エイプリル・フール(2)
そんなこんなで迎えた4月1日。 その時期はちょうど学期末でハリーもロンもハーマイオニーもテストに追われていた。 ただ、ハリーだけはものすごくこの日を楽しみにしていた雰囲気で。
「…ハリー…どうして君はこのテスト真っ最中にそんなに余裕ぶっこいてんだよぉ…!」 「僕、今回は余裕なんだーvなんてったって、フレッドとジョージにヤマ教えてもらったし。」 そんなことを言いながら、懐から隠し持っていたカエルチョコを取り出すハリー。 「どんな勉強法にしろ、ハリーは自信持っているんだからいいじゃないの、ロン。それより、何も勉強していなかったロンは、自業自得。」 隣の机でノートの書き写しをしていたハーマイオニーは目は離さずにロンに告げる。 「…アイツらのヤマなんて当るもんか…っ!ハリー、あとで後悔しても知らないぞ…。」 少し溜息を付き、またノートの方に目を向けた。
「―――ところで、前にした約束覚えてるよね?二人とも。」 ふいにハリーは、以前三人でした約束の話題を持ち出した。 「ええ、もちろん。」 「忘れてなんかいないよ。」 ロンとハーマイオニーは二人して声を揃えて答えた。 「…そっか、ありがとう、二人とも…。」 ハリーはにっこりと笑みを浮かべ、二人を見た。 二人以外の人が見たら、とても怪しい笑みだったけれども。
「…ぁあっ!そうだ、お礼と言っちゃなんだけど、これ、あげるよ。」 嬉しそうにハリーは自分のポケットから、ジュースらしきビンを二本取り出した。 「なぁに?これ。」 不思議そうにハーマイオニーが問いかけた。 そのビンの中身は素敵な素敵な薄紫色をしている。 「ちょうど昨日、シリウスおじさんから荷物が届いててさ〜。おいしいんだってv」 食えるもの、飲めるもんだったら飲んじまえ。的な精神の二人にとって素敵なものだった。(どんなものだよ) それに、今は勉強もしていることなので、喉が渇いている。
「ありがとう、ハリー。もらうよ。」 「頂くわね、ハリー。」 このとき、二人はハリー率いる双子の思惑に乗ってしまったのだった。 「一気に飲んじゃってね〜vv」 やはり、笑みは怖いものでもあった。
「ハリーッ!!」 ちょうどその日の夜。 ハリーが自室に戻ろうとしたとき、例の双子に会った。 「やぁ、フレッドにジョージ。」 「…作戦は成功したかい、隊長!」 「そうだぜ、アレを二人に飲ませなくちゃ、僕たちの苦労が水の泡っ!」 ヒソヒソ話をしているのだろうが、やはり双子の動きは派手なものだった。 それを動じずに見ているハリー隊長。 「バッチリだよ。僕の目の前で一気飲みしたよ、ロンとハーマイオニーは…!」 ハリーはもうお代官様と言ったところだろうか。
そう、今回ハリーは二人に飲ませたジュースもどき…。 それは、フレッドとジョージが新しく開発した「ギャクース」…作者のネーミングセンスを疑わないで欲しい。 その名の通り、逆になる。 何がと言うと。 言った言葉などが逆の意味で口に出てしまう。 時と場合により、本心をしゃべってしまうのだ。 そして、嘘もつけないと言う事……。
何故、ハリーが双子と協力することになったかと言うと。 前々からロンとハーマイオニーの関係に苛立っていたからだ。 (二人とも両思いなんだからさっさとくっつけば良いのに…まったく。僕の力無しじゃダメなのかなー。ま、でも面白いけど。) そんな時にこの計画が舞い込んできたのだ。 そんなこんなで、ブラックハリー様降臨となったのだった。
「ちょうど、効果が出始めるのは明日の午前中...。ハリー、二人の喧嘩、ちゃんと起こしてくれよな。」 「わかってるって!だけど、二人ともよくあんな材料手に入ったね〜。」 「手に入れるのに滅茶苦茶苦労した…っ!あれほど力を入れたモノは無いね!」 「ロンとハーマイオニーの涙…ロンはまだしも、ハーマイオニーのを手に入れるのは難しかった…。さすがに女子寮に忍び込むのは気が引けたよ。」 あのジュースには、効き目を良くする為に、当事者たちの涙が必要なのだった。 二人の忍び込む姿を想像して、ハリーは少し笑ってしまった。 「ま、これで僕らのロニィ坊やの男らしいところが見れれば良いんだけどね!」 「その通り!!」 「ま、僕は予定通り、二人を喧嘩させるよ。」 ブラックハリー様は余裕のウィンクを二人にして見せた。 「じゃぁ、ハリー!僕らも楽しみにしているからね!」 「明日が楽しみだな!!」 ひらひらと手を振ってハリーは二人を見送った。 その際、ロンが階段で双子とすれ違っていた。 「ハリー…やっぱりこの頃変だって…。」 「そう?ロンの気のせいだよ!」 やっぱり、笑みを絶やさずにハリーはロンに言った。
翌日。 効果は昼休みに出てきた。少し遅いがそんなことは気にしない。 ハリー、ロン、ハーマイオニーでテストの予習をしていたときのことだった。
「………ロン、どうしてこっち見てるの?」 「…え?」 「あなたさっきから、全然進んでないじゃない。私のノート見たいの?」 「い、いや…っ。?!そ、そうなんだよ…っ??!(違うよ。)」 その言葉を聴いた瞬間、ハリーはよっしvvと心の中でガッツポーズをした。
「…あら、今日はヤケに素直じゃない、ロナルド君…?まったく、自分で努力もしようとしないで…。そんな風に言ったって見せて…。??あ…あげるわよ…?!(あげないわよ。)」 咳を切ったように、効果は弱まらない。 「だから、ハーマイオニー!!ノートを見ていたワケじゃなく…っハーマイオニーを見ていた!うわっ!僕何言って?!」 ここまで来るとハリーは腹を抱えて笑うのを堪えていた。 言っているロンも聞いているハーマイオニーも顔は真っ赤だ。
「だっ大体!なんでロンは私を見ているのよ?!ノートを見せて欲しいから?!そんなことで私を見ていたの?!やめ…ロン、嬉しいっ!!??わ、わたし何言ってんの?!」 いつの間にか、周りにはギャラリーが出来始めていた。その中にはフレッド&ジョージも。 そして、周りからは「熱いねーv」とか「お似合いよーvv」などとヤジが飛んでいる。 「やっやめてよみんな!!わ、私はロンのことなんかこれっぽっちも…っ?!だっ大好きなのっっ!!!??」
待ってました!とばかりに回りは一層盛り上がった。 二人の頬の赤みは頂点に。 恥ずかしさのあまりか、ハーマイオニーの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。 それを見たロンはとっさにハーナイオニーをかばう形で前に出て言った。 「そんなに盛り上がらなくたって良いだろ?!ハーマイオニー困ってるじゃないか!―――ハリーッフレッドッジョージッ!!!君たちの仕業だろ?!あのジュースがなんかの仕掛けだったんだろ?!」 ロンの鋭い眼差しが三人に降り注いだ。
ハーマイオニーの涙を見て、ロンの怒りは頂点に達していた。 言葉のあやでも「好き」と言ってもらえて嬉しいのは事実だが、こんな風ではフェアじゃない。 三人は苦笑いを浮かべて沈黙している。
「…くそっ!ハーマイオニーこっち!!」 ロンはハーマイオニーの手を引いて、その場から走り出た。
「…ちょっとやりすぎちゃったかなぁ…。」 ハリーの独り言がポツンと残った。
その後、二人は人気の無い、中庭に来ていた。 ハーマイオニーは涙目からとうとう泣いてしまっていた。 それを、ロンは困った顔をしながら見ていた。 口を先に開いたのはハーマイオニーの方だった。
「…あんまりよ…っあんまりだわっ…!!」 「ハーマイオニー…。」 ロンはそれだけしか言えず、まだまだ泣いているハーマイオニーを不器用ながら抱き寄せた。 「……っこ、こんな形で言いたく…無かったのに…っ!!…好き、だって…ちゃんと……っ!」 抱き寄せたことは何も言わず、ただ、ロンの胸に顔を埋めた。 「…フレッドとジョージ、ハリーのしたことは…僕の方から謝るよ…ごめん、ハーマイオニー。…でもね、その…あのジュースの仕業でも…嬉しかったんだ…。好きって言ってもらえて…さ。」 ハーマイオニーの顔を自分の顔の方に向かせ、涙を拭った。 だけど、ハーマイオニーの目から涙はやまなかった。 「…わ、私は…ちゃんと言いたかった…。ジュースなんかの力じゃなくて、私の言葉で伝えたかった…っ。」 「…ま、ハーマイオニーを泣かせて気持ちを踏みにじったあの三人にはあとで滅茶苦茶に怒っておかなくちゃ。それはこの際置いといて…ハーマイオニー。」 潤んだ瞳でロンを見上げた。 ちょっと照れくさそうに、ロンはハーマイオニーに笑顔を向けた。
「その…僕から言いたかったんだけど…先越されちゃったな…こんな形になっちゃったけど…。」 そっと、抱いていた腕に力を込めて、顔をハーマイオニーの耳元に埋めた。 「…僕も…ずっと、大好きだから……。ハーマイオニー、好きだよ…。」 「……バカ……ッ」 涙声で、それでも笑顔でハーマイオニーはそれだけを口にした。
その後、事の首謀者の三人組は、ロンとハーマイオニー、そして学校内を騒がせたとして、三ヶ月間のトイレ掃除、カエルチョコ一年分を二人に渡した。 それでも二人の怒りはなかなか収まらなかったけども。
fin.
あとがき すみませんすみませんすみません(以下略)滅茶苦茶一年更新…っ!(ゲフッ)しかもゲロ甘…?!(死)アァ…でも、滅茶苦茶楽しく書きました…ハー子が私的によく書けたかなと(爆)滅茶苦茶キャラがずれててどうしようですが、こんなんで許してください、佐賀さん。貴女のために書いたようなもの(笑) よくこんだけかけたと思います(え) 読んでくださいましてありがとうございました。 2004年4月1日 伊予 |
|||