| 恋焦がれる、といった気持ちを知ったのは、仕事で霊をおろした時だった。
――あの人に会いたい ――愛してる
―――…愛してる
おろした後は、涙が止まらない。
涙
マネージャーから少しの休暇を貰って、いつの間にか足はあの事務所に向かっていた。 この前の収録で、涙が止まらないことがあってから、どうも敏感になっているようだった。 霊に感情移入をここまでしてしまうとは、プロとして恥ずかしい。 けれど、どこか、理由は、心の奥に存在していて。 それが絡まっているように感じた。 こんなときは、親友の笑顔と、暖かい緑茶が飲みたくなった。 (…あたくしらしくもない、落ち込んでいますわね…。) 苦笑を浮かべて、真砂子は足を速めた。
「あ、こんにちは、原さん。」 ドアを開けると、いつもいる青年の笑顔だけが迎えた。 「こんにちは、安原さん。今日は麻衣は?」 彼と同じアルバイトの親友の姿を探すが、どこにもいない。 「谷山さんですか?実はですね、今日は所長とデートです。」 「まぁ、仲がよろしいことですわね。」 「はは、確かに。」
他愛のない会話をして、青年は緑茶を出す。 それを当然のように手をとって、口に運んで、飲む。 彼の人柄のように、そして想いが溶け合って、どこか落ち着かせてくれた。 青年が彼女のとなりに座って、彼も当然のように笑顔でいた。
「今日はぼくと貴女しかいませんよ。」
声が降ってきて、また、ぽとりと、眼から、涙が落ちた。 湯飲みをテーブルに置いて、青年の肩に顔を伏せた。
「…最近、胸が、苦しいんですの…。特に、恋焦がれた霊をおろした直後に…。」 涙が止め処なくあふれて、真砂子は言葉を紡いだ。 「前から、彼女・彼らの気持ちを知って、苦しくなることもありました。…でも最近は…。」 「…最近は?」 青年の、彼女にしか聞かせない、見せない声と表情でいた。 手は、濡れた黒い髪の毛にある。
「…最近は…あたくしが…あたくし自身が……っ。」 息がつげないほど、しゃくり上げ、涙がぼろぼろと落ちていく。
――ナルのときはなかった、この激情をどうしていいのかわからない
会いたい 抱きしめて欲しい 抱きしめたい 触って欲しい 触りたい 好き 大好き 愛してる
色々な感情が噴出して、狂いそうになる
「―…安原さん…。」 今だ、下の名前で呼ぶことのない最愛の青年を見上げ囁いた。
「 」
それを聞いた彼女の最愛の青年は、困ったようで、それでも顔を赤らめて、彼女の前でしか見せないそれになる。
「…知っていましたか?ぼく、結構我慢していたんですよ…。ぼく自身も貴女と同じだったんです…。」
そう囁いて、涙を拭って、温かい雨を降らせる。 それだけで、また暴れだしそうになって、けれど、満たされた。
温かい雨と、腕の中で、涙と激情が交差して、「恋焦がれる」ということを初めて知った。
林さんはどうしたんだという突っ込みは無しで。(え)この後の二人はどうなるのでしょうか?事務所ではヤラないでしょう、さすがに…(コラ 20080911 |
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