役目











凌統の腕の中に抱えられている を見て、陸遜は不安を覚えた。

このくらいの傷は戦では良くあること。

けれど、それ以上にどこか、危うい雰囲気が出ていた。





「――凌統殿、ありがとうございます。急ぎ救護班を!」

震える声を絞り出してなんとか、そう言った。

腕からの出血はまだ続いている。

それと同じで、右耳からの出血も。

陸遜は気づかれないように苦い顔をした。

それ以上に、凌統が辛い顔をしていた。















夷陵の戦いは呉が勝った。

陸遜が提案した火計が上手くいき、蜀軍は総崩れとなった。

大将の劉備を討ち取り、事実上蜀は滅びた。

がその知らせを聞いたのは戦が終って2週間のことだった。












鍛錬場から、病み上がりだというのに、勇ましい声が聞こえる。







「たぁぁぁっ!はぁっ!!」






いつもの、異国風の着物の振袖を舞わせながら、 が鍛錬に励んでいる。

傷を負ったというのにその気配すらない。





けれど、右耳のピアスは無く、右目の光も無かった。





「…はぁ…はぁ…っ。」

酷く、右耳のそれがあったところが痛んだ。








(…きっとこれがあたしの役目なんだ…。一つの役目を終えるとこうして、代償を払わなくちゃいけないんだ…運命を変えた代償に。)









本当は、 が生まれたこと事態が逆らっているのだ。

本当は、 のこの想いは伝えられることの無いことだったのだ。

それをして、『代償』が の身に降りかかった。

この右耳と右目に。

今では慣れたが、右耳はあまり音が通らず、右目はぼんやりとしか見えない。

そして、もう一つの「役目」を終えたら…きっと。

それを他の将に気づかれないよう、鍛錬に励んでいた。














「―― !包帯替えんぞ!」

横の廊下から、聞きなれた声がして、刀を下げる。

「わかったわ、凌統!今行く。」

汗を手で拭って、凌統の元へ行った。

腕の傷の包帯替えは凌統がしてくれて、すでに日課になっていた。












「ったく、傷が治りきってねーのに鍛錬なんかするんじゃねっての。」

「しょうがないじゃない、早く復帰したいんだからさ。」

「俺は無茶するなっつてんの!」











そんな他愛の無い会話をするのが、お互いに笑顔になれる時だった。







腕の包帯を替え、道具を片付けているとき、ふと、凌統が の右目に、頬に手を伸ばしてきた。







「…大丈夫なのか?」








低い声でそう言われて、彼のその心を受け止める。

は微笑んで、その手に甘えるように言う。

「大丈夫だよ、凌統。ちょっとぼやけてるだけだから…。」

「…俺は反対してんだからな、 。鍛錬するのも…また戦に出ようとするのも。」

凌統の苦い顔が見えた。







を運んできたときから、わかっていた。

の身に、何が起きたのか。

彼女が何も言わなくても、お互い、それがわかった。

それが「代償」なのだということも。















「…ありがとね、凌統。でもあたし、やらなくちゃだから、あと一つ…大事なことを。」

そう言う は微笑んで、はっきりとした声色で答えた。

それを聞いて、急に胸が苦しくなった。

そして、今まで、言えなかった言葉が口から出た。














「俺は、お前を手放す気なんかねぇからな、 。」














薄々、彼女の最後の一つ。大事なことがわかり始めていた。

元々、その目的なのだろう。彼女は「一族」の鳥なのだから。

けれど。

出会ってしまって、独占したい自分が居た。













「凌統…それって――んっ。」









から紡ぎだされた言葉は最後まで音とならずに、凌統によって遮られた。












柔らかい安心感に包まれながら、 は想った。



















――あたしが、ここにいる理由は役目だと思っていたのに…あんたが変えちゃったんだよ、凌統……。












え〜っと、お久しぶりです(笑)そして、なんですか、このラブラブモードは!!(怒)この野郎ども…イチャイチャしやがって…!!(号泣)←ひがみです(え)久しぶりに書いたので、恐ろしいくらい自分の雰囲気が掴めてません…あわわ。