●ボクシングファン黄金の一日

 大人と呼ばれる人なら誰でも、「黄金の一日」の過ごし方を持っているのではな

かろうか? つまり、一日を完全に自分だけのために使える時、その日を至高の一

日とする自分だけの方法を− 。

 ボクシング記者である前に、ボクシングファンとして、僕にもそういうプログラ

ムがある。実際、これは僕がボクシング記者である以上、実行は困難なメニューな

のだ。それをご披露しよう。

 まず、「その日」はもちろん、仕事は休みでなければならない。いつまで寝てい

ても良いのだが、「今日は黄金カードが後楽園ホールであるんだ! 」と思うと、

すっきりと目が覚めてしまい、スポーツ新聞の小さな予想記事に目を通す(この際

、試合は世界戦である必要はない。思い入れを持って見ることができる、あるレベ

ル以上の好カードならよい。今なら、平仲信敏−池田タカオ戦なんて一番いい)。

 妻の了解を得た僕は(このへんがチト弱いが)、軽く朝食をとると悠然とひとり

街へくりだす。午前11時、水道橋駅に降り立つ。

 まずはホールとは駅をはさんで反対側にあるラドンサウナ「アスカ」へ。10分づ

つ3回サウナ室、水風呂、ラドン風呂をこなしたあと、おばちゃんのマッサージを

受ける。脊髄から疲れを抜いたところで、ホルモン焼きと生ビールを注文! くぷ

ーっ、と飲んだら仮眠室でしばしごろごろ……。

 そうこうするうちに5時。かるく超音波風呂につかった後、後楽園ホールに堂々

の入場だ。記者としてではなく、一観客としてでなくては駄目だ。なぜなら、ここ

でもさっそく「ピックアップ」もしくは「カール」でビールを飲み始めるからであ

る。

 ほろ酔いの僕は、軽く声援をとばしながら、メインまでゆったりと観戦する(こ

んなことは何年もしてないなぁ……)。全プログラムが終了したら、見知った顔を

誘って、タクシーで巣鴨にある元キックのチャンプ大沢昇氏が経営する「大沢食堂

」へ。ここで大辛カレーとホルモン焼きを食べながらまたもビール! そしてボク

シング談義! ここまでやれば、黄金の一日。後はカラオケもよし、さらに居酒屋

もよし。帰りのタクシー代さえあれば……。