「はい、原さんどうぞ。」

「ありがとうございます、安原さん。」











The War of Love










別に嫉妬していたわけじゃない。

うちの所長はみんなから、彼女から「ナル」と呼ばれることを。

彼女が彼に恋しているのは周知の事実だったけれど、最近勝敗が決まったらしい。







「今日はどうしたんですか?谷山さんも、所長も、リンさんもいないですけど?」

彼女の細く、綺麗な、まるで人形のような指が緑茶の入った彼女専用の湯飲みにあてられる。










勝敗が決まった。

そう雰囲気で理解した。

越後屋と言われたり、破戒僧やエクソシスト、自称巫女と関わっていく中で身についた観察力がものを言っている。

それがわかったところで、はやし立てるものでもないけれど。

ただ、理解した。








恋をしている女性は綺麗だということを。







それは同じアルバイトの彼女だけでなく、目を引いたのは今目の前にいる彼女。

自分をぎりぎりまで追い詰めて、親友にも幸せになってもらいたいと、自分の恋の切なさに身を焦がして願っていた。

彼女の口が「ナル」というだけで、嫉妬していないと否定し続けていたが、それが結局は「嫉妬」で、自分の心を占めた。










それが、大分前。

決したのが少し前。










「今日は、安原さんの緑茶を飲みにきたんです。麻衣も美味しいけれど、緑茶は貴方が一番なんですのよ?」

そう言う彼女はとても、綺麗だった。

この自分が、越後屋と言われている自分が、こんなにも心を乱されるのを知られたくはなかった。

「お褒めの言葉に預かり光栄ですよ。谷山さんのは所長限定ですから。」

にっこりと、いつもの笑顔で、そう言った。

知られたくないから、こんな冗談も言える。苛めてみたくなる。

初恋が叶わなかった彼女は、以外にも、晴れやかな、珍しい顔で笑った。

「ふふっ、そうですわね。麻衣の紅茶はナルのものですもの。」

以外にも、自分のほうが、驚いた。

「そう返されるとは思いませんでしたよ、原さん。上手くなりましたねぇ。」

「それは、もう。」

二人で、瞳を交差して、笑う。

ひとしきり笑った後に、彼女が続けた。










「心の整理はもうとっくにつきましたのよ?」










それは、彼女から出された宣戦布告。







「それは…よかったですね。」

「えぇ。ですから、わたくしのことをこれから―――」













「―――真砂子と呼んでくださいませ。」










にっこりと、けれど、初めてみるその顔が、攻撃に見えた。

惚れた相手には弱いとよく聞くけれど、自分もそうなのだろうか。

いや、ここで受けねば、自分のプライドが許さない。

そうして、彼女と似た、けれど、自分自身の笑顔で答える。










「…それでは、僕のことも修と呼んでください。そして、僕が淹れる緑茶は貴女専用です。」










彼女も、こんな攻撃が来るとは思わなかったらしい。

顔を真っ赤にして、目が潤んでいる少女がいた。

「はい…もちろん、ですわ。」

その声を聞いて、一瞬、抱きしめたいと、本能が叫んだ。










これから、どんな攻撃が来るのだろう。

それが怖くもあり、楽しくもある。










さぁ、これからどうしましょうか?




















拍手の短編バージョン。BGMはミクの「恋は戦争」です…。こんな安原→←真砂子が好き…!

2008 8 1