残暑も終わって

風が秋の香りを運んでくる頃に

あたしは










ただ、ただ――――











prayer







9月の終わりに、久しぶりにぼーさんに、綾子、ジョン、真砂子が事務所に顔を出してきた。

「で、麻衣。あんた誕生日はどうしたのよ?」

あたしが淹れた紅茶を一口飲んで、綾子が聞いてきた。

「誕生日?」

疑問符を浮かべると、次にぼーさんが声を荒げて聞いてくる。

「ナルぼーのだよっ!!もう一週間も過ぎたじゃねーか!!何かあったんじゃないのか?!」

「んー、別に何も?だってあのナルだよ?」

悪戯をするような笑顔を向けて、笑ってやった。

あたしたち三人の様子を安原さんと真砂子は別に気にしていないようにあっちはあっちで日本茶を飲んでいる。

リンさんは、パソコンのキーボードと睨めっこ。

話の話題に上ったナルは…いつもの所長室。

「っだーっ!!!お前それでもナルの恋人なんだろ?!おとーさんっお前をそんな風に育てた覚えはありませんっ!!!」

「そーよっお母さんだってっ…と、こいつは置いておいて。ホントに何もなかったの?世間一般的なことは何も?」

「うん。」

平然とそう答えたら、二人は肩を落として、「どーする、こいつら幸せにしないと親のプライドが…」とか「誕生日よりクリスマスなんじゃないかしら?」とか好き勝手言い始めた。

そんな二人を見て、少しだけ笑って、ナルのいる所長室に目を向ける。










別に忘れてなんかいない。










ただ、ナルの、彼らの誕生日は特別。







それに、ナルにプレゼントを聞いたときだって。

「別に。いらない。」その二言で済まされた。

そりゃ恋人同士なんだから、普通のカップルがしているようなことも考えた。

けど。

誕生日だけは。







普段どおりにして、そして。













―――ただただ祈るだけにしようと決めた。













ナルとそして、『彼』の誕生を祝おう。

それだけ決めた。













その日になって、紅茶をナルのところに持っていったら、夕日が綺麗に窓から入っていた。

逆光でナルの顔は見えなかった。

「はい、ナル。お茶だよ。」

いつものように、けれど、祈って。










「………ありがとう、麻衣。」







いつもは「ありがとう」なんて言わないナルが、口を開いた。

「…うん。」

それだけで、あたしたちは十分だった。













うるささが伝わったのか、所長室からナルが出てきた。

「麻衣、お茶。」

「はーい。」

声に出して、もう一度確認する。













あたしとナル、そして『彼』には、これで十分。













祈るだけで。




















どうも、ナルの誕生日をすっかり忘れていた伊予です…。まぁ、忘れてたお陰でこうしてネタにも困らず(コラ

物も言葉もいらない。ただ「おめでとう」と祈り、感謝するだけでこいつらは良いのかなーというのが今回のテーマ。

20080926 伊予