こんな夜は、アイツはよく泣く。



涙が枯れると思うほど、泣くのを見た。


それは、『彼』が居ないからだと、

改めて思い知った。








深夜のAA内。



のどの渇きを満たす為にディアッカが食堂に向かって歩いている途中、すすり泣く声が聞こえた。




「…アイツ、また……。」


ディアッカは来た道を戻り、彼女のところに向かった。







「――ゥッ!!ハッ…!!」


『彼女』は、枕に顔を押し付けて声を殺して泣いていた。









頭ではわかっているけれど。

『彼』が居ない夜はとても寂しかった。

神様を恨んだ自分が居た。






「――――オィ…。」


見ると彼女は軍服のまま、ベットに転がり、泣いていた。



「おぃ…ミリアリア。」



名前を呼ぶと、ミリアリアはビクッと体が強張るのを感じた。



ゆっくりと顔を上げたミリアリアの表情はあのときと同じだった。

ディアッカにナイフで襲い掛かったときのあの表情。

涙をボロボロ零しながらゆっくりと口を開いた。





「…な、によ…っ!なんで、また…アンタが来るのよ…っ!!!」



一層、大粒の涙がその碧い瞳から零れ落ちてくる。

枕に添えられていた手がディアッカの服を掴んだ。





「…お前、我慢しすぎなんだよ。辛くなったら、俺に言えって言った、だろ?」


だんだんともたれかかってくるミリアリアの背中にディアッカは腕を添える。




その腕の温かさは『彼』とおんなじで、すべての柵を取ってくれるようだった。




「…ウッ!!…バカッ…!!ぁ…ぁあぁあっっ!!!!!」



嗚咽を吐き、声が響く。

それをただ、ディアッカは見守っていた。






『彼』の気配は探しても見つからない。

アイツの苦しみしか、見つからない。

それは

行き場の無い、ぬかるみに足を取られているようだった。







fin.











あとがき。

真綾ちゃんのアルバム「夜」です。滅茶苦茶イメージ違うねんっ!ってかんじ。

良い曲なんですけどね。

読んでくださいましてありがとうございました。

2003年12月29日 伊予。