rain






趙雲がの元に身を寄せてから数週間が経った。

色々驚くことがあったけど、そんな異世界に慣れてきたある日。






の蔵と化した部屋の掃除をしていた趙雲はその手を止め、を迎えに行こうと考えた。

一週間前から、晴れては「高校生」になり、今は「学校」に行っているのだと言う。

彼女からは「学を学ぶところ」と教わった。

一度、その「学校」までの道を教えてもらった。

そして、やっとこの環境に慣れてきて、やっと趙雲は興味を持ち始めていたのだ。

日は傾いて、空を橙色に染めていて、奥には雨雲らしき雲が見えた。

は今朝、「かさ」を持って行っていない。






「彼女が濡れてしまう前に着ければ良いのだが…!」

そう呟いて、趙雲は傘を一本持って、家を出た。







念願の高校に入ったは毎日が忙しかった。

新しいクラスの人々。勉強。

けれど、忙しかったけれど、辛くはなかった。

どんなに疲れて家に帰っても、そこには「おかえり、」と言ってくれる趙雲がいたから。

そんな毎日だけれど、楽しい日々。

そんなことを思いながら、今日も終る。





、バイバイ!」

「うんっまた明日!」

カバンに教科書を詰め、新しい友達に挨拶する。

気づくと、教室にはしか残っていなかった。

窓から見える橙色の空とグランドにある、桜を見た。

趙雲が来たときはまだ咲いていなかった。

「もう、散り始めてるなぁ、桜。」

呟いて、時の流れを感じた。

彼がの元に来て、時間は早く過ぎている。






――いつかは、別れがくるのかな






口に出しはしないが、なんとなくそう思った。

「――…もうっ!私らしくもない!ちゃんと笑ってなくちゃ!」

沈みかけた気持ちを、自分で渇を入れる。

開いていた窓を閉めようとしたとき、雨の匂いがした。

すぐにポツポツと大粒の雨が降ってきて、大雨になった。

「うわ…傘持ってきてないや…。」

窓に手をつき、濡れないように身を乗り出す。

全然雨は止みそうにない。

「……やだなぁ…もぅ。」

雨を見て、苦い顔をする。








三国無双の趙雲がきて、私は本当に嬉しかった。

彼と過ごしているこの日々は何よりの大切なもの。

もし、別れてしまうことがあっても、私は笑顔でいよう。

私だけでも、笑顔でいようと決めたの。









「ふぅ…ほんと、私らしくない…。」

そう呟いて、校門の方を見た。

誰かが、傘を持って待っている。

なんだか、その傘に見覚えがあった。

(私の一番のお気に入りの緑色の傘…!)

淡い、上品な色の緑色の傘は、昔母から買ってもらったもの。

よく見ると、持っている人は日本ではあまり見かけない長身の男の人。

几帳面なのか、長い髪の毛は結んである。そして、この世界に来ても、外さなかったハチマキみたいな布。

「ちょ、趙雲…?!」

窓をすぐに閉めて、カバンを持って、玄関に急いだ。

内履きを下駄箱に押し込んで、雨が降る中、泥水が跳ね返るのを無視して、校門に向かった。








「――趙雲!」

!」

そこまで行くと、やはり趙雲だった。濡れてしまったに傘を傾ける。

「迎えに来たの?!」

「あぁ、夕立がくるだろうと思ったから迎えに来たんだ。」

「で、でも道順覚えていたの?」







この数週間で、律儀な彼が自分にだけ見せてくれる柔らかな表情と口ぶり。








「以前、が教えてくれただろう?それより、やはり濡れてしまったな。」

持ってきたハンドタオルでの濡れているところを拭いた。









冷たい雨のはずが、趙雲といると暖かく感じる。

頬が少し赤くなって、とびっきりの笑顔で。









「趙雲、迎えに来てくれて、ありがとうっ。」










その笑顔を見て趙雲はその整った顔を綻ばせた。

、雨が酷くならないうちに帰ろう。」

「うんっ!」










笑顔で、彼が好きな笑顔で答えて、自然に手を繋いだ。











二人は一つの傘に並んで入って、手を繋いで、雨色の道を歩んだ。













アイアイ傘をしたかったんです…!(汗)