| 「麻衣、お茶。」
「はい、ナル。」
このやり取りが、日常になってきた。 もちろん、淹れるお茶は、紅茶。 ナルに指示されたってわけじゃないけど、最初から紅茶しか置いてなかった。 けど、あたしも好きだったから、別段と疑問も浮かばなかった。
ひふの うえを 細い氷が走ったみたいな感じがした
いつの間にかあたしの口からは悲鳴が漏れていた。 綾子と真砂子が心配そうな顔をしていた。 思い出したくもない、夢。 けれど、夢に出来ないくらい生々しかった。 ドアを開ける音がして、ナルとリンさんが入ってくる。
黒い服を着ていないナルは新鮮だったけれど、それよりも。
―――ナルの手にはカップが。 もちろん、香りで紅茶だとわかる。
「だいじょうぶか?」 その言葉と紅茶の香りで落ち着く。 「……うん、だいじょうぶ。ありがと……。」
その紅茶の味は、今まで飲んだことのないくらい美味しかった。茶葉の香りがふわっと、鼻腔を通り過ぎる。 それが、まるで、ナルの、前の事件でグラウンドで見せてくれた笑顔のようでそれだけで、満ち足りた気もちになった。
そして、どうして「紅茶」なのか。 その理由を今、あたしは知った。
紅茶
ウラド事件のあの場面です。ナルが麻衣のために紅茶を淹れてくれたのはこの場面くらいだと思ったので。余談ですが、イギリスの紅茶は恐ろしいくらい美味いです。やっぱり水が違うのか、ティーバックでもヤバイです。留学から帰ってきたとき、日本の紅茶の不味さに驚きました…。 2008 7 29 |
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