ランぶる・イン・ざ・ジャンぐる……


  西岡は「渡辺二世」だ!

 西岡利晃のウィラポン再挑戦は、前回の「判定負け」が「引き分け」に昇格しただけでなく、西岡に対するボクシングファンの評価を著しく高めたのではないだろうか。
 ウィラポンとの初戦も技術的には見どころの多い試合だったが、「勝負」という点ではノーチャンスに近かったし、ファンにアピールするものも少なかった。「でも、強引に出たらやられていた」と、試合後の西岡は語ったものだ。
 だが今回は、西岡は自分のスタイルを崩さないままでウィラポンを痛めつけ、しばしばダウン寸前に追い込んだ。踏み込みの速さ、ジャブの鋭さ、左右のブローのタイミングの厳しさなど、「技術」に裏打ちされた「勇気」があった。
 世界王者の中でも「大物」の一人と言っていいウィラポンを相手に、この内容でのドローだ。8月下旬から9月初旬にかけて日本で行なわれた3つの世界タイトルマッチにおいて、一番素晴らしいボクシングをしたのは西岡だった。
 だが、西岡の腰にだけベルトがない。西岡自身「何かが足りなかった」と語ったが、たしかに、目をカットした後、消極的になりすぎるなど、いくつかの勝負どころでウィラポンの得点を許した。
 それでも、この試合のレベルを見せることができるなら、今回の敗因がいつか大輪の花につながる気がしてならない。西岡のような「馬鹿になれない」タイプのボクサーは、本物になれば「大チャンピオン」になる可能性がある。
 関西の出身だけに「辰吉の後継者」と言われて久しい西岡だが、彼の才能はむしろ「渡辺二郎の再来」と呼ばれるべきものではないだろうか。事実上のS・フライ級王座統一、通算10度の防衛を果たした偉大な渡辺も、敵地韓国での世界初挑戦ではその大器の全貌を輝かせることはできなかった。
 渡辺は相手のスタイルと能力を読み切り、「勝てる」と確信した戦術のみを実行に移した。金チョルホとG・ローマンに「もう一歩」で判定負けした試合では、そういう性質が裏目に出たが、それ以外の12度の世界戦に勝った。
 西岡も渡辺型で、クレージーにはなれない。だが、そんな彼が「もう一度やればKOできる」と言いきった。2度挫折してなお、ホープの輝きは増すばかりだ。

 

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