ランぶる・イン・ざ・ジャンぐる……


  「辰吉」特例を撤廃せよ

 辰吉のカムバックに際して、JBCが絶対にクリアしなくてはならない問題がある。悪名高き「辰吉特例」の撤廃だ。すなわち、JBCはいまだに、一度でも網膜剥離にかかったボクサーのリング復帰を認めていない。ただ、辰吉が「世界戦もしくはそれに準ずる試合」をするときだけ、特例として日本のリングに上がることを承認しているのである。
 どのような角度から見ても、この「特例」は、日本ボクシングコミッションが思考力・モラルの両面でまさに恥ずべきレベルにあることを示している。網膜剥離にかかったボクサーには、通常よりもはるかに大きな失明の危険があるというのなら、「世界」レベルのボクサーのパンチに立ち向かわせるなどもってのほかだろう。世界戦という大興行ゆえ止められないのなら、金でボクサーの目を売った発想以外のなにものでもない。
 逆に、本当は現代の医学で網膜剥離が完治するのであれば、JBCは時代が変わってもルールを変えることができない、思考停止状態にあるということだ。いずれにせよ、ボクサーの健康への配慮も、ルール制定者にあるべき責任感も、まったく欠如した「特例」であることは疑いをいれない。
 辰吉はこのままでは、カムバック戦で「世界戦もしくはそれに準ずる試合」を戦ってしまう危険性がある。よしや辰吉の天才がまだ死んでいないとしても、ここ2,3年だけでも肉体が変化していることは間違いない。絶対に調整試合は必要だ。
 対ウィラポン第2戦での辰吉には、ほとんど見るべきものがなかった。あれは、辰吉がボクサーとして「終わって」いるのでなければ、痛烈なKO負けからのカムバック即世界戦でのリターンマッチという、世界でもまれな無茶をやったからだ。
「網膜剥離」だけではない。ボクサーの37歳定年や、ジムが強制する非人道的なヤミ契約によるボクサーの束縛など、日本のリングには「旧弊」が多過ぎる。
 世界レベルのボクサーが、網膜剥離にかかったり、年齢が38歳を超えたりする事態は、将来もかならず生じる。スーパースター辰吉の再々度のカムバックを、根本的改革のチャンスとせねばならない。

 

HOME