☆3月8日・横浜アリーナ

▽WBC世界J・フライ級タイトルマッチ12回戦

○チャンピオン サマン・ソーチャトロン VS ● 挑戦者5位 八尋 史朗

KO4R

 

by mario kumekawa

 

 八尋には気の毒だが、何をしに来たのか、全然わからなかった。

 前回は予想以上の善戦だったのに、今回の八尋は「サマンに簡単にやられる

には」というお手本のような試合をしてしまった。

 

 サマンは手足が短いくせに、タイソンのような出足があるわけでもない。だか

ら、八尋のような長身ボクサーに対しては、パンチの打ち終わりにカウンターを

放ちたいはずだ。八尋はそんなサマンを左ジャブでできるだけつきはなしたいは

ずなのに、なぜか遅いジャブを「ぬっ」と伸ばしては、サマンにボディーや左顔

面を強打されるまで、ご親切にも、その腕を伸ばしたままにしていた。それも何

度も、というよりジャブを出すたびにそうであった。

 アウトボクシングにおいては、ジャブの「引き」の速さは絶対必要条件だ。ベ

テランの八尋がそれさえ忘れてしまったのは、どういう状態だったのだろう?

 

 サマンはあまりにおいしい展開に、最初こそ「ワナかな」という顔をしていた

が、やがて「これでいいんなら、遠慮なく」という感じでKO勝ちしてしまった。

 

 ……八尋がすぐれたボクサーであることは、日本のボクシング・ファンなら知

っている。スピードこそ一見したほどではないが、バランス、テクニックの良い

好ボクサーで、意外ににたくましいところもある。うまくジャブを使えば、サマ

ン攻略も夢ではないと思った。それがこの試合である。

 

「最後のチャンス」ということで、緊張してしまったのだろうか? 気合いが入

りすぎてオーバーワークとなり、体も頭も動かなくなってしまったのか?

 わけが分からないほど、八尋のボクシングはまずかった。