| 異変
「――― 殿負傷!!まもなく、こちらに来ます!」
戦局が大きく呉に傾き、火計も成功し、まもなく蜀が滅びようとしたそのときに、本陣にいる陸遜の元に伝令が来た。 「…っ!救護班は備えておいてください!まもなく戦は終ります。それまで…!!」 陸遜がそう声を張り上げて、敵本陣を睨んだ。
伝令は本陣だけでなく、凌統や甘寧のいる部隊にも伝えられた。 「っあんのバカ…無理すんなっつたのに…。」 拳を握り、凌統は呟いた。 それを横目に、甘寧は笑っていた。 「…甘寧、てめぇ何笑ってやがる?」 声色が低く、凌統の機嫌の悪さがわかる。 それをもまた笑った。 「そんなに心配ならさっさと んとこ行けよ、お前。見てるこっちが恥ずかしいぜ?」 「はぁ?!」 「幸い、もう戦は終るだろうしな。」 それを聞いて、凌統はバツの悪そうな顔をして背を向けて歩き出した。 「おぃ、凌統!ちったぁ俺に感謝しろよな!」 「言ってろ!バ甘寧!!」 その言葉を聞いて、声を上げて甘寧は笑った。
馬を駆り、先ほど、趙雲と が戦っていた場所を目指す。 いつの間にか、彼女をおいてこんなところまできてしまった自分を恨んだ。 そして、こんなにも彼女のことを気にしている自分に苦笑した。 程なくして、見覚えの有る着物の柄が木々の中から見えた。
割れたピアスがついていた右耳の感覚がない。 それに腕を斬られたと言っても重症でもないのに、どうしてこんなに疲労があるのだろう。 そんなことを思いながら、 は本陣に向かっていた。 身体の変調はそれだけではなかった。 身体が震え、右目の視力が弱まった気がする。 最初からなんとなく判っていたのに。と頭の片隅で、 は呟いた。 元々、運命を変えて生まれてきた。 それならば、これくらいのことが起きてもおかしくないと。 頭の、片隅でそう思った。 そう思ったら、また急に怖くなった。 もう一つ、しなればいけないことをしたら。 前を進む足が止まって、夜の空を見上げた。 「――あいつに、一言言って貰えたら、きっと大丈夫になるのにな、あたし…。」 霞む眼差しの向こうに、馬に乗ったその人が見えた。
の元に着くと、彼女はボロボロだった。 着物の裾はところどころ切れていて、身体は埃だらけだった。 そして、右耳のあのピアスがあったところは彼女の血が流れていて、右目に光が無かった。 「 っ!」 すぐに彼女の元に駆け寄った。 凌統のその姿を見て、 は微笑んだ。 「えへへ…ちょっとぼろぼろになっちゃった。」 その言葉を切って、凌統は を抱き上げた。 「ちょっ!!りょうと…。」 「いいから黙ってろ!!」 彼女と一緒に馬に乗って、本陣に向かった。
馬に二人で乗って、凌統の胸に抱きかかえられて、 はまた視界が霞んできた。 もしも、自分がまたこうなったとしても、きっとこの人はまたこうしてくれるのだろうと思った。
そこには、どこか安心感があった。
霧がかかって、意識が遠のいた。
久しぶりすぎてとってもヤバイです…あわわ; |
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