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想
『俺は、お前を手放す気なんかねぇからな、 。』 そんなことを、凌統から言われて。
―――初めて、キスされた。
それから、数日。 はらしくもなく、ボーッとしている。 身体の調子も戻ってきて、鍛錬にもちゃんと行っている。 けれど。 ボーッとしてしまうのだ。 今日も鍛錬を終えて、湯浴みを済ませて、自室の寝台にボフッと寝転がった。 焦点を定めずに、近くに立掛けている愛刀を見た。 「……やっぱり、原因はあのことだよなぁ…。」 ポツリと呟いて、数日前に、凌統にキスされたのを思い出す。 女の子としての想いと、家の者としての想いが錯誤していた。
(…確かに、あたしは…凌統のこと、好きなんだ…けど……。) その想いは、やはり、作り出されたものなのかという疑惑。 陸遜とが出会ったように、趙雲とが出会ったように、これもまた必然で運命なのかも知れない。 夢で見て、たしかに現実となった。 自分自身の想いは変わらないもの。 けれど。 「やっぱりさぁ…戸惑うよ…母さん…。」 そうまた呟いて、枕に顔を埋めた。
が寝台でじたばたしていると、扉から、遠慮がちに陸遜の声がした。 「――?いますか?」 「いるよぉ〜、父さん〜。」 は、気のない声を出して、相槌を打つ。 その声を聞いて、少し微笑しながら、陸遜は入ってきた。 「どうしたんです?そんな気力のない声を出して。らしくもない。」 「うぅ…酷いよ、父さん…。」 枕から顔を上げて、ばらばらになった髪の毛を結び玉で結いなおして、座りなおした。 「大方、凌統殿でしょう?悩みの種は。」 「う”…。」 やはり、呉の軍師殿である。 的を得ている。
そんな父を見て、はぽつりとまた呟いた。 「ねぇ、父さんはさ…。運命や必然でなくても、母さんを好きになった?」 俯きながら、そう言った。
「あたしはさ…凌統のこと、好きだけど…。その『想い』が運命によってすでに定められていたとしたら…あたし、凌統にちゃんと『好き』って伝えられないよ…。」
先に敷かれたレールをただわからず、歩いているだけなのかも知れない。 自分の「想い」だというのに、信じられないでいた。 陸遜は、目を細めて、笑った。 それがまたとても普通に。
「―――好きになるでしょうね。」
きっぱりとそう言う。 「にも言ったことですけどね、。この『想い』は変えられる事のないものです。だから、もし定められていたとしても、それは『あなた自身』なのですから。」
――嘘偽りのないものなんです。
「だから、自然と好きになったでしょう」と、陸遜は言った。
しばらく、陸遜を見て、は吹っ切れたように笑顔になった。 「――…そっか、ありがと、父さん。」
運命をすでに変えている身なのである。 必然でも、運命でも、この気持ちに「嘘」はない。 自分自身のこの「想い」は誰にも変えられないんだ。 ――母さんも、悩んだのかな?
「でもさ、ここで素直に凌統に『好き』なんて言ったら、からかわれそうなんだよね。だから、まだ言わないの。」 悪戯な笑顔ではそう言った。 その笑顔がいつもの彼女で陸遜は落ち着く。 「その顔、殿に似てますね、。」 「えっ?叔母さんの方が意地悪だよ?」 お互いに笑い出して、顔を綻ばせた。
「そうだ父さん。あたしに用事?」 「あぁ。様子を身にきただけです。怪我はどんな具合か。」 そういう陸遜の顔は本当に心配気で。 は和んだ心をきゅっと引き締めた。 「大丈夫だよ、父さん?ね?」 包帯の取れたところを見せて、治っていることを表面に出す。 けれど、右耳と右目はいまだ元には戻らない。 「…それなら、良いですけど、無理はしないでください。」 「うんっ!」 とびっきりの笑顔でそう言った。
今はまだ、明かせない。 大切なことを教えてくれるあなたは大好きだけど。 優しい嘘で言わせて?
だって、これをきっと終えてしまったら、あたしは。
一番の、あたしがここに来た目的、役目は――――。
とりあえず、補足説明をば(笑) やくそく編の「おもい」と微妙にリンクしてます。家の場合、運命とか必然とか関係してくるわけですよ、今までの歴史上。だから、陸遜ととの間に生まれたはその家の運命を変えて生まれてきているわけです。けれど、この世界に来たのは、家の代々のこと。運命を変えているけれど、やっぱり、それさえもどこかで敷かれた未来なのか、と疑問に思っちゃうわけです。なので、凌統への「好き」という気持ちもそうなのかということです(長っ)ま、結局は陸遜パパがちゃんと同じことを言って納得させますが。『運命でも必然でもこの「想い」は変えられません。』ということです。 なんだか、まだまだ終りませんね…(滝汗)ちなみに、のこの世界にやってきた目的、役目、「鳥」などの関連性、すでに皆様はわかってらっしゃるかも知れませんね。そうです、あれです。 |
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