☆3月2日・後楽園ホール

▽OPBF・J・ライト級タイトルマッチ12回戦

チャンピオン   三谷 大和 VS 挑戦者      平仲 信敏

判定

117 - 111

117 - 113

118 - 110

 

by mario kumekawa

 

 “黄金の3月”が始まった。皮切りはベテラン同士のOPBF戦。「熱戦」と

いう点では期待通りだったが、レベル的には今一つと言わざるを得ない。

 

 おそらく、平仲は相当衰えてきているのだろう。パンチ力こそJ・ライト級に

上げてなお威圧感があったが、脚力とタフネスは明らかに落ちている。昨年唯一

の実戦だった谷川淳戦でも3回終了負傷ドローになるまでは、谷川の長いストレ

ートで、ぐらり、ぐらりさせられていた。堅牢なスタイルからかけるプレッシャー

で、エロイ・ロハスにさえうんざりした顔をさせた力は、どうやら今はない。

 初回、三谷の左ストレートであっさりダウンを喫したとき、すでに平仲の足腰

には往事の粘りがほとんど残っていないことが明らかになった。

 

 これは三谷の圧勝か、とも思われたが、さすがに平仲の闘魂は死んではいない。

2回からは、ヒザをかくかくさせながらも前進、三谷の顔面、左脇腹にヘビーな

パンチを叩きつけ始めた。4回、顔面への左右フックからボディー打ちで三谷が

崩れ落ちたシーンは、「スリップ」と取らなくても良かったくらいだ。

 思わぬダメージを受けた三谷は「作戦を切り替えた」。中間距離ではスピード

を生かした左右フックで先手を取り、それ以上接近したら徹底的にクリンチ。初

回のダメージが足腰から抜けない平仲は、この「クリンチ戦法」をステップでか

わすことができない。

 

 中盤以降は、三谷が右フックをごくたまにヒットする以外は延々もみ合いが続

いた。ともに決め手を欠くが、どちらかと言えばポイントは三谷。平仲はフラス

トレーションをあらわにしながらも、ひとまわり大きな三谷に体を預けられて、

疲労の色を深めていった。

 

 最終回、三谷がちょんと出した右カウンターで、平仲がダメ押しのダウンを喫

したのも、疲労を下半身が支え切れないという風情だった。

 

 平仲はガッツと、J・ライトでも通用するパワーを見せたが、明らかに衰え、

そうでなければ調整不足を見せた。もし、キャリアを続行するなら、トレーニン

グ条件を可能な限り改善し、コンスタントに試合をこなしつつチャンスを待たね

ばなるまい。

 

 三谷はやはりスピードが大きな武器であることを証明した。しかし、心身とも

にもう1ランク上のたくましさを身に付けなければ、3度目の正直での世界タイ

トル奪取は至難と言わざるをえまい。とりわけ、中盤疲労してからの戦い方の乱

れは致命的だ。技術的には、中間距離での攻撃力にひきかえ、接近戦での攻防が

稚拙過ぎる。飯田覚士がやったように、「世界」まであと数歩のところに来てな

お、「初歩の初歩からボクシングを叩き直す」勇気が必要なのではなかろうか。