いつのまに












草むらに寝転ぶと、初夏の日差しが眩しかった。

強引に、隣に座っている彼女に手を引かれて、ここに来た。

出会った時と同じで、自分に向ける顔は厳しい。

それでも、彼女とここに、同じ時間を共有出来る事にディアッカは喜んでいた。








「何座ってんだよ。気持ち良いぜ、寝転ぶと。」

「いいわよ、こっちの方が楽だから。」

風に飛ばされそうになってミリアリアは被っている白い帽子を手で押さえた。

彼女に良く似合う、オレンジ色のワンピースも風に揺られる。

「そっか。」

「ええ。」

少し会話しただけで、また沈黙を続ける。








色々喋りたいものだとディアッカは常々思っている。

それでも、彼女と自分とではこれで良いのだと思う。








「何時の間に…。」

「え?」

「何時の間に、あたし、こんなになっちゃったんだろう…?」

それは独り言のように淡々とミリアリアの口から紡がれる。

「――トールにね、言ってきたの。あんたと別れた後。『前に、進んでも良いかな』って。」

眩しく照りつける日差しがミリアリアの表情を浮き立たせる。






それは今迄に見たことのない笑顔。

あの時。追いかけて行ったときに見た笑顔よりも素晴らしいものを。







「決めたはずなのに、やっぱり遅くなったわね。」

「…そっか。」






そう相槌を打って、ディアッカは起き上がろうとした。

すると目の前に手が差し出されている。






「…そろそろ戻るわよ。―――ディアッカ。」

夏の太陽を背にしてミリアリアは言った。

それを見てディアッカは苦笑した。




「…俺も、何時の間にこんなになったんだろうな…。な、ミリアリア。」

しっかりとその手をとり、また歩き出す。











きっとそれは。

二人が始めて出会ったときから。

fin

暑中お見舞い用に書き下ろしたものです。