者がどのような価値観を持っているか分からないが、価値観向に関しては、固定される部分と年齢に応じて変動する部分があると思うので、将来の高齢者のライフスタイルは、その年代の現状のライフスタイルを色濃く反映した形になると考えられる。現在の労働力世代が都市を嗜好していることは人口の集積等を見ても明らかで、その嗜好が固定されている価値観であるならば、都市における高齢者の居住が進むような気がする。実際、某ビジネス誌においてビジネスマンに対して行ったアンケートにおいても老後に暮らしたい都市は東京がトップだったと記憶する。
 私個人的には、老後の居住地は都市でも地方でもどちらでも良いと、現状では考えているが、孤独は嫌いなので、やはり自分(含む家族)を受け入れてくれるコミュニティがある地域が良いと思っている。

高齢化による価値観の変化

図 高齢化による価値観変化のイメージ

 

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