☆8月23日・横浜アリーナ

▽WBC世界ミニフライ級王座決定戦12回戦

○ 2位 ワンディー・チョーチャレオン VS ● 1位ロッキー・リン

115−113

116−114

114−114

mario's scorecard

ロッキー・リン

9

10

10

10

10

10

9

10

9

10

10

10

117

ワンディー

10

9

9

9

9

9

10

9

10

9

9

9

111


by mario kumekawa

 

僕の採点では、リンの勝ちである。ただ、確信を持って差をつけたラウンドよりは、ラウンド・マストゆえに振り分けたラウンドの方がはるかに多かった。上の表では6ポイント差もつけてリンの勝ちとしたが、実際はどちらに転んでもおかしくない試合だったと思う(歯切れが悪くてすみません)。

リンの戦いについても、アンビバレントな気持ちが残った
「前回(と言っても5年前だ)のロペス戦で初回で散って涙にくれたリンが、今回は少なくとも世界の頂点を争う力量を証明したのだ」と納得する一方で、「5年ぶりにして、おそらく最後のチャンスで、なんでこんな覇気のない試合をするんじゃ!」という歯がゆい気持ちもあるのだ。

リンはいつものボクシングをした、といえば、まあそうだ。しかし、世界戦はいつも以上のボクシングをして見せる舞台であるはずだ。事実、坂本も辰吉もノンタイトル戦ではけして見せないもの凄いファイトをして見せた。リンだけがプラスアルファに欠けていた・・・。

だが、リンに同情の余地もある。坂本や辰吉が終始ヒステリックなまでの大歓声で後押しされたのに比べて、リンには声援がほとんどなかったのだ。10分に一回くらい、「リンさんがんばれ」と身内らしき人の声が飛んだ程度だ。これは、ロッキージムの失敗ではないだろうか(もちろん、台湾人の林の世界戦を実現するために開会長以下スタッフが費やした情熱&努力は相当のものだろうが・・・)。苦節5年、やっとつかんだチャンスだったのだから、応援団でも組織してほしかった。

プレビューでも書いたが、リンが来日以来、さらにロペスに惨敗して以来、積み重ねてきた努力は並大抵のものではなかったはずだ。それを、もっと観客にわかってもらう方法はなかっただろうか。今回ほど、パブリシティが勝負にまで決定的な影響力があると感じたことはまれだ。

たとえば、リンーワンディーの試合前、会場のオーロラビジョンには辰吉の過去の試合のビデオが流れていたのはおかしい。あそこで、来日以来のリンの歴史でも見てもらえば、会場のお客さんもひと声くらい声援を送る気にもなったはずだ。入場直前に別人のビデオが会場で流れているなんて、世界戦を戦うボクサーに失礼ではないか。

ワンディーは動きがしなやかで小気味の良い好ボクサーだったが、リズムはむしろリンのものだった。リンにまとまった声援を送れば、本人もプラスアルファが出たかもしれないし、内田ジャッジだって、リンの勝ちにつける気になったかもしれない・・・。

外国人ボクサーが日本で世界に挑む場合、クリアしておきたいさまざまな問題点を浮き彫りにした試合でもあった。


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