反駁の練習:解答10

1998.8.12 文責:倉島

 

この主張は、新聞記事の鈴木教授の説を根拠としています。しかし、新聞記事が示している統計データは、食生活の悪さと「キレる」行動の相関関係を述べているだけで、因果関係を述べているわけではありません。相関関係すなわち因果関係と結論づけている鈴木教授の説には論理性が欠けます。因果関係が不明な以上、食生活を改善したとしても、「キレる」行動が減るとは言えません。

相関関係が示されても、それが因果関係にあるとはいえません。食生活の悪さと「キレる」行動の原因が、ともに第三要因にあるなら、食生活の悪さと「キレる」行動との間に相関関係が生じるからです。

たとえば、食生活の悪さと「キレる」行動の本当の原因が、親の育児に関する無関心さにあると考えられないでしょうか。親が子どもに無関心だから、子どもの食生活が乱れるし、子どもの精神面での教育も不十分になるというわけです。この場合、原因が同じですから、食生活の悪さと「キレる」行動に相関関係が生まれます。しかし、この二つは因果関係にないので、食生活を改善しても、親の育児に関する関心が高まらなければ、「キレる」行動は減りません。

このように、大学の教授ですら相関関係と因果関係を取り違えてしまいます。人の主張を鵜呑みにせず、もう一度論理的に検証する習慣をつけましょう。