●三谷大和 対 平仲信敏
(OPBFJ・ライト級タイトルマッチ12回戦:3月2日)
三谷大和 |
27歳 |
11勝9KO3敗 |
平仲信敏 |
29歳 |
14勝11KO4敗1分 |
すでに2度づつ世界戦を経験した「ベテラン」同士のサバイバル戦である。ただ
、表面上の条件としては平仲にいくつかの不安な材料がある。まず、これがフェザ
ーからJ・ライトに階級を上げてのわずかに第2戦目であること。転級第1戦だっ
た昨年10月の谷川淳(陽光アダチ)戦は3回バッティングによる負傷ドローとなっ
たが、それまでの展開は明らかに谷川に押されていた。長いリーチから谷川がくり
出すストレートを何発ももろに食らい、ダメージも見られた。よほど展開を変えな
い限り、中盤以降のストップ負けさえ予感させる出来だったのだ。
しかも、この谷川戦が昨年唯一の実戦だった。もともと平仲は、地方の不利、さ
らにはジム移籍等のトラブルのため試合枯れが著しく、キャリア10年以上でありな
がら試合数はひどく少ない。それでも世界戦を2度戦うだけの力をつけたのは、さ
すが平仲兄弟の精神力と言うべきだろうが、谷川戦でのスピードのなさ、ぐらつき
やすさ、なにより覇気のなさは、やはり実戦から離れたことによる戦力低下を感じ
させずにはおかなかった。
一方の三谷は、OPBF王座に返り咲いたという点は明るい材料だが、奪取試合
はほめられた内容ではなかった。ホセリト・リベラ(比国)との決定戦だったが、
悪戦苦闘、最終12回に両者もつれてリングしたに転落した際、リベラが頭を打って
立てなくなったことによるTKO勝ちというラッキーなものだった(とはいえ、ポ
イントもわずかながらリードはしていたのだが)。三谷も、それほど勢いがあると
は言えない。
それでも、体格とスピードで優る三谷が前半はおそらくペースを握るだろう。問
題は中盤以降だ。三谷は食い下がる相手にはいつの間にかずるずると打ち負けて、
思わぬピンチに陥ることが多い。平仲がグッド・コンディションを作り上げていれ
ば、中盤に一度は三谷をロープにつめて乱打するシーンが訪れるだろう。その時に
、ペースを平仲が完全に奪取すれば、逆転の判定勝ちもありえる。
身体面、技術面では三谷が上。パワーはほぼ互角だろう。だが、精神的タフネス
は平仲が上だ。三谷がスピードとリズムを生かしたボクシングができれば、多分快
勝するだろう。三谷は時々妙に弱気になり(少なくとも、そう見える)、「だらし
ない」という印象をファンに与えるが、ポテンシャルは高い。だが、平仲の体調が
良く、後半の食い下がりに三谷が動揺するようなことがあると、番狂わせが起きる
かもしれない。