[戦評]▽WBC世界S・フライ級タイトルマッチ12回戦
 
☆12月20日・大阪城ホール

               王者 徳山 昌守 判定 挑戦者 ジェリー・ペニャロサ
114-113
114-114
116-111

mario's scorecard

徳 山        

9
9
9-1
9

10

10

9

10

10

10

9
9
112

ペニャロサ 

10

10

10

10

9

9

10

9

9

9
10

10

115
 
 
mario kumekawa

  予想通りの苦しい試合だった。ただ、徳山は賞賛できる防衛戦をしたといえるだろう。僕の採点は上のように、ペニャロサが3ポイントもリードしているが、微妙なラウンドがいくつもあった。スプリットの王座防衛は、不当な結果ともいえない。

 なにより、徳山の見事だったのは、苦しいながらも創意に満ちた試合をしたという点だ。序盤、ペニャロサのフックが鋭くてダメージを受けると、中盤は細かいジャブを突いてペースを半ば取り戻した。終盤に入り、疲れからかそのジャブもうまく出なくなると、クリンチやはぐらかしの動きを多用してペニャロサのパワーをかわす一方、ボディーを粘り強く叩き続けて形勢をひっくり返した。

 苦手な相手と戦いながら、一試合中に何度もあたらしいことを試みることは、平凡なファイターにはけっしてできないことだ。徳山のボクシングセンスと、勝負根性をあらためて見た気がする。

 ペニャロサも、前回に続いて額を大きくカットするアクシデントに見舞われたが、黙々と接近戦を挑み続けた。さすがに、長年世界の最前線で叩き続けているファイターだ。川島郭志と戦ったときの冴えはないが、相変わらず不気味なほどの安定感を備えている。

 とにもかくにも、徳山は生き残った。内容も、苦戦だが拙戦ではない。最大の難関を乗り切ったことで、二桁防衛への展望がひらけてきたと言えるのではないだろうか。

 


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