|
梅雨の晴れ間に、その花は雫を浴びて輝いていた。
それがとても綺麗で。
あたしは花屋でそれを買っていた。
Hydrangea
渋谷にオフィスを構える渋谷心霊事務所の事務室に、それはあった。 所長こと、渋谷一也はそれを見て、眉を顰めた。
「…麻衣、なんだこれは。」 透き通るような綺麗な声で所長は呼ばれたバイト事務員に尋ねた。 「何って、見てわからない?紫陽花だよ、ナル。」 何がそんなに気に食わないのかわからない麻衣はいつもの調子で答える。 「道端で見た紫陽花が綺麗でさ、買ってきちゃった!」 えへへ、と屈託もないその笑顔で笑う麻衣。 薄ピンク色の紫陽花は花瓶にさされて、テーブルの上に置いてある。 「ナルにあげようかなーって思ってたけど、その顔見てあげるのやめた。うん、今やめた!」 よほど、麻衣は紫陽花が好きなのだろう。関係のないことを口にする。 ナルと呼ばれた所長はバカにするような笑いをしてこう繋げる。 「あなたからそんな花を貰って僕が喜ぶとでも?谷山さん。」 「なななななによぅ!!」 声をあげて、麻衣はいつものように抗議する。 いつもの嫌味が今日は一段とすごいような気がした。 「じゃぁ、どんな花が欲しいのよ、ナルは。」 「別にいらない。」 「もし!もしだよ!」 またくだらないことをとでも思っているような顔をした。 けれど、麻衣に聞こえるか聞こえないかの呟きを口にした。 「――――…I would like "Violet".」 「へ?」 「麻衣、お茶。」 呟いて、いつもの文句を述べて、ナルは所長室に入っていった。 疑問符ばかり浮かぶ麻衣は、ナルが言った言葉の意味と、ついでに花を調べた。
紫陽花…移り気・冷ややかな美・あなたは美しいが冷淡だ・忍耐強い愛情 スミレ(Violet)…真実の花・恋の真実
麻衣はそれを見て、一人赤くなって、満足した笑みを見せる。
……移り気じゃないってことかな、ナル?
本末転倒SSです。すみません。とりあえず、紫陽花を出したかったのですよ。んで、花言葉は何かなって。そしたら、ご覧のとおりです(笑)イギリス留学してたときに見たんですけど、あちらも紫陽花が結構定着してまして。どの家にも紫陽花が!みたいな。色をちょくちょく変えるから「移り気」なんですって。 紫陽花好きなのになぁ…。 花言葉はこちらから。 2008 7 28 |
|||