☆7月26日・名古屋・レインボーホール

▽WBA世界S・フライ級タイトルマッチ12回戦

○ チャンピオン 飯田覚士 VS ● 挑戦者 フリオ・ガンボア

115−113

115−113

115−113

mario's scorecard

飯田覚士

10

9

8

9

9

10

10

10

9

10

10

9

113

ガンボア

9

10

10

10

10

9

9

9

10

9

9

10

114

by mario kumekawa

 

僕の採点では上の通りで、飯田のワンポイント負けである。微妙なラウンドは、地元ということも考えて飯田につけたのだが、それでも「勝ち」にはならなかった。

一方的にやられたラウンドは少なかったし、中盤は明らかに圧倒していたので、井岡戦のような批判は受けないだろうが、僕はこれを「快勝」と呼ぶことはできない。「偶然のバッティング」でガンボアが明らかに右目の視力を失っていたにもかかわらず、ストップから負傷判定とはならなかったことも含めて、ホームの利に恵まれたと言わざるをえない。

ただ、中盤での戦いぶりで、飯田のほうが「強い」ボクサーだという印象を、少なくとも日本の観衆には与え得たことだろう。飯田のほうが頑丈で、パンチも強く、自信に満ちていた。必ずしも飯田の勝ちだとは思わない僕ですら、「もっとうまく戦えば、もっと快勝できたのではないか」と思う。

プレビューで書いた、「テクニックでガンボア、タフネスとパンチ力で飯田」という図式は、だいたい予想通りだったと思う。ただ、やはり世界戦だけあって、ガンボアは心身ともに研ぎ澄まして臨んできたのだろう。
それほどの攻撃力はないはずのガンボアのパンチが、この試合の序盤は明らかに切れていた。

2回に食った左フックでダウン寸前のダメージを負った飯田は、中盤までは回復できなかった。ガンボアが2回のバッティングで早々に右目上をカットしなければ、相当に苦しい試合になったことは想像に難くない。

飯田は、井岡戦に続いて、スピードを生かすことを忘れていたのではないだろうか。彼の本来の武器は、なにより足のスピードであったはずではないか? ヨクタイとの2戦目、グロッギーになりながらもあれほど動いたフットワークをもっとうまく使えれば、ガンボア程度の踏み込みなら空転させることができるはずだ。

TVの実況アナウンサー氏はしきりと「ガンボアには一発があります」、「強打者ガンボア」と繰り返していたが、ガンボアの攻撃力は世界レベルではたいしたことはない(アナ氏は「謎の挑戦者」とも言っていたが・・・?)。飯田にとっては、アウトボックスでシャットアウトするのが可能かつ最高の試合展開ではなかっただろうか。

飯田は、イメージトレーニングや自己暗示を、練習に多く取り入れているようだ。その際、「俺のパンチは効く」、「打ち合っても負けはしない」というような、攻撃型、強気型の自己暗示をもっぱら行なっているのではないか? この頃、飯田の試合中の表情は、不必要なまでに強気かつ攻撃的だ。

そこに、より防御型の暗示も入れてもらいたい。これは難しいことなのかもしれない。一般に、アウトボクシングの方が(ちゃんとやるためには)より複雑かつ強靭な精神力が要るとされるからだ。

飯田は見た目以上にタフなボクサーだが、体が硬いため、一度パンチが効くと立ち直りは遅い。ゴイティア級の決定力を持つチャレンジャーが現れる前に、「体力と鍛練で勝つ」以外の勝ちパターンを確立してもらいたい。