[戦評]▽WBC&IBF世界ヘビー統一タイトルマッチ12回戦
 
☆11月17日・ニューヨークMSG
 
    挑戦者2位 レノックス・ルイス TKO 王者 ハシーム・ラクマン
 
4回1分42秒
 
mario kumekawa
 
 

 うーん。う〜ん。まいった。「ハーンズ−バークレー戦の再現だ」と予想しておいたのに、とんでもない間違いだった。

 ルイスは完璧に戦った。立ち上がり神経質になり過ぎて体勢が悪かったが、ジャブを多用してラクマンの右を封じるという戦術は徹底できていた。動きがほぐれてきた3回あたりからはラクマン殺しの秘密兵器として磨いてきたという「左フック→右ストレート」のコンビネーションをくり返し、ラクマンを劣勢に追いやった。

 この左から右へのコンビネーションには、うならされた。なるほど、ルイスの左をかわそうとするとき、ラクマンは両手を伸ばしたままのけぞるという、やや幼稚なよけかたをする。この体勢へとラクマンを追いやり、そこに外から巻き込むような右を叩きこむ。しかも、右左、左右とコンビネーションの順序を変えることで、ラクマンを混乱させた挙句の、アッパー気味の変則的な左フックに続けたフィニッシュシーン……。うーん、こんな絵に描いたような戦術を実行し、戦慄的なKOシーンを現出してしまうとは、やはり大変な能力の高さだ。

 しかも36歳という「高齢」でこれをやってのけるのだから、凄いの一言だ。今回の動きを見る限り、スピードも、反射神経も、まだまだ衰えてはいないように見える。

 ラクマンも、コンディションは良さそうに見えた。スピードもあったし、よく集中できているように見えた。ただ、ちょっと貫禄を見せすぎてしまったようだ。じっくり構え、良く相手をみていたが、手数が少なく、ルイスに作戦を実行させてしまった。もちろん、最後に頼るべきは右クロスだったろうが、やはり負けずにジャブを突き、左フックで威嚇するというような作業も必要だったろう。

 序盤、ルイスがまだ不安定だった時に、もっと激しく動いてペースをかき乱しておくべきだった。どっしり構えたルイスのことは、ホリフィールドでも後略し切れなかったのだ。動きの中では、けっしてルイスの防御は鉄壁ではない。ラクマンは見かけによらず足が速いのも、前回の勝因だったはずだ。チャンピオンらしい貫禄のあるファイトは、むしろルイスのペ−スを助長してしまった。

 しかし、いずれにせよ今回の結末は、ラクマンのミスというよりは、ルイスの集中力、作戦の実行力を湛えるべきだろう。やはり、タイソン、ホリフィールドの次にはルイスという高峰が歴史的強豪の山脈を形作ることになったようだ。(ボウも強かったけどなぁ)


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