| しゅくふく
いろいろあった一日から夜が明けて。 真夜中に帰宅したが朝、一緒に朝食をとる陸遜を見て。
発狂していた。
「ちゃぁぁ〜ん!!でかした!!陸遜呼んじゃうなんて…!!」 「姉さん、落ち着きなよ。」 瞳をキラキラ輝かせて、姉のは手を組み、頬を赤くさせていた。 それが日常茶飯事だと知っている長男と次女は黙々と御飯を食べていた。 「えっと、貴女は…。」 「の姉のよ!三兄姉妹の真ん中!これからよろしくね、陸遜!!」 やはりの姉だけあって、幼さがまだある笑顔で挨拶をしてくる。 「はい、よろしくお願いします。」 「きゃぁぁ〜!可愛い〜!!やっぱり陸遜は礼儀正しい!!」 一人だけ悦に入っているを尻目に、陸遜はに話しかけた。
「…殿の姉上はいつもああなのですか?」 「呼び捨てで良いよ、陸遜。まぁ、あんなカンジ。三人のなかで、一番無双にハマッてるし。」 「無双?」 「私たちの代から、ゲーム…遊戯の中の人たちが来るようになったのよ。まぁ、特に関係ないけど。」 「そうですか…。」 やはり、どことなく、は自分を遠ざけているように陸遜は感じた。 その理由は多々あるのだが、いまだ陸遜は判らない。 一方ではそのゲーム「真・三国無双」で実は、陸遜が一番のお気に入りのキャラだったりもする。 画面で見た彼の顔があの時の彼と同じ顔で正直驚いたが、ゲームの中だと少々割り切っていた。 (――…でも、こう現実に来ると緊張するものね、私も…。) ちらっと横目で陸遜の方を見る。 綺麗な顔立ちで思わず見とれてしまう。 けれどすぐにあの赤いものが見えて、緩んだ顔を引き締めた。
そんな二人の様子を見て、兄は持っていた新聞を置いて、コーヒーを飲んだ。 「…さて、やたちが長期休暇となったことだし、外に出掛けるか。陸遜の服も買わなくちゃだし、この世界のことをまず知ってもらわなければな。」 「前来たあの人とは背丈が合わないから無理ね。」 「良いのですか?私のような居候者に…。衣服は 殿から借りたこれで充分です。」 ほら、と陸遜は椅子から立ち上がり、三人に見せるようにする。 兄のはどちらかと言うと、暗い色の服が多い。 「でも、陸遜はそんな俺のような暗い色は似合わないよ。そう思うだろ、?」 いきなり、兄から話を降られて、は驚いた。 考えてみれば、確かに、あの赤い装束の方が似合っている。 兄は兄で似合う服だが、ちょっと陸遜には似合わないような感じがする。 「そう、だね。明るい色の方が似合うと私は思う、よ。」 少しぎこちなく、がしゃべるととは満足したように頷いた。 「じゃ、ちゃんと陸遜二人で買い物してきてね。はい、お財布。」 笑顔で、から財布を渡された。 いつ見ても分厚い財布だが、今日は特別に分厚い。 「ちょっ…姉さん。姉さんたちは行かないの?」 「だって、私、用事があるんだもの。」 可愛い顔して、無責任な姉。 「それに陸遜はが呼び出したんだ。それだけあれば足りるだろ?」 整って、世間では一般的にかっこいいと言われて、考えがまったくわからない兄。 「、私と二人っきりは嫌ですか?」 呉の軍師あろうものが、いまだにあまり状況を掴めていない陸遜。実際はもうこの世界に順応していたりもするが。 「〜〜〜っ!…判りました、行ってきますっ。」 ばんっと音を立てて箸を置き、もう食べ終わっている陸遜の手を引いて出て行った。
「ちゃんってば、照れ屋さんなんだから…ねぇ、兄さん?」 「まったくだな、本当に。もう少しこの家に慣れてくれなくては。」 「一族の中で、一番普通だもの、ちゃんは。」 朝の陽を浴びて、兄と姉の二人はのほほんと笑っていた。
「あれは一体なんですかっ!」 「バス。乗り物。」 「じゃあ、あれは?!」 「信号。赤止まれ。青行け。」 人通りの多い街の中心街に出るとは陸遜の質問攻めにあった。 もともと、陸遜が寝泊りしている部屋にはこの世界の常識や、語句の辞典や辞書が置いてあるので少しの知識は入っているが、やはり驚きが隠せない。 「やはり凄いですね、この世界は。私たちの世界とはまったく違う。」 「そう?人はそんなに変ってないよ、陸遜。昔ほど物騒じゃないけどやっぱり危ないこともあるし。」 昨日よりはあまり冷たくない口調では陸遜の話に答える。 「ですが、私の驚くことばかりです。」 真っ直ぐな眼で、を見る陸遜。 そして、ぽつりと言った。
「――空の青さも、同じですよ、。」
も見上げて、その空の青さに驚く。 まるで彼を見上げたときに見た蒼い空のように。 まぶしさに眼をすぼめて目的の店に入った。
それからというと、のいわば、主婦能力はすさまじく凄かった。 もともと以前来た人の服や日用品を選んだこともあるのでぱっぱっと決めることが出来た。 もちろん、陸遜に似合う服も選べた。 分厚い財布は、結構使ったはずなのにまだまだ分厚い。 帰りは二人して両手に大きな袋を下げていた。 「重くない?」 「大丈夫ですよ、このくらい。」 買い物中、と陸遜は話をたくさんした。 それは、二人の間の溝を埋めるのには充分だった。 冷たい言動はあるが、それはの性格から。 (やはり、お優しい方だ…。) 微笑を浮かべて、橙色の空を見る。 隣にいるが呟いた。 「…陸遜は、驚いてないの?いきなりこんなトコに来て。」 「驚いてはいますが…貴女たちのような方がいて、とても感謝しています。」 「でも還れるか判らないのに?」 陸遜は自分に向けられたの瞳が揺れているのに気がついた。
(――心配、してくれているのか?私を…。)
今日一日では、陸遜がどんなに良い人で、どんなに素敵な人かを知った。 昔、自分を助けてくれたときからも。 彼に惹かれていることも。
(自分から遠ざけようとしても…逆らえないの?)
彼への心配と、家の恐怖。 群青色の瞳が、揺れている。
「――きっと、大丈夫ですよ。」 陸遜の透る声が響いた。 彼がそう言ってくれるだけで、心が軽くなるのが判る。
それだけで、陸遜がの元に来たことが必然と運命と
幸が。
なんだかやっと夢小説らしくなってきました…(滝汗)陸遜が姜維に見えて仕方ない…(死) 姉さんの「あの人」はいつか書きます。 |
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