環境税について

 

1.環境税とは

  環境税は環境の利用者に課せられる税金である。通常、環境は所有者が存在しないように見えるので、環境が浪費される傾向があり、これを改善するために企業や国民に課せられる税金を指す。環境税というとCO2 に課せられる炭素税を指す場合もあるが、今回はゴミへの課税等、環境全般に関わる税金を環境税として考えることとする。

2.環境税の必要性に対する個人的見解

  公共経済学的な見地から考えると、現在の我が国の経済活動やそれを取り巻く制度は地域間や所得層間の格差を緩和する方向にはある程度機能していると考えられるが、世代間の格差を緩和する方向には機能しているとは言い難い。むしろ、現世代を優先するあまり将来の世代に対して負債を背負わしている、つまり、将来の世代の経済的な価値を現世代に移転している傾向にある。これが顕著に見えるのが膨大な財政赤字であり、世代間の責任分配が曖昧なまま、現状での便益を確保するため拡大を続けている。環境も同様であり、現世代の便益が優先され、それによる地球環境の悪化が将来の世代にもたらされる構造になっている。環境税は企業や国民の行動を環境の損失が少ない方向に誘導するものであり、環境に関する世代間の格差を緩和するための手段として必要性が非常に高いと考える。
  なお、CO2 は排出量等を見ると、先進諸国と発展途上国との格差も存在しており、これらの緩和を行うことも必要であろう。

3.環境税の考え方

  環境税に関しては、ピグーとボーモル=オーツの考え方が有名である。ピグーは私的限界費用と環境負荷等を考慮した社会的限界費用との差が環境税に相当すると考えた。しかし、この考え方は社会的限界費用の測定が非常に困難であるという問題があり、そこで、ボーモル=オーツは汚染物質の排出量といった定量的に把握が可能なものに対して課税することを提唱した。CO2 の排出量に課税する炭素税はボーモル=オーツの考え方を基礎とするものであり、環境税の制度運用上の効率性、説明性等の観点からこの考え方が主流となっている。ただし、ボーモル=オーツの考え方においても1単位当たりにどの程度の税金を課すことが望ましいか判断が困難であり、また、税金は制度であることから柔軟に調整ができないことも問題点として挙げられる。
 また、環境税の目的が税収ではなく、環境負荷の低い活動への誘導であることを考えると、徴税だけでなく、環境への負荷の低い活動への税控除等も環境税の制度として捉えることができる。

4.我が国における環境税実施に関する個人的見解

  我が国においても企業や個人の活動を環境負荷の低い方向に誘導するため環境税を活用することが有効であるが、課税対象、課税方法、税収の用途等に関しては十分な検討が必要である。
  課税対象に関しては、基本的に汚染物質の排出者に課税することが基本であるが、汚染物質の計測性や実施コストによって課税対象も異なってくる。課税方法に関しては、徴税だけでなく、補助金や税控除等を適当に組み合わせることが望ましいであろう。
  例えば、自動車の排出する汚染物質であるが、実際に自動車のマフラーすべてに計測器を設置して汚染物質排出量を計測することは不可能である。そこで、北欧諸国で行われているように燃料であるガソリンそのものに税金を課すことが想定される。このガソリン税において完全な公平性を保つためには、利用している自動車の環境負荷等も考慮することが妥当である。つまり、「ガソリンの消費量×自動車個々の環境負荷」で税金を割り出すことで低公害車購入へのインセンティブが創出される。現在、我が国では一律に低公害車への補助金を支給する方法が取られているが、消費者がどの程度走るか分からないことを考慮すると、上記の方法の方がより応益的であると考えられる。ただし、自動車の環境負荷のランク付けをしたり、それをガソリンスタンドのレジに反映する等の実施コストが大きく、実際には、補助金+ガソリン税が効率的であろう。
  環境税の目的は、税金を徴収することではなく、人や企業の活動を環境負荷の低い方向へ誘導することであるから、環境負荷による税金の違いが実感できるような仕組みにすることが非常に重要である。つまり、国民に対して一律に環境税をかけたのでは、環境負荷の低い活動へのインセンティブは働かないので、実施コスト等を考慮しつつも可能な限り応益的にすることが望ましい。
  税収の用途に関しては、環境負荷の低い活動に与えられるインセンティブ(補助金、背税控除等)への活用が適当であろう。その他、環境意識の啓蒙活動資金等も用途として考えられるが、環境税本来の目的から他の用途への転用は望ましくなく、行政(地方公共団体)においては環境税を財源として捉えるべきではないと考える。

5.環境税の経済に与える影響についての個人的見解

 炭素税、だけでなくゴミや排水等、多様な環境汚染を考慮した環境税の整備が、急務であるが、急激な導入は国民や企業の活動に新たな負荷を創出し、国内の経済活力低下や企業の国際競争力低下につながる恐れがある。したがって、経済活動への影響を考慮した段階的な導入はやむを得ないであろう。だだ、現状の歳出には無駄な公共事業もあることから、これらの事業を見直すことにより、必要なくなった税源を環境税に振り替えることで、企業や消費者の負荷を軽減することが可能である。具体的に不採算道路の建設に利用されているガソリン税の環境税化等が挙げられよう。また、現状において環境負荷の大きい製品を生産している特定企業への影響も苦慮されるが、このような企業には猶予期間を与えることで、環境対策の再検討を促す等の対応を取らざる得ないであろう。

6.その他

 CO2 の排出量を見ると、米国、中国、ロシア、日本の4カ国で全世界の排出量の半分を占め、上位15カ国で全世界の4分の3を占めるという驚くべき統計が出ている。CO2 のような気体に関しては流動的であり全世界的な影響あること、先進諸国と発展途上国との間にCO2 排出における格差あること、世界的な機関により何らかしらの統制を行い、公平性を確保することが急務であろう。このような統制は、ODA等の支援とは独立して検討されることが望ましいであろう。  

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