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展望: Lennox Lewis vs David Tua

 WBA&IBF世界ヘビー級タイトルマッチ12回戦

11月11日・ラスベガス マンダレイ・ベイ・リゾート・アンド・カジノ

レノックス・ルイス

35歳

37勝29KO1敗1分

デビッド・ツア 

27歳

37勝32KO1敗

 

 デビッド・ツアは、レノックス・ルイスを破る「資格」がある稀有なファイターのひとりだ。ホリフィールドとの2試合を勝ち残り、マイケル・グラントを一蹴し、パワー、テクニック、スピード、精神面、あらゆる面が充実しつつあるルイスは、今や一頭抜けた存在になった。はっきり言って、ツアかクリチコ兄弟以外のボクサーがルイスを破ったとしたら、それは何かの間違いである。かつてオリバー・マッコールがルイスをマットに沈めた時のようなものだ。

 そういう意味で、今回の試合は、下馬評ではかなり不利とはいえツアが勝てば「新帝王誕生」というエキサイトメントが味わえる、うれしいカードではある。

 ただ、あくまでも予想はルイス有利だ。ルイスの巨大な才能をここにきて開花させたエマニュエル・スチュワードは、「たしかに、ツアは強打者だ。だが、ルイスはツアのできないあらゆることができる。しかも、強打者でもあるんだ」と、愛弟子の優位を強調したが、スチュワードの言うことは客観的事実であるようにさえ思える。

 たしかにツアはルイスと同じ37戦をこなし、ルイスよりも3つ多い32KOを記録している。“サモアのタイソン”と呼ばれる所以だ。総合力では優ると思われるルイスだが、「ツアにはパンチャーズ・チャンスがある」というのが、一般的な予想であるようだ。

 しかし、ツアは、そういうタイプの「パンチャー」ではない。一発ですべてをちゃらにするほどの、“一撃必倒”型のパンチャーではない。初回KO勝ちがやたらに多いツアだが、そのKOシーンは嵐のような連打によるものだ。かつてのタイソンのように豪腕一振りで「リングにかけろ」ばりに相手がすっ飛んでいくような超人パンチではないのである。

 したがって、ツアが得意の左フックを爆発させて、ルイスに“衝撃のKO負け”を味わわせる可能性はそれほど大きくはない。いや、ほとんどないと言ってもいいだろう。

 むしろツアのチャンスは、真っ向から「実力勝ち」することにある。

 ツアは、ルイス陣営も認めているように、「マイケル・グラントよりもはるかに成熟したボクサー」だ。ツアに先行して、新世代ヘビー級の一番手としてルイスに挑んだグラントは、いちかばちかの打ち合いを挑んで玉砕した。ルイスがグラントの頭を抑えてアッパーを打った「反則」攻撃も含めて、ルイスとグラントでは技量の差が意外なほど大きかった。

 グローブをはじめて手につけたのが20歳過ぎとボクシング歴自体が短いグラントに比べ、ツアはバルセロナ五輪S・ヘビー級銅メダリストのエリートだ。その上、プロで37戦を戦ううちにウィービング中心のボディワークや連打の技術にも長足進歩を見せている。これまたルイス自身が認めていることだが、「グラントのように倒すことはできない」だろう。惜しくも敗れたアイク・イベアブチ戦でも、ツアは激闘に耐えぬくタフネスも証明している。

 ルイスはアウトボクシングをするはずだ。それを身長180センチたらずのツアが追いに追うだろう。だが、大方の予想通り、ルイスの馬鹿長いリーチがそれを阻むだろう。ツアは前に出るタイプだが、出足が鋭いわけではない。むしろ、「近づいてからが勝負」というタイプだ。ディフェンスに気を使いながらもかなり強引に接近しないと、ツアの勝ち目はふくらんでこない。

 だが、ルイスの左フック、右ストレートをスリッピングでかわし、打たれて強くはないルイスにワイルドなパンチでたたみかけて、ツアが主導権を握る可能性もある。たしかに「ツアが勝つならKO」かもしれないが、それはサンデーパンチによるものではなく、攻めに攻めぬいてのものだろう。「勝つ資格」があるボクサーの勝ち方とは、そういう勝ち方だ。

 過去にルイスが倒されたり、苦境に陥った試合をふりかえると、マッコール戦をはじめ、シャノン・ブリッグス、フランク・ブルーノと、どちらかと言えば「へたくそ系」のパンチャー相手の場合が多い。ホリフィールドの捨て身の連打にも、後退を余儀なくされた。20センチ近く背の低いツアが、アメリカ人とは違うリズムで連打を繰り出してくるとき、ルイスの弱点が久々に露呈するかもしれない。

 


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