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3.近世
3-1.ヨーロッパ人の渡来
3-2.織豊政権
3-3.桃山文化
3-4.江戸幕府と鎖国
3-5.幕政の安定
3-6.経済の発展と町人の台頭
3-7.元禄文化
3-8.幕府の政治改革
3-9.幕政の衰退と近代への動き
3-10.化政文化


3.近世

3−1.ヨーロッパ人の渡来

・ポルトガルとスペイン

  ポルトガル――東回り

   インドのゴア→マラッカ→中国のマカオに居住権(1557)

  スペイン(イスパニア)――西回り

   フィリピンのマニラを根拠地(1571)→平戸来航(1584)

 

南蛮貿易南蛮人(=ポルトガル人・スペイン人)との貿易)

  鉄砲の伝来(1543)…ポルトガル人が種子島漂着→堺・近江国友・紀伊根来などで鉄砲製造開始

  南蛮貿易

   貿易品――輸出…銀・刀剣・海産物・漆器

        輸入…生糸・鉄砲・火薬・絹織物・皮革

   貿易港――平戸(松浦領)、府内(大友領)、長崎(大村領)など

 

・キリスト教の伝来

  背景――宗教改革に反抗して、ロヨラがイエズス会(耶蘇会)結成

  フランシスコ=ザビエルの布教――鹿児島に上陸して、貿易の利益を利用して山口・府内などで布教に成功

  宣教師の活動

   ガスパル=ビレイラ…13代将軍足利義輝の許可で畿内布教

   ルイス=フロイス…織田信長に謁見。『日本史』の執筆

   オルガンチノ…京都に南蛮寺設立

   ヴァリニャーニ…天正遣欧使節1582〜1590)――伊藤マンショ・千々石ミゲル・中浦ジュリアン・原マルチノ

           活字印刷機を伝える

  教育機関

   コレジオ…宣教師養成学校

   セミナリオ…神学校

  キリシタン大名――大友義鎮(宗麟)・大村純忠・有馬晴信

 

南蛮文化――商人・宣教師らが伝えた天文・地理・医学・美術・出版などのヨーロッパ文化

  出版――キリシタン版(天草版)

  南蛮屏風

 

3−2.織豊政権

・織豊政権――近世の基本構造を確定

  織田信長の統一事業

   桶狭間の戦いで今川義元を討つ(1560)→足利義昭を征夷大将軍に擁立し、入京(1568)→姉川の戦い(1570)→比叡山焼き打ち1571)→足利義昭を追放、室町幕府滅亡(1573)→長篠の戦い1575)→安土城築城(1576)→石山本願寺との講和(1580)→本能寺の変(1582)

  信長の軍事・経済・宗教政策

   軍事――兵農分離。足軽鉄砲隊の結成(→長篠の戦いで活躍)

       徳川家康と同盟を組む

   経済――楽市楽座(楽市令)…美濃加納・安土山下町

       関所撤廃→商業・交通の発達

       指出検地、撰銭令、重要都市の直轄(堺・京都など)

   宗教――仏教(一向宗・日蓮宗)弾圧、キリスト教に理解

       安土城に仏教・道教・キリスト教融合の宗教空間(安土城六層・七層)

  羽柴秀吉(→豊臣秀吉)の統一事業

   山崎の戦いで明智光秀を討つ(1582)→賎ヶ岳の戦いで柴田勝家に勝利、大坂城築城(1583)→小牧・長久手の戦い1584)→四国平定(1585)→九州平定(1587)→小田原攻め、奥州平定(1590)→全国統一の完成

  豊臣政権

   財源――蔵入地(約220万石の直轄地)、直轄都市(京都・堺・伏見・大坂・長崎)、直轄鉱山(佐渡金山・但馬生野銀山など)

   政治機構――五大老…徳川家康・前田利家・毛利輝元・小早川隆景・宇喜多秀家・上杉景勝

         五奉行石田三成・浅野長政・増田長盛・前田玄以・長束正家

   朝廷の権威利用――関白就任(1585)→太政大臣就任・豊臣賜姓(1586)→御陽成天皇を聚楽第に迎える

  秀吉の軍事・経済・外交政策

   軍事――刀狩令1588)で兵農分離・一揆防止→身分統制令1591)、人掃い令(1592、豊臣秀次)

   経済――太閤検地…農民の直接把握、荘園制の崩壊

            度量衡(町・段・畝・歩)の統一、石盛(田畑等級別の1段あたりの標準収穫高)・石高(石盛×面積)の制定

            検地帳に耕作者を登録→一地一作人の原則確立

       貨幣鋳造(天正大判など)、交通路の整備、都市の豪商保護

   外交――キリスト教対策…バテレン追放令1587)→南蛮貿易は引き続き奨励したため、不徹底

       朝鮮出兵(文禄の役1592〜1596)、慶長の役1597〜1598))→失敗で豊臣政権衰退

 

3−3.桃山文化
桃山文化――豪華・現実的。異国文化(南蛮文化)の影響を受け多彩
  建築
   城郭――天守閣の造営
    姫路城(白鷺城)、安土城、大坂城
    伏見城→西本願寺書院などが遺構
    聚楽第→飛雲閣、大徳寺唐門などが遺構
   茶室――妙喜庵待庵
   欄間
  絵画
   
障壁(障屏)画
    水墨画――「山水図屏風」(海北友松)、「松林図屏風」(長谷川等伯)
    濃絵
(だみえ)――「唐獅子図屏風」(狩野永徳(かのうえいとく))、「牡丹図」(狩野山楽)、「智積院襖絵楓図・桜図」(長谷川等伯)
   風俗画――「洛中洛外図屏風」
  工芸
   陶磁器――朝鮮侵略で朝鮮陶工を日本へ連行
  芸能
   
茶道――千利休による侘び茶の大成
   
浄瑠璃節(じょうるりぶし)――三味線の普及とともに人形浄瑠璃も始まる
   
阿国歌舞伎(かぶき踊り)――出雲阿国(いずものおくに)がはじめる
   隆達節(隆達小歌)
  生活文化――小袖、一日三食の一般化


3−4.江戸幕府と鎖国

江戸幕府1603〜1867)の成立(江戸時代1600〜1867)

  徳川家康の天下統一

   江戸城入城(1590)→秀吉の死(1598)→関ヶ原の戦いで西軍の毛利輝元・石田三成らと戦い勝利(1600)→征夷大将軍任命(1603)→将軍職を秀忠に譲る(1605)→駿府に移るが大御所として幕政を指導(1607)→大坂の役(大坂冬の陣・夏の陣1614〜1615))で豊臣秀頼を攻め、豊臣家を滅ぼす

 

・江戸幕府の体制(幕藩体制

  経済力

   天領400万石+旗本知行地300万石=700万石(全国の1/4)

   都市・鉱山の直轄

  軍事力

   御目見得以上の旗本5000人、御目見得以下の御家人17000人=直参

  政治機構――月番制、外様大名除外、評定所(最高合議機関)の設置

   譜代大名から任命――大老…最高職で非常時に設置

             老中…政務総括、町奉行・勘定奉行・大目付などを支配

             若年寄…老中を補佐、目付を支配し、旗本を監察

             寺社奉行…寺社・寺社領の行政司法

             京都所司代…朝廷の監察及び西国大名の監視

             大坂城代

   旗本から任命――大目付…幕政・大名の観察

           勘定奉行…幕領(天領)に郡代・代官を置き、財政・民生管理

           江戸町奉行…江戸府内の行政・司法・警察を管轄

           城代…駿府城代・二条城代

           町奉行(遠国)…京都町奉行・大坂町奉行・駿府町奉行

           遠国奉行…山田奉行・日光奉行・長崎奉行・佐渡奉行など

           目付…旗本・御家人の監察

   (三奉行――寺社奉行・町奉行・勘定奉行の三職の総称)

 

・大名の統制

  大名の種類(一万石以上、約270家、――大名の統治領域と支配組織)

   親藩…徳川氏一門、御三家(尾張家・紀伊家・水戸家)

   譜代…関ヶ原の戦い以前から徳川家に従属、石高は少ないが要職につく

   外様…関ヶ原の戦い以後徳川氏に従属、石高は大きいが要職につけず、辺境に配置

  法的統制

   一国一城令1615)

   武家諸法度

    元和令(1615)

    寛永令(1635)――徳川家光参勤交代を制定

  その他

   軍役

   大名の淘汰――改易(領地没収)・減封(領地削減)・転封(国替え)

 

・朝廷・寺社の統制

  朝廷――禁中並公家諸法度1615)

  寺社――宗派ごとに寺院法度。本山・末寺の関係で幕府の統制下に

 

・農民統制

  農村支配の組織

   領主―郡代・代官―村役人(村方三役――名主(庄屋)・組頭・百姓代)―本百姓(田畑1町歩、収穫10石以上)―水呑百姓名子・被官

   五人組…本百姓以下で5戸1組、連帯責任、相互検察、隣保互助

  村政

   年貢の村請制、宗門改、訴訟事務、入会地管理、年中行事、(共同労働)

   村の秩序を乱すものには村八分の制裁

  法令

   田畑勝手作の禁令――五穀以外の栽培禁止

   田畑永代売買の禁令1643)

   慶安の触書(1649)――日常生活全般に対する心得

   分地制限令1673)――名主20石(2町歩)、百姓10石(1町歩)以下の分割禁止

  負担

   本途物成(本年貢)――米納(4公6民→5公5民)

   小物成――雑税

   高掛物――村高にかかる付加税

   国役――治水工事負担

   助郷役――交通補助の夫役

 

・封建的身分秩序

  身分制度(士農工商

   武士…支配階級、苗字・帯刀切捨御免の特権

   農民…人口の80%、厳しい統制

   町人…町奉行―町役人(町年寄・町名主)―町人(地主・家持・地借・家借)

      地子銭(宅地税)、冥加(営業免許税)、運上(各種営業税)

   賎民

    えた…皮革業・牢屋の雑役に従事

    ひにん…遊芸・物乞いに従事、良民復帰も可能

  封建的意識

   家長権強大、男尊女卑(女子三従の教(貝原益軒『女大学』))

 

・初期の外交

  オランダ

   リーフデ号、豊後漂着(1600)→ウィリアム=アダムス(三浦按針(英))、ヤン=ヨーステン(蘭)を登用→平戸商館建設(1609)

  イギリス

   平戸商館建設(1613)→アンボイナ事件の影響で日本退去(1623)

  イスパニア

   ノビスパン(メキシコ)への船に田中勝介が同乗(1610)→支倉常長の慶長遣欧使節1613〜1620)

  ポルトガル

   ポルトガル商人の暴利を抑えるために糸割符制度実施(1604)…糸割符仲間の結成(五カ所商人…堺・京都・長崎、江戸・大坂(1631〜))

 

朱印船貿易と日本町

  朱印船(朱印状を持った船)

  渡航地――ルソン・アンナン・シャム・カンボジア

  貿易家――西国大名(島津・有馬・松浦・鍋島)、商人(角倉了以・茶屋四郎次郎(京都)、末吉孫左衛門(大坂))

  貿易品――輸入…生糸・絹織物・綿織物・砂糖

       輸出…銀・銅・硫黄・刀剣

  日本町――山田長政、リゴール太守として活躍

 

鎖国

  禁教令――天領(1612)、全国(1613)→高山右近らキリシタン国外追放(1614)

  イスパニア船来航禁止(1624)

  踏絵を長崎で開始(1629)

  奉書船以外の海外渡航禁止(1633、寛永10年の鎖国令)→海外渡航全面禁止(1635、寛永12年の鎖国令)

  島原の乱(島原・天草一揆、1637〜1638)…天草四郎時貞を対象に原城址に立てこもる→幕府、12万人を動員し鎮圧

  ポルトガル船来航禁止(1639、寛永16年の鎖国令)

  天領に宗門改役設置(1640)――宗門改帳作成

   寺請制度…寺院が一般民衆を檀家として所属させ、キリシタンでないことを証明。寺請証文発行

  オランダ商館、長崎出島に移動(1641)――来航ごとにオランダ商館長がオランダ風説書を幕府に提出

 

・江戸初期の文化(寛永文化)

  儒学

   朱子学――藤原惺窩林羅山

  建築…日光東照宮(権現造)、桂離宮数寄屋造

  絵画

   狩野派――狩野探幽(御用絵師)

   土佐派――土佐光起

   装飾画――俵屋宗達「風神雷神図屏風」

        本阿弥光悦(洛北に芸術村を作り、書道・蒔絵・陶芸(楽焼)などにも才能を発揮)

  陶芸

   有田焼――酒井田柿右衛門により発達

   薩摩焼など

 

・鎖国下での交易

  4つの窓口

   長崎…オランダ・中国(清)――「通商の国」、国交は無し

   対馬…朝鮮(李氏朝鮮)――「通信の国」、宗氏と朝鮮の間で己酉約条を結び国交を回復、朝鮮通信使の来日

   薩摩…琉球――「通信の国」、島津氏の琉球侵略以後、謝恩使・慶賀使の強要

   松前…アイヌ――松前藩(和人)の収奪・侵略にたびたび抵抗→コシャマインの戦い(1457)、シャクシャインの戦い1669)

 

3−5.幕政の安定

文治政治(由井正雪の乱(1651、慶安事件)が契機。家光までの三代は武断政治

  徳川家綱(4代将軍、1651〜1680)の政治

   牢人(浪人)対策――末期養子の禁の緩和

   殉死の禁止、大名の人質廃止

   儒学の重視

   明暦の大火1657)

  諸藩主の文教奨励

   池田光政(岡山)――熊沢蕃山登用、藩校花畠教場、郷学閑谷学校を開く

   保科正之(会津)――山崎闇斎を招く、藩校日新館

   徳川光圀(水戸)――大日本史編纂開始

   前田綱紀(加賀)――木下順庵を招く

 

・元禄の政治(徳川綱吉5代将軍、1680〜1709)の政治)

  学問の奨励

   儒学の振興――湯島聖堂創立、林信篤を大学頭に任命

   天文方の設置――渋川春海を登用、貞享暦を作る

   歌学方の設置――北村季吟父子を登用

  側用人柳沢吉保の重用――放漫政治で財政難

  貨幣鋳造――明暦の大火、浪費で財政難→勘定奉行荻原重秀の意見で貨幣改悪(元禄金銀)→物価高騰・経済混乱

  生類憐みの令1685〜1709)――極端な動物愛護令

 

正徳の治1709〜1716)――徳川家宣(6代将軍)、徳川家継(7代将軍)の侍講新井白石の政治

  経済政策

   貨幣改鋳―荻原重秀の罷免、正徳金銀(質量を旧に復す)の発行

   海舶互市新例(長崎新令、1715)――金銀の海外流出を防ぐための貿易額制限令

  儀礼整備

   朝鮮使節待遇問題――待遇の簡素化

   将軍の呼称を「大君」から「国王」に変更

   閑院宮家の創設

  風俗矯正――側用人柳沢吉保の罷免、生類憐みの令撤廃

  学者としての白石の業績

  『読史余論』――徳川政権の正統性を述べた史論

  『古史通』――『日本書紀』の合理的解釈

  『折たく柴の木』――自伝

  『西洋紀聞』――シドッチとの対話記録による西洋事情

  『采覧異言』――世界の地理・風俗を記す

 

3−6.経済の発展と町人の台頭

・第一次産業

  新田開発――幕府・諸藩の奨励(町人請負新田)

  農業技術の進歩

   肥料――新たに金肥(油粕(菜種や綿実から油を搾った粕)・干鰯)の使用

   農具――備中鍬、千歯扱、唐箕、千石簁、竜骨車、踏車

   農書――『農業全書』(宮崎安貞、1697)

       『広益国産考』・『農具便利論』(大蔵永常)

       『老農夜話』(須田正芳、1827)

  農政家――二宮尊徳、大原幽学

  商品作物の栽培

   四木(桑・漆・茶・楮)、三草(紅花(出羽)・藍(阿波)・麻)

   たばこ、綿(三河・尾張・河内)、菜種、い草

  水産業…俵物の需要が急増して漁業が発展

   上方漁法(地引網など)の普及

   鰯漁――九十九里浜の地引網漁

   捕鯨――紀伊・土佐・肥前

  製塩業――瀬戸内で入浜式塩田(潮の干満利用、海水を導入)

  鉱山業

   幕府――佐渡(相川)金山、伊豆金山、石見大森銀山、但馬生野銀山、下野足尾銅山

   民間――別子銅山(住友家、伊予)

 

・第二次産業

  経営――問屋制家内工業、一部で工場制手工業(マニュファクチュア)も

  特産物

   織物――絹…西陣織、桐生絹・足利絹

   陶磁器――肥前有田焼(酒井田柿右衛門)、尾張瀬戸焼、京焼(清水焼、野々村仁清)

   漆器――能登の輪島塗、会津の会津塗

   醸造――酒…灘、伊丹

       醤油…野田

   製紙――越前の鳥の子紙、播磨の杉原紙、美濃の美濃紙

   染物――京都の友禅染(宮崎友禅)

 

・交通・通信の発達

  陸上交通

   五街道――東海道(江戸〜京都53宿)

        中山道(江戸〜草津67宿)

        甲州道中(江戸〜下諏訪44宿)

        日光道中(江戸〜日光21宿)

        奥州道中(宇都宮〜白河10宿)

    関所…「入鉄砲・出女」を特に警戒(東海道箱根関)

   脇街道(脇往還)――北国街道など

   宿駅(宿場)…本陣(大名)―脇本陣―旅籠・木賃宿(一般)

          問屋場…人馬貨物逓送機関

  水上交通

   海上――南海路(大坂〜江戸)…菱垣廻船樽廻船

       東廻り航路(酒田〜江戸)

       西廻り航路(酒田〜大坂)…東廻り航路とともに河村瑞賢が整備

   河川――角倉了以…保津川・富士川・天竜川・高瀬川を開発

       河村瑞賢…淀川・安治川を開発

  通信(飛脚)

   継飛脚…幕府公用

   大名飛脚

   町飛脚

 

・都市の発達

  三都

   江戸…「将軍のお膝下」。人口100万を越える世界最大級の政治都市

   大坂…「天下の台所」。人口40万の物産集散地、加工業都市

   京都…宗教・工芸都市

  城下町――名古屋・金沢など

  港町・門前町・宿場町・在郷町の発達

 

・商業の発達

  市場

   江戸――日本橋魚市、神田青物市

   大坂――堂島米市場、天満青物市、雑喉場魚市

  蔵物…諸藩の蔵屋敷に集められた年貢米や特産物

   蔵物の出納・販売・保管などを任された蔵元・掛屋が成長

   江戸では俸禄米を取り扱う札差が繁栄

  納屋物…蔵物以外の民間の手を経た問屋商品

  仲間…同業者団体・組合

  株仲間…幕府に運上・冥加金の税を納入し公認された商工業者の同業組合

  問屋

   十組問屋(江戸、1694〜)

   二十四組問屋(大坂)

 

・貨幣・金融

  貨幣制度

   三貨…金貨・銀貨・銭貨

   金座・銀座・銭座…鋳造機関

   藩札

  金融

   両替商――大坂の鴻池家、江戸の三井家

 

3−7.元禄文化

元禄文化――上方中心の町人文化

 

・学問の興隆

  儒学の隆盛

   朱子学…京学派――藤原惺窩―官学:林家(羅山―鵞峰―信篤)、湯島聖堂創立、大学頭に信篤

                 民間:松永尺五―木下順庵―新井白石、室鳩巣

       南学(海南学派)――谷時中―野中兼山

                     山崎闇斎垂加神道を創始

   陽明学中江藤樹――日本陽明学の祖

       熊沢蕃山――藤樹の門人。『大学或門』で幕政批判→幕府より処罰

   古学派…聖学:山鹿素行――古学を提唱、朱子学批判。主著『聖教要録』

       古義学派:伊藤仁斎・東涯父子――私塾「古義堂」

       古文辞学派:荻生徂徠――私塾「蘐園塾」、主著『政談』

             太宰春台――徂徠の門人。主著『経済録』

  国学の萌芽

   歌学…契沖――僧侶。『万葉代匠記』を記す

   古典研究…北村季吟――『源氏物語湖月抄』

  歴史学

   幕府…林羅山・鵞峰――『本朝通鑑』(編年体(神武〜後陽成))

   水戸藩…徳川光圀、水戸学派――『大日本史』(1906年完成。大義名分論の立場から著述)

   新井白石――『読史余論』(徳川政権の正統性を述べる)

         『古史通』(『日本書紀』神代巻についての合理的解釈)

   山鹿素行――『聖教要録』(朱子学批判)

  実学の発達

   数学…吉田光由『塵劫記』→関孝和『発微算法』――和算の大成

   暦学…貞享暦――太陰太陽暦、渋川春海(安井算哲)が大成

   本草学貝原益軒『大和本草』、稲生若水『庶物類纂』

   農学…宮崎安貞『農業全書』

   地理学…新井白石『西洋紀聞』・『采覧異言』

 

・文学・芸能

  小説――浮世草子(←御伽草子・仮名草子)…井原西鶴が第一人者

   好色物――「好色一代男」・「好色一代女」・「好色五人女」

   町人物――「日本永代蔵」・「世間胸算用」

   武家物――「武道伝来記」・「武家義理物語」

  俳諧(←連歌)

   貞門派――松永貞徳。用語の醍醐味が特徴

   談林派――西山宗因。自由・大胆な発想が特色

   正風(蕉風)――松尾芭蕉が大成。著作に「奥の細道」・「猿蓑」など

  人形浄瑠璃

   近松門左衛門――地代物「国性爺合戦」

           世話物「曽根崎心中」・「心中天網島」

   竹本義太夫――義太夫節創始

  歌舞伎

   阿国歌舞伎→女歌舞伎→若衆歌舞伎→野郎歌舞伎

   名優――江戸:市川団十郎の荒事

       上方:坂田藤十郎の和事

 

・造形美術

  絵画

   狩野派――狩野探幽

   土佐派――土佐光起

   住吉派――住吉如慶

   装飾画――俵屋宗達

        尾形光琳…装飾画を大成。「紅白梅図屏風」・「燕子花図屏風」

   浮世絵…肉筆画・版画――菱川師宣「見返り美人図」(肉筆)

  工芸

   陶磁器――野々村仁清…京焼の祖。色絵磁器の大成。弟子に尾形乾山

   染色――宮崎友禅友禅染の大成

  彫刻――円空の鉈彫

 

・生活文化

  宗教

   仏教――隠元隆g…黄檗宗(禅宗)を広める。本山は宇治万福寺

   神道――山崎闇斎…垂加神道

  教育

   寺子屋教育の普及。教科書に「庭訓往来」・「女大学」など

  衣・食・住

   衣――農民は慶安の触書で細かく統制。町人は小袖・振袖

   食――農村は雑穀中心

   住――農村は掘立て小屋。都市部では振袖火事(1657)以降瓦葺の普及

 

3−8.幕府の政治改革
享保の改革徳川吉宗(8代将軍:1716〜1745)の改革
  財政政策
   支出削減策――倹約令
          
足高の制(たしだかのせい)…役高以下のものは在職中だけ差額を支給
   収入増加策――
新田開発(町人請負新田)
          検見法(けみほう)から定免法(じょうめんほう)、四公六民から五公五民へ
          
上げ米…1万石につき100石上納。代わりに江戸在府を半年にする
          米価調整
  産業開発
   甘藷、朝鮮人参などの栽培
   実学奨励――漢訳洋書輸入緩和、青木昆陽らに蘭語を学ばせる
  商業統制――株仲間公認
  政治刷新
   法制整備――
公事方御定書(くじかたおさだめがき)。江戸町奉行に大岡忠相(おおおかただすけ)
   相対済し令…旗本・御家人救済のため、札差の訴訟を認めず
   
目安箱設置→町火消の創設、小石川薬園内に養生所設置
   人材登用――室鳩巣、荻生徂徠

・田沼地代…徳川家治(10代将軍)のときの老中田沼意次(たぬまおきつぐ)の政治(1767〜1786)
  開発計画――商業資本の導入で印旛沼干拓・手賀沼干拓を企図→失敗
        工藤平助『赤蝦夷風説考』に刺激され、蝦夷地開発→最上徳内の千島探検
  貿易拡大――
俵物(いりこ・ほしあわび・ふかのひれ)・銅の輸出促進
  商業重視――
専売制度…銅座・鉄座・真鍮座など幕府直営の座の設置
        
株仲間の積極的公認→賄賂政治へ

・農村の変化
  三大飢饉――享保の飢饉(1732)
        
天明の飢饉(1782〜1787)…長雨・浅間山噴火など。東北地方で被害大
        
天保の飢饉(1833〜1839)…洪水・冷害など。東北地方で被害大
  
百姓一揆(都市部では打ちこわし
   前期(17世紀)――代表越訴型(義民の直訴)
   中期(18世紀)――
惣百姓一揆村方騒動
   後期(18〜19世紀)――世直し一揆、国訴
  商品経済の発展
   富裕農民の地主化、豪農化
   
問屋制家内工業(18世紀〜)→マニュファクチュア(工場制手工業、19世紀〜)

寛政の改革…徳川家斉(11代将軍)のときの老中松平定信の改革(1787〜1793)
  経済政策
   
棄捐令(きえんれい)…旗本・御家人の6年以前の借金帳消し
  社会政策
   備荒貯蓄――囲米で1万石につき米50石
         
義倉・社倉を設置
   
七分金積立(七分積金)――江戸の町入用を節約し、貧民救済のために積み立てる
   
人足寄場(にんそくよせば)――無宿者を収容し職業指導
  風俗矯正、学問思想統制
   洒落本の禁止→山東京伝に手鎖50日の刑
   
寛政異学の禁…朱子学以外の学問を湯島聖堂で教授することを禁じ、林家の私塾湯島聖堂を改築し幕府直轄の昌平坂学問所とする
   『海国兵談』を著した林子平を処罰


3−9.幕政の衰退と近代への動き

・列強の接近

  蝦夷地の調査…田沼意次の蝦夷地開発計画(1785〜)→最上徳内の蝦夷地調査

         蝦夷地直轄――東蝦夷地(1799〜)、西蝦夷地(1807〜)→松前藩に還付(1821)

         近藤重蔵の択捉島・国後島探検(1798)

         間宮林蔵の樺太探検(1808)

  ロシア…ラックスマン、根室に来航(1792)

      レザノフ、長崎に来航(1804)

      ゴローウニン事件(1811)

  イギリス…フェートン号事件1808)

  アメリカ…モリソン号事件1837)

  幕府の対応――文化の撫恤令(1806)→異国船打払令無二念打払令1825)

         蛮社の獄1839)…渡辺崋山高野長英らをモリソン号事件批判の罪で処罰

 

・大御所時代…徳川家斉(11代将軍)の親政。家慶(12代将軍)の初期まで大御所として実権(1793〜1841)

  関東取締出役設置(1805)…関東における警察機能の強化

  大塩の乱1837)…大坂で元奉行所与力大塩平八郎が、貧窮民救済の蜂起→各地に波及(生田万の乱(1837、越後柏崎))

 

天保の改革…徳川家慶(12代将軍)のときの老中水野忠邦の改革(1841〜1843)

  財政再建策

   人返し令1843)…強制的帰農策

   印旛沼干拓計画→失敗

  経済政策

   株仲間解散1841)

   棄捐令

   物価引下げ令(1842)

  政治統制策

   上知令(上地令、1843)…江戸・大坂周辺を直轄領化→大名・旗本の猛反対で失敗

   西洋砲術家、高島秋帆の登用

  風俗矯正

   倹約令

   人情本の為永春水(『春色梅暦』)、合巻の柳亭種彦(『偽紫田舎源氏』)を処罰

  外交政策

   アヘン戦争(1840〜1842)の影響で異国船打払令緩和(天保の薪水給与令、1842)

 

・諸藩の藩政改革

  宝暦・寛政期

   熊本藩――藩主細川重賢、藩校時習館

   米沢藩――藩主上杉治憲、藩校興譲館、米沢織の振興

   秋田藩――藩主佐竹義和、藩校明徳館

  天保期…雄藩(薩摩・長州・土佐・肥前・安芸・越前・水戸)や下級武士の台頭

   薩摩藩――藩主島津斉興の下で調所広郷が改革

        負債の棚上げ、黒砂糖の専売、琉球仲介の密貿易、国産品の奨励で財政再建

        軍制改革、藩校造士館

   長州藩――藩主毛利敬親の下で村田清風が改革

        紙・ロウの専売制改正、越荷方設置、負債の37ヵ年賦皆済仕法で財政再建

        軍制改革、洋式砲術の導入

   肥前藩――藩主鍋島直正の改革

        陶磁器・石炭の専売で財政再建

   土佐藩――藩主山内豊熙の改革→保守派反対で挫折

   水戸藩――藩主徳川斉昭と水戸学者藤田東湖会沢正志斎の改革→保守派の反対、斉昭の死で挫折

        藩校弘道館

  安政期

   薩摩藩――藩主島津斉彬の下で西郷隆盛らが改革

        洋式機械工場(集成館)――日本初の紡績工場、造船所・ガラス製造所・反射炉・製錬所

   長州藩――薩摩藩に対抗し軍事力の強化

   肥前藩――藩主鍋島直正の改革継続

        均田制実施、大砲製造所設置、日本初の反射炉建造

   土佐藩――藩主山内豊信による財政再建、軍事力強化

   越前藩――藩主松平慶永と橋本左内・由利公正らの改革

 

3−10.化政文化

化政文化…徳川家斉(11代将軍)の文化・文政期(1804〜1829)が中心、江戸の町人文化

 

・町人文芸の興隆

  小説――御伽草子→仮名草子→浮世草子→洒落本→人情本

                        →滑稽本

                    →黄表紙→合巻

                    →読本

   18世紀後半…洒落本――『仕懸文庫』(山東京伝)→寛政の改革で処罰

         黄表紙――『金々先生栄花夢』(恋川春町)→寛政の改革で処罰

         読本――『雨月物語』(上田秋成)、『南総里見八犬伝』(滝沢馬琴)

   19世紀前半…人情本――『春色梅暦』(為永春水)→天保の改革で処罰

         滑稽本――『東海道中膝栗毛』(十返舎一九)、『浮世風呂』(式亭三馬)

         合巻――『偽紫田舎源氏』(柳亭種彦)→天保の改革で処罰

  俳諧

   与謝蕪村…『蕪村七部集』(天明期)

   小林一茶…『おらが春』(化政期)

  狂歌・川柳

   狂歌――天明期に大田南畝

   川柳――柄井川柳の『誹風柳多留』

  演劇

   歌舞伎脚本――『東海道四谷怪談』(鶴屋南北)、白波物の河竹黙阿弥

   浄瑠璃脚本――『仮名手本忠臣蔵』(竹田出雲)

 

・造形美術

  浮世絵

   宝暦期…錦絵(多色刷)の完成――鈴木春信

   寛政期…美人画・役者絵――喜多川歌麿東洲斎写楽

   化政期…風景画――「富嶽三十六景」(葛飾北斎)、「東海道五十三次」(歌川(安藤)広重

  文人画(南画)――池大雅谷文晁渡辺崋山、田能村竹田

  写生画

   円山派…円山応挙

   四条派…呉春

  西洋画――司馬江漢銅版画の再興、油絵の技法を伝える

 

国学の発達

  先駆――契沖

  展開

   荷田春満1669〜1736)…『創学校啓』を徳川吉宗に献呈

   賀茂真淵1697〜1769)…『国意考』・『万葉考』

   本居宣長1730〜1801)…『古事記伝』の完成

   平田篤胤1776〜1843)…復古神道の大成

  その他

   塙保己一…『群書類従』編纂、和学講談所設立

 

洋学(蘭学)の発達

  先駆――新井白石『西洋紀聞』・『采覧異言』

  成立(←漢訳洋書輸入緩和)――青木昆陽ら蘭学研究、山脇東洋の『蔵志』

  発展

   『解体新書』1774)…『ターヘル=アナトミア』の翻訳、前野良沢杉田玄白の訳述

   『蘭学階梯』…大槻玄沢の蘭学入門書

   『ハルマ和解』…稲村三伯らによる最初の蘭和辞典

   医学――宇田川玄随『西説内科撰要』

   天文学――志筑忠雄『歴象新書』

   化学――宇田川榕庵『舎密開宗』

   物理学――平賀源内…エレキテル・寒暖計の研究

   全国測量――伊能忠敬「大日本沿海輿地全図」

   研究機関(幕府)――蛮書和解御用1811)→洋学所(1855)

       (私塾)――緒方洪庵の適塾、シーボルトの鳴滝塾

       種痘館…天然痘予防の研究

  幕府の弾圧

   シーボルト事件1828)――天文方高橋景保がシーボルトに禁制の日本地図を送り処罰された事件

   蛮社の獄1839)――モリソン号事件の幕府対応を批判した、渡辺崋山(『慎機論』)・高野長英(『戊戌夢物語』)らを弾圧

 

・教育

  武士の教育

   幕府――昌平坂学問所

   藩――藩校…花畠教場(岡山)、日新館(会津)、造士館(鹿児島)など

      郷学…閑谷学校(岡山)

  庶民の教育

   寺子屋…庶民教育。読み・書き・そろばん

   懐徳堂…大坂町人出資の学塾(富永仲基・山片蟠桃らはここの出身)

   心学…石田梅岩創始、手島堵庵・中沢道二により普及

  私塾

   咸宜園(日田)――広瀬淡窓

   松下村塾(萩)――吉田松陰

   芝蘭堂――大槻玄沢

   適塾(大坂)――緒方洪庵

 

・社会批判論の出現

  農本主義的な批判

   『自然真営道』――安藤昌益

   『広益国産考』――大蔵永常

   報徳社運動――二宮尊徳

  経済論

   『稽古談』…藩専売の採用など主張――海保青陵

   『夢の代』…無神論、懐徳堂に学ぶ――山片蟠桃

   『西域物語』・『経世秘策』…西洋諸国との交易を説く――本田利明

   『経済要録』…産業の国営化と貿易の振興を説く――佐藤信淵

  尊王論(←水戸学

   宝暦事件1758)…尊王論を主張する竹内式部を京都より追放

   明和事件1767)…尊王攘夷論を唱える山県大弐を死刑、竹内式部は八丈島へ流罪

   『日本外史』――頼山陽

 

・生活と信仰

  仏教…俗化――出開帳・富突流行、日待・月待・庚申講

  寺社参詣…伊勢神宮へ御蔭参り