泣き顔しか見せてない。

「なんで…っ!なんでなのよっ!!」




また、いつもみたいにアイツに食事を独房まで届けに行ったある日。

それは起こった。

「…オレを殺さないの?大切な人を奪った仲間のオレを、どうして殺さないの?憎くないの?」


…憎いわよ。憎くて仕方ないわよ…。私の大切な人を奪ったんだから…。


「……でも、」


コイツも憎いけど、大切な人を奪った、


「…戦争も、憎いの。」



一瞬、アイツは驚いた顔したけど、それはほんの一瞬。すぐにもとのヘラヘラした、でも自信が満ちた顔になっていった。

「ふーん、お前、そんなこと思っているんだ。甘ちゃんだな。」

「な、何よっ!」

「でも、それは、優しすぎるんだ。」


真顔でそんなこと言わないで。


「…え?」

「だってそうだろ?こんな悲劇、戦争の所為だけど、お前みたいな優しい奴が戦争に行って、悲しい思いをして憎しみに暮れる。その連続だぜ。」



この人は、強い人なんだ。


それを聴いた瞬間、思った。

この人の言っていることがとても真実味を帯びていて、だから涙が溢れてきた。



「――そうだけどっ!そうっだけど…っ!!!」

「…生きるか、死ぬかなんだ。戦争は…。だけど、そこで出会い別れも繰り返される。そういうもんなんだよ、運命って。」

無性に涙が出てきた。

さっきよりも激しく。

目頭が熱く。

独房の、冷たい鉄の棒にしがみ付いて、崩れ落ちた。


もう、全てが憎くて。

コイツも憎くて。

戦争も憎くて。

私を置いて死んでしまったトールも憎くて。

そして、こんな弱い自分も憎くて。



涙が出てきた。





すっと、頬を暖かいものが私の涙を拭った。

それが、アイツの手だと認識するのに、時間が掛かった。

「…泣くなよ。オレの前で泣くな…。」

憎いはずなのに咳を切ったように言葉が出てくる。

「だってっ!だって、仕方ないじゃない!トールが居なくなって…それで、憎くてアンタを殺してもトールは帰ってこない!!戦争…戦争なんてっ!!」

ふと、アイツの顔を見たら、笑っているかと思ったのに、真面目な顔をして、私を見ていた。

その深紫色の瞳に、吸い込まれそうだった。

「………じゃぁ、オレを憎んでよ。」

「…え…。」

「オレを憎めば、それでいいじゃん。」


憎いのは確か。

でも。



「…ア、ンタバカじゃない?!自分を憎めって、馬鹿じゃない?!」

「馬鹿かもしんないけど、それで、お前の気が済むなら良いよ。こうも同じヤツの泣き顔ばっかり見てるとオレも心が傷つくんでね。」


ほら、いつものバカなアイツ。


「それに、お前の表情。泣き顔しか、涙の顔しか見てねーもん。」





もう嫌。

コイツなんか、嫌い。

嫌いなのよ。

それなのに、

どうしてアイツの言葉が、

こんなに心に残るのよ。



                                          fin






あとがき

いやぁ、ミリィちゃん、憎しみの炎で一杯ですネェ(汗)やっぱり上手く書けない;ってかどうしてディアッカ、ミリィちゃんに説教しているのでしょう?(笑)原作で二人のラブラブシーンないから(当たり前だ)一方的な小説しか書けない…;ま、まぁ、他も書こうと思えば書けるんですけど(^^;)

ここまで読んでくださいまして、ありがとうございましたv

2003 7 4 伊予

「戻る」でお戻りください。