展望: 戸高秀樹 対 レオ・ガメス

 WBA・S・フライ級タイトルマッチ12回戦:10月9日・愛知県体育館

戸高 秀樹 

27歳

17勝8KO2分1分

レオ・ガメス

37歳

32勝24KO7敗1分

 

 どうですかね。まあ、「37歳のガメスに、今が全盛の戸高を破る力が残っているとは思えない」というのが大方の予想でしょうが……。ガメスも、ウィルフレド・バスケスとならんで、中南米の鉄骨おやじだからなあ。

 ガメスがセーン・ソープルンチット、アキレス・グスマンに連敗して、一時引退となったのが96年。ところが98年10月に突然カムバックし、再起戦即ラテンアメリカ・タイトル戦で、ヒルベルト・ゴンサレスに8回KO勝ち。するともう次は世界戦で、当時のWBAフライ級王者ウーゴ・ソトを3回でノックアウトして、3階級制覇を達成してしまった。ウーゴ・ソトといえば、あの勇利アルバチャコフとの大激闘を覚えている人も多いだろう。あのソトを、3回で粉砕したのだ。

 ガメスは、初防衛戦ではプエルトリコの強豪ホスエ・カマチョをも8回KOでくだしたが、昨年9月、タイでソンピチャイに8回逆転KO負けで王座を奪われた。この敗戦は、現地で弟を射殺されたショックによるものだとも言われる。今回の戸高挑戦は、またまた再起即タイトルマッチである(これはもう、ベネズエラ・カラカスにWBA本部があることが効いている)。

 とにかく、ガメスはまだまだ危険な匂いがする。トシと言ったって、わずか1年前にはあのソトをぶっ倒しているのだ。横沢健二の歯をグローブで折り取ったパンチは、まだ生きていると思った方がいい。

 しかも、戸高は鼻の骨を折って、アメリカでの練習が十分出来なかった。ガメスの本領である接近戦での打ち合いに巻き込まれた場合、この負傷の影響がどう出るか。秘密主義の戸高だが、過酷なまでのハードワークが彼の成功を支えてきたことはたしかなようだ。すでに5度連続の世界戦にして3度目の防衛戦。「そろそろ、ほころびが出るのでは……」という声も、聞こえていないわけではない。

 タイの豪腕ヨックタイを粉砕した戸高だが、ガメスの強打は、またヨックタイとも異質だ。ヨックタイのパンチは、あくまでも全身の筋力を利したパワー・パンチだが、ガメスはベネズエラらしい肩の回転を生かした、メカニカルな強打だ。相手の頭部を打って、意思を立ち切ってしまう力は、むしろガメスのほうが高い。

 ヨックタイ戦の序盤、元王者の強打を食ってた戸高は、ふらつきながらもなお前に出て最後は打ち勝ってしまった。しかし、今回がメスのパンチを何発かクリーンヒットされたら、「ふらつく」だけではすまないかもしれない。戸高のタフネスは驚嘆すべきものがあるが、タフネスはガメス攻略の一材料にはなるとしても、決め手にはなるまい。

 今回、マック・クリハラは「戸高にはガメス以上の手数を出させる」と言っている。真っ向から打ち勝つつもりなのか。たしかに、それがベストの戦術であるようにも思えるが、それはガメスにとってもまた、最も望むところだろう。

 う〜ん、間違いなく激しい試合になるだろう。若さと体力で戸高有利と見るが、老怪物の4階級制覇もじゅうぶん想像できる。楽しみな一戦だ。

 


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