☆1月23日・後楽園ホール

▽OPBFバンタム級タイトルマッチ12回戦

○チャンピオン ジェス・マーカ VS ● 挑戦者 大和 心

119-111

120-111

117-110

[Mario's scorecard ]

ジェス・マーカ

10

10

10

10

10

10

10

10

10

10

10

10

120

大和 心

8

9

9

9

10

9

9

9

9

9

9

10

109

by mario kumekawa

打倒マーカを期待された大和だったが、予想以上の完敗だった。

マーカのスピードと巧妙なタイミングに幻惑された大和は、終始ペースを握られたまま。「風邪をひいていたので、あえて集中打はかけなかった」というマーカの戦術に救われてKO負けだけはまぬがれたが、勝機はまったく見出せなかったと言わざるをえない。

マーカは、この大和戦には期するところがあったようだ。すでに前回の仲里繁戦の段階から、「次の大和心戦が大きな山だと思っている。今回(仲里戦)はそのチューンナップ」とまで言っていた。

その気迫が、立ち上りから発揮された。大和のサウスポー・スタイルを苦にすることなく、ぐいぐいと接近し得意の右ストレートを連打する。予想していなかったマーカの先制攻撃に面食らったか、大和のフットワークが乱れる。足がそろったところに右を食い、早くもダウン。

帝拳ジムの先輩、穂積修一、八尋史朗、葛西裕一らが世界戦で経験した、老獪なファイターに先制を許して惨敗する悪夢のパターンが脳裏をよぎる。だが、さいわいマーカはサントス・ラシアルやウィルフレド・バスケスではなかったし、大和も落ち着いていた。3回あたりには大和の動きもそれなりに整合性を取り戻した。

だが、マーカはリズムと距離を完全に支配してしまった。身長にして10センチも違う両者だが、離れた距離からでもマーカのパンチだけが冗談のようによく当たる。大和のブローは、1ラウンドに一回、マーカの体に触れられるかどうかという割合だ。

主導権を握ったマーカは、軽い、力を抜いたパンチだけで中盤から後半を戦ったが、それでもあまりにも連続してヒットするパンチのダメージは徐々に大和に蓄積していった。9回あたりからは、ジャブを食っただけで表情がとろんとしてしまう。リングの事故は、こういう、軽打が過剰にヒットする展開に多く発生する。もはや大和の勝機はほぼ絶望的だが、ストップするほどの連打をマーカは出していない。嫌な展開が続く。

さいわい、マーカも終盤疲れ、大和の顔面が叩かれる回数は減り、低調な(だが危険の少ない)展開の中で終了ゴングが鳴った。

「サウスポーは得意ではないし、体調も良くはなかった」というマーカだが、とてもそうは見えないボクシングを見せた。大和は、持ち前のスピードが生きれば、大きな体格差と若さが生きてくるのではないかとも期待されたが、序盤の攻防でアリ地獄にはまってしまった。

大和はおそらく、ボディーブローに活路を見出す作戦だったろう。実際、中盤マーカがボディーを打たれて少し苦しげな表情を浮かべたシーンもあった。しかし、若手がテクニックに上回るベテランを攻略するためには、一点突破が王道だ。ボディー打ちであれ、ストレートのカウンターであれ、戦術をもっと徹底させ、若さとエネルギーで戦い抜いて欲しかった……。


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