次の戦で、呉は蜀と戦う。

蜀は大事な義兄弟の弔い合戦だと言っている。

その戦に、命運が架かっている。

そして、あたしの友達の尚香も出陣するという。

尚香は悲しい顔をしてあたしに呟いた。

「――わたしは、呉の孫尚香なのよね、…。」

目蓋を落として、何かに願いをかけるように。

あたしも、敵として会う、もう一つの願いと想いを。










「―――殿っ!お待ちください!!今は呉ではなく、魏をっ。」

「えぇいっ下がれ趙雲!!皆、戦の準備だ!!」





蜀の君主、劉備が声を荒げて、趙雲の進言を退いた。

傍らにいる諸葛亮は白扇を持ち、苦い顔をしている。




その劉備の一声で、蜀は戦の準備をちゃくちゃくと進めていった。

幕舎の中で、趙雲は自分の武器の手入れをしていた。






(殿の無念もわかるが、けれど、この戦…。)




少し、溜息を付いて、ことりと武器を置いた。




顔の横から、自分が額に巻いている布がはらりと落ちてきた。

ふと、異世界の、笑顔の彼女が思い浮かんだ。










強い風とその周りを舞う白い花弁。

彼女の誕生日だというのに、何もあげられなかったが、彼女が欲しいと言っていた額に巻いていたものを、瞬間離していた。

それが彼女にちゃんと届いたかどうかは判らない。

こちらに還ってきて、同じものをまた額に巻いた。

それが、彼女と自分を繋ぐものであるように。










趙雲は無意識に、その笑顔の絆を誓った人の名前を呟いていた。






「―――。」







それは酷く響いた。

すると、ふわっと風が入ってきたかと思えば、手元に、あの白い花弁が一枚、舞い込んできた。

それを手にとって、見た。

すぐ横で、左手首に、自分の額に巻かれている同じものを巻いていて、あのときの白い花を持っているが見えたような気がした。

それが、何かを予感することだと、趙雲は思った。
















蜀との戦の軍議にも出席していた。

尚香も、凌統も陸遜も、呉の武将が全員いた。





「蜀は関羽の弔い合戦だと言っています。相当の戦力で来るでしょう。」





陸遜が書簡を手に、冷静な声でそう言っていた。

「ふむ…陸遜、何か策は?」

「はい、殿。…火攻め、かと。」

やはり、叔母とした無双と同じである。

と、すると、目的はたやすい。






「火計の要は朱然殿です。ここに橋を架けますので、そこを突っ切ってください。」

「判り申した。」

「朱然殿を警護するのは、甘寧殿と凌統殿で――。」

陸遜がそこまで言って、は声を上げた。








「軍師殿、あたしも行く。」









そうが言うと、皆が驚いた。

特に凌統と陸遜が。

すぐに陸遜は反論しようとしたが、の瞳を見て、口を噤む。

凌統はと言うと、ただただを見ていた。

「いいんじゃねぇの?こいつ、なかなか腕立つしよぉ。」

甘寧が、面白そうにそう言った。

少し考え、陸遜は書簡を置き、言った。

「――判りました、。では貴女も甘寧殿と凌統殿と一緒に朱然殿を。」

「…判った。」

それから、軍議は滞りなく終った。












。」

軍議が終わり、陸遜はを呼び止めた。

「どういうことですか?貴女が、凌統殿たちと一緒に先陣を切るなどと…。」







「――もう一つの、叔母さんの想いを伝えに行かなくちゃいけないんだ、あたし。」








その言葉を聞いて、陸遜は思いだした。

自分が家に来る前に、もう一人、来た者がいると。

それも、のときにとは言っていた。






「…蜀の者だったのですか。」

「大丈夫、あたしを信じてよ――父さん。」






そう言うはどこか凛としていて、すでに何かを決めているようだった。

それがとても彼女に似ていた。







「…判りました、。貴女を信じましょう。」

「ありがとう。」

声に出して、そう言って、気持ちを落ち着かせた。














別れてから、一人でいる凌統に駆け寄った。




「凌統、次の戦、よろしくね?あたしここに来て、初めての戦だからさ。」

いつもの調子で、凌統にそう言った。

「あ、初めてじゃないか。最初来た時、もう戦に立ってたっけ。」

らしくなく、苦笑いを浮かべている。








それを見て、凌統は、初めて会ったときのことを思い出した。






「お前、無理してるだろ。」

「…。」











返り血を浴びて、佇んでいた。

あの時から、自分の「役目」に縛られていると思った。

そして、それがとても大事だということも。








「…俺がいるから、無理すんなってーの。」






そう言って、の頭にぽんと手を置いて、自分の方に引き寄せた。

いつもは恥ずかしいと思うのに、今はそんな気がしない。

ただ、相手への想いだけがあった。

凌統の胸板から規則正しい音が聞こえて、自分も落ち着ける感じがした。

「――…うん。」














自分の「役目」は大事だ。

けれど、初めて人を斬ってしまって。

臆病になった。戦場が怖くなった。

けれど、あたしは一族の「鳥」。

やっぱり心に不安はあるけれど。






凌統がいるから。













――――夷陵の戦いが始まろうとしていた。
















えーっと、凄い不安でありますよ。夷陵の戦い(滝汗)趙雲も出て、尚且つ、陸遜、凌統が出る戦いゆーたら、これしかなくて。最初は赤壁らへんにしようかと思いましたがそこは兄にすることに。あ、兄ちゃんは黄巾の乱らへんに来たんですよ…んで、権坊とか陸遜の幼い頃に会ってたーって時間軸合うのかあやふやですけど。