●畑山隆則 対 サウル・デュラン

 (WBA・S・フェザー級タイトルマッチ12回戦:2月13日・有明コロシアム)

畑山隆則

23歳

22勝17KO1分

サウル・デュラン

25歳

27勝22KO3敗

 

日本唯一の世界王者となった畑山の初防衛戦だ。ぜひとも勝ってもらいたい試合だが、挑戦者の選択はまずまずと言っていいだろう。デュランが易しい相手だというわけではないが、とりあえず3度も後楽園ホールのリングに上がっている(3勝2KO。すべてノンタイトル戦)ということで、手の内はわかっている。しかも、まあ畑山が圧倒的に不利の予想を立てねばならないほどのスーパースターというわけでもない。

デュランはメキシカンらしい、じわじわと攻めてくるパンチャーだ。スピードはさほどではないが、パンチは固さも重さもある。好戦的なタイプだけに、畑山とはかみ合いそうだ。畑山も、「正面からパワーで勝ちたい」と言っているだけに、派手な打ち合いになる可能性も高い。

両者を比較すると、一発のパワーはデュランの方がやや上だろう。しかし、耐久力は畑山の方が上だ。デュランはそれほど頑丈ではない。畑山がはっきり上回っているのは、ステップワークだろう。足の速い畑山は、崔との2試合では(特に第1戦だが)横や斜めへのステップを巧妙に使い、攻撃にもディフェンスにも有利な位置を確保した。デュランの足にスピードがない分、これは大きなアドバンテージになるはずだ。

頭脳的な畑山のことだ。「パワーで勝つ」と言っても、自分の距離や位置どりを忘れることはあるまい。うまくいけば、四方八方から多彩なパンチを浴びせかけて中盤までに倒してくれるかもしれない。

心配があるとすれば、畑山はこれまでメキシカンの選手とは1度しか対戦がない点だ。崔への初挑戦の前哨戦としてメキシコ・ランカーのホルヘ・ルイス・ロペスと戦った畑山は、ロペスの柔軟な動き、タイミングの取り方にかなり苦戦し、10回判定勝ちに終わった。スピードで優っていても、メキシカン独特のジャブのリズム、アリ地獄のようなボディーブローにつかまったら展望は明るくない。

柔軟性という点では、デュランはロペスほどではなく、むしろ剛直なファイターである。けれども、よく伸びるジャブにはやはり独特のリズムがあるし、相当のダメージを与える威力さえ秘めている。97年にスティーブ・ジョンストンに挑戦して判定負けしたものの、このジャブで王者の顔を終盤ぼこぼこに腫らした。坂本博之がほとんど触ることもできなかったジョンストンの顔面にそれだけパンチを当てたのである。

そんなジョンストン戦の内容を思うと、デュランは相当の強敵に思えてくる。ただし、ジョンストンにはパワーという泣き所があった。攻撃力の不足するジョンストンは、スロースターターのデュランに序盤でダメージを与えることが出来なかったのだ。

デュランの弱点は、エンジンのかかりが遅い点と、打たれ強くない点だ。畑山には、ジョンストンにない攻撃力が(1階級下とはいえ)ある。十分にアップしてリングに上がってほしいものだ。先制攻撃でダメージを与え、できれば序盤でダウンでも奪うような展開が理想だろう。畑山が好調なら、その可能性は十分にある。

 


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