ランぶる・イン・ざ・ジャンぐる……

トニーの怪挙に思うTONEY.JPG - 29,812BYTES

 ジェームズ・トニーがホリフィールドをKOした試合には驚いた。すでに20年近くヘビー級の第一線で戦い続けてきたホリフィールドが、「おなかタポタポ」のトニーに真っ向から攻め落とされたのだ。
 まもなく41歳というホリフィールドに、歴戦の疲労や衰えがあったとしても、ほとんどミドル級の骨格のトニーが、攻撃力で圧倒したのだからすごい。タイソンのボディーブローを立て続けに受けても耐えていたホリィが、トニーのボディーフックを受けて、海老のように丸まってしまった。
 ロイ・ジョーンズの世界ヘビー級王座奪取にもほとほと驚かされたが、今回のトニーの激勝も優るとも劣らないインパクトがある。しかも、トニー、ジョーンズともに、本来クルーザーはおろかミドル級の骨格なのだ。
 かつて、世界L・ヘビー級王者ボブ・フォスターは、僕のアイドルのひとりだった。ワンパンチで相手を完全失神に追い込む右ストレートや左フックには、圧倒的な説得力があった。だが、そのフォスターのパンチが、アリやフレージャーにはまったく通用せず、逆にヘビー級のブローを浴びると枯れ木のように倒されてしまった。アーチー・ムーアの「L・ヘビー級ボクサーのヘビー級攻略は絶対に不可能だ」という言葉にうなずいたものだ。
 しかし、ジョーンズやトニーは、ヘビー級王者たちのパンチを受けても深刻なピンチに陥ることはまるでなく、むしろ切れ味に優るブローで真正面からの打ち合いさえ制してしまった。
 思えば、ボクシングの歴代ヘビー級王者は「最重量級」というイメージほどには大巨人ばかりではない。ジェフリーズ、ジョンソン、ウィラード、リストン(リーチと体重は“巨人だ)、アリ、フォアマン、ボウ、ルイスといった大男が君臨する時代もあれば、デンプシー、ルイス、ウォルコット、チャールズ、マルシアノ、タイソン、ホリフィールドら小型ファイターが天下を取った時代もあった。
 ルイス、クリチコ兄弟の君臨で未曾有の大巨人時代が来るのかと思ったが、ジョーンズ、トニー、サンダースが全く逆の“時代”を提示した。歴史の河はそう単純には流れていかないようだ。

 

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