☆11月22日・大阪

▽WBA世界フライ級タイトルマッチ12回戦

○チャンピオン  ホセ・ボニージャ ●挑戦者  山口 圭司

TKO6回2分20秒

 

[Mario's scorecard ]

ボニージャ

10

10

10

9

10

49

山 口

9

9

9

10

9

46

by mario kumekawa

 山口は前回のピチット戦に続いて、不可解に自信満々な試合の果てに砕け散っ

た……。長身とスピードが挑戦者の優位な点と思われたこのカードだったが、序

盤から打ち合いを挑んだ山口は、相撃ちからピンチを招き、6回でストップ負け

となった。この俊英の自分のペースをあえてつかみにいかない展開の果ての世界

戦2連続KO負けは、なんとも惜しまれる。

 

 初回、距離は山口のものだった。右ストレートを打った後、右に回りながら右

フックを返す組み合わせも良い。ただ、山口はまだ動きがほぐれない。王者の踏

み込んでの左右フックも容易に当たる。

 2回開始早々、ボニージャの右がクリーンヒット、山口の腰が砕ける。挑戦者

は固さがとれず、危険なパンチを浴びる。距離とスピードを生かしたい山口は、

打ち合いは避けたい、特にボニージャの右は避けねばならないはずだ。この回終

了間際、山口の左がヒットして王者を後退させ、一矢報いる。

 山口はもう少し柔軟に、リズムをもって動いてほしい。ピチット戦のようなショ

ートフックを受ける危険が感じられ、肝を冷やすシーンが散見される。山口が打

ち合いに出ているのは、恐怖の裏返しなのだろうか。クールな頭脳なら、この展

開を望むとは思えない。3回も、痛打こそされなかったが、まだ挑戦者のボクシ

ングにはリズムが出てきていない。

 4回、山口がよくなってきた。体と心がほぐれてきたようだ。ガードを下げる

シーンも多いが、リズムが若干出てきた分、安心感はある。中盤、左ショートが

当たり、王者の腰が落ちた。

 山口は強烈にカウンターを取る自信があるようだ。ほんまかいな、というほど

の自信だ。5回は手数でポイントは奪われたが、それでも山口は自信満々でカウ

ンターを狙っている。この自信はどこから来るのか? 

 6回、山口の右で王者はロープに大きく後退。勢い込んで攻めるが、ここでと

うとう落とし穴にはまった。左フックの相討ちで、ボニージャよりも大きなダメー

ジを受けた山口はへたりこむようにダウン。ダメージは深く、再開後も一方的に

攻め込まれストップされた。あれだけ大胆に打ち合ってのこの結果、率直に言っ

て、若干「あほらし」という感はいなめない。

 山口はピチット戦をどのように反省したのだろうか? 突出した武器を持たず

堅牢でもないボニージャは(自分のボクシングをすれば)狙い目と思われたが、

またもショートブローの打ち合いから、打ち負ける形で致命打を浴びた。ムリー

ジョ戦の完璧なボクシングはどうして封印されてしまったのだろうか。試合直前

に「KOしたくなってきた」と語っていたのが、100 パーセントの本音とは思え

ない。山口はやはり、彼の才能をフルに生かすべきアウトボクシングを貫徹する

だけの神経のタフネスが備え切れていないとしか思えない。

 まだまだ若い。伸びる余地は随所にある。身体のダメージも少なそうだ。今度

こそ、敗戦をじっくり見つめ直し、日本最高のボクサーファイターとしての完成

へと歩を進めてもらいたいものだ。