☆11月15日・ラスベガス

▽WBA&WBC世界ヘビー級王座統一戦12回戦

○レノックス・ルイス  判定 ×イベンダー・ホリフィールド

116−112

115−113

117−111

by mario kumekawa

 

とにかく、これで90年代を代表するヘビー級ボクサーとしてレノックス・ルイスの名は歴史に記されることになった。

まあ、本当はちょっぴり不満である。今回の試合も、前回より多少はアクションに富んだものだったとはいえ、「最強」を決める試合としてはイマジネーションに乏しいものだったからだ。ルイスは「最強王者」の戦いというよりは、軽量ホリフィールドの泣き所を突くべく、体格の利を最大限に生かした「必勝法」に徹した。

ただ、とはいっても、あんまり文句を言っちゃあいけないのだ。ルイスのボクシングはけして卑怯なものなどではなく、ホリフィールドを研究しぬいた果てに編み出されたきわめて優秀な戦法であるのだから。

それに、ルイスは90年代最強のヘビー級と呼ばれるにふさわしいボクサーなのだ。そもそもルイスが今まで保持していたWBCのベルトは、リディック・ボウがルイスとの対戦を嫌がって放棄したものだった。ボウをルイスはソウル五輪決勝で叩きのめすKO勝ちを収めている。プロ入り後は、ヘビー級のメジャーなボクサーのほとんどからは対戦を忌避され続けてきた。誰もがルイスを恐れていたのである。つまり、今までルイスが地味な存在に甘んじていたとすれば、それは彼があまりに強いからであったはずだ。

ホリフィールドもよくやった。クルーザーから上げてきた彼は、今や中型ヘビー級の筋肉がかなり板についてきたとはいえ、やはり超大型ボクサーは苦手中の苦手だったはず。ホリフィールドは10年間、2ジェネレーションにわたるすべてのトップボクサーと頂点を争いつづけるという、空前絶後の実績を残したと言える(ホリフィールドは、タイソン、ダグラス、マイケル・ドークス、ピンクロン・トーマス、アディルソン・ロドリゲス、アレックス・スチュワートらと同世代なのであり、ボウやルイスは本来次世代に属するボクサーたちだ)。

ホリフィールドの真骨頂は、あわやという瀬戸際に追いこまれたところで炸裂する左フックや右オーバーハンドのカウンターにこもる意思の力である。今回も、ルイスの顔面をこれらのパンチが捉えるシーンもあった。だが、十分に集中していたルイスはカウンターを食っても、そのパンチは見えており、効きはしたものの致命傷にはいたらなかった。逆にホリフィールドは正面からのせめぎあいに急速にスタミナを失っていった……。

しかし、「ホリフィールドがもう少し若かったら」とは言うまい。それは、現時点での死力を振り絞って戦った両雄に失礼というものだ。たしかに、怪物的な能力にぞくぞくわくわくするというタイプのスーパーファイトではなかったが、ボクシングを知り尽くしたベテラン二人が、じつに誠実に「仕事」をやりぬいた。互いの強靭な精神力も、またしても証明して見せた。これはやはり、頂上対決であった。


別冊表紙へ