| 思い出
朝起きてみるとやっぱり司馬懿がちゃんといた。 夢じゃなかったんだ。とか思いながら、朝ごはんを作る。 今日が本当に土曜日で良かった。 だって、司馬懿に色々説明出来るしそれに。
―――私も、『思い出』を消すことが出来るもの。
少し日が高くなって、日が高くなってと言っても今日もまた梅雨の雨がパラパラと降っている。 昨日は何だかんだ言って疲れていた司馬懿はの起こす声で目が覚めた。 「――司馬懿、朝だよ。」 「…あぁ。」 の顔を見て、やはり夢ではなくて現実なのだと実感する。 色々考えても仕方ないので、身体を起こし、から与えてもらった服を着て、朝食が置かれている部屋に行った。 テーブルの上にはが作った朝食が置いてあった。 「こっちの世界の食べ物、口に合うかわからないけれど…。」 「いや…。」 椅子に座り、朝食に目をやると、やはり腹が減っていたのか、食欲は出てくる。 「…箸を使うのだな…。」 「うん。」 はそう言って、食べ始めた。司馬懿もそれを見て、食べ始める。 初めて食べるものだというのに、が作ったそれは口に合った。
私、本当は無口じゃないのに、どうしてこんなに無口なんだろう? 朝食を食べながら、はそんなことを思っていた。 友達だって一杯居るし、男にも免疫があるはずなのに。 どうして、この司馬懿と一緒に居ると沈黙ばかりしてしまうのだろう。 …やっぱり、昨日のことが原因なんだろうなぁ…。 そして、また虚ろな瞳を手元に落とした。
沈黙は嫌いではない。むしろ、私はそちらを好む。 だが、この沈黙は居心地が悪く感じた。 このと言う娘にだけは、何故か私自身身構えてしまう節があるようだ。 だが、何故だ? 答えは簡単だ。 …私自身、人とこんなに近くで過ごしたことが無いからだろう。 だから、この娘に身構えてしまうのだ。…この私が。 けれど、それだけではない。 の、虚ろな顔が、目から離れない。 そして、また彼女を見た。
朝食の後片付けが終わり、は司馬懿にこの世界のことを話した。 今は2005年で司馬懿がいたのは大昔だっていうこと。 この世界ではもう戦というのは無いということ。 身の回りのこと。 それを逐一司馬懿は質問で返した。 答えられるものはが答えた。 そして最後にはこう付け加えた。 「昨日は言いそびれちゃったけど、これからよろしくね、司馬懿。」 その笑顔がまた忘れられないものになった。
その日の午後、リビングではソファーに座りながら、窓を見ていた。 こんなに暇な土曜は久しぶりだった。 これから、休日はほとんど暇になる。 それを外の雨を見ながらぼんやり思った。 「――…ねぇ、司馬懿?司馬懿のいた時代にもこんなに雨が降る季節ってあった?」 いきなり話を降られて、後ろの椅子に座って新聞を眺めていた司馬懿は驚いた。 「馬鹿めが。そんなに気候は変わっていないと言ったのはお前だろう。私の嫌いな時期だ。」 「…そっか。…私もね、昨日嫌いになったよ。」 ぽつりとそうは呟いて、昨日のことを思い出す。
『…あのさ。』 『どうしたんだ、?』
「あ、司馬懿と会って嫌いになったんじゃないよ?その前にね…。」 自分自身のことながら、『思い出』にすることがもう出来るなんて思わなかった。 それもきっと昨日の変なことが起きたからだろう。
『…別れよ?私たち。』 『え…?』
「私たち、変なカンジに会ったよね、司馬懿?私、凄い顔してたでしょ?」 「確かに…酷い顔だったな。」 雨と混じって、涙が出ていたように思う。 それを肯定するように、は笑った。 「あはは…だって、私、泣いてたもの。」
『色々理由はあるけど…好きって気持ちがなくなったの。』 『……っ。』 『だから、さよなら。』 『―――…そうか。』 『…さよなら。』
声色を変えずに、司馬懿はに言った。 「――泣きたいのなら、泣けばよかろう?お前と私の何かの縁だ。」 昨日会ったばかりだというのに、何故こんなにのことが気になるのだろう。 けれど、彼女からの話は嬉しいもので。 今は理由は聞かないが、いつか話してくれるのだろうと思った。 「昨日会ったばっかりなのにね…。」 声を殺して、掌を顔にあてる。 気配で司馬懿が自分の隣に座るのがわかった。
――好きって気持ちがなくなったの。 けどね。 『思い出』の数々が私を引っ張ってたんだよ? だから、追いかけて欲しかったんだ。
声を殺して泣くを見て、胸が掴まれたように苦しくなった。 元の世界に居たときには無かった痛みが私を襲った。 疑問符ばかり浮かぶが唯一。 に興味を抱いている私が居た。 そして、言葉に出来ない想いが。
窓の外の雨は未だ止まない。 昨日はやけに響いた雨音は今日は少しだけ優しく響いた。
――さよなら、思い出。
……さよなら。キミが私の最初の恋人だった。
二部に分けても良かったかなーと思いました…(汗)長いから(滝汗) 主人公ちゃんの泣いてたのはこんな理由だったんですねー。というか、気持ち滅茶苦茶入ってます(笑)だから、題名も「思い出」ってことで(えー)今だから書けたと思います、この小説。ネタはあったけど、書くのが辛くて。でも、なんとか(笑) これから明るくしていこうと思います!! |
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