| 纏わり付く汗と布がとても邪魔だった。
もうすぐ、貴方に会えるというのに。 汗で少しくせっ毛の髪の毛が張り付いた。
儚夢
「――でぇあぁあぁああああっ!!!!」
人を斬る感触がすぐに伝わってきた。 音を立てて、兵士が崩れ落ちる。 周りで甘寧や凌統が朱然を守っている。
「っ!出過ぎだっつの!!」
あたしの背中に凌統の背中が当った。 あたしは苦笑いをして、また人を斬った。
「しょうがないじゃない。行く道を作らなくちゃでしょ?」 彼は「朱然が火計を実行する目的地への道」だとは思ってくれなかった。
愛刀を振ると、振袖が舞う。 自分の姿も隠すことが出来る。 今では、埃と血まみれなのに、鮮やかに見えた。 「―――とりあえず、川を渡るぞっ!」 その凌統の言葉と同時に、桟橋が掛けられた。
一番の激戦地となるこの場所に、私は今いた。 諸葛亮殿の指示でもあるが、私自身、この目で、敵軍にいるあの少女を見ておきたかったのだ。 「たぁっ!」 自分の槍を敵兵に差し込んだ。 周りは屍だらけだった。 苦い気持ちになったが、今は、ただ。 一瞬だけ瞳を閉じると同時に、目の前に呉の軍勢が勢い良く流れ込んできた。
「いっくぜぇぇ??!朱然には指一本も触れさせねぇ!!」 甘寧が戦闘を切り、その後に朱然とあたしたちも続いた。 土の感触から、木の感触が足から伝わってくる。 あたしが、現代から履いて来たサンダルの靴音が他の兵士の靴音と混ざった。
耳の紅いピアスが熱を持っているのがわかる。 特に右耳が。
そっとそれに触れて、苦笑した。 隣の凌統に話しかけた。
「ね、凌統。」 「あ?なんだよ。」 「あたしさ、叔母さんのこと、大好きなんだ。」 「あぁ。」 「だから、伝えてこなくちゃいけないの。」
風を切って、錆付いた戦場の香りがした。 足元の感触が木からまた土へと変わる。
「だったら、早く行ってこいよっ。そんで、また俺んとこに戻って来いっつーの!!」
一瞬だったけれど、彼の指があたしの頬の埃を取ってくれた感触がした。 こんなに、切なくて、心が揺らごうとしているあたしの心を落ち着かせてくれる人。 やっぱり、ちゃんと話が出来ていてよかったと、改めて思って。 心が温かくなった。 倒していった人々の為にもあたしはここで立ち止まってはいられない。 瞳に、また光を宿して前を見据えると。
―――趙子龍がいた。
赤い敵兵の中に、少女を見つけた。 異国の着物を着て、彼女だけが扱える武器を持ち、こちらにまっすぐに向かってきた。 戦の騒音が一切聞こえなくなった。 彼女の地面を蹴る靴音だけが聞こえる。 抜き身の武器が真っ直ぐに自分の懐に素早く振り下ろされようとしていた。 「―――くっ!!!」 槍でそれを凌ぎ、鍔迫り合いとなる。 少女の力とは思えないほど、重いものだった。 「…趙子龍殿ですねっ?」 お互いの武器が鳴っている中、その少女が言葉を発した。 その声色はやはり、あの柔らかい彼女の声に似ていた。 「―いかにも。」 そう答えて、彼女を突き放す。 数歩手前に立っている彼女は、にも似ていて、その妹君の殿に似ていた。
「時空を越えて、伝えに参りました、趙雲殿。」
風が吹いて、その髪の毛が靡いて、儚げな笑みを浮かべていた。
二話連続アップ出来るか?!(笑)もう、いろいろとあれですけど、見逃してやってください(爆) |
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