| 風
尚香と手合いし終わった後に、凌統がこちらを見ているのに気がついた。
「ん?」 「どうしたの、?」 動きが止まったあたしをみて、尚香が話しかける。
その瞬間、目が合った。 お互い、動揺してしまった。
ぷいっと背を向けると、尚香が目を丸くして疑問符ばかり浮かべていた。
―――この頃、どうしてぎこちないんだろう?
そんな想いが頭を掠めた。
思えば、この世界に来て、初めて会った人は凌統だった。 初めて会ったときも、なんだか、不思議な想いが頭を掠めたような気がする。 なんだかんだいって、先日、ちゃんと話せるようになった。 それから、城下に買出しにも一緒に行ったし、食事も一緒にする仲になったつもりである。
腕を組んで、難しい顔をしながら回廊を歩いていると、案の定、彼にばったり会った。 また目が合う。 動悸が激しい? そんな様子を見て、凌統は声を上げて笑った。
「おまえ、何そんな変な顔して歩いてんだよっ?!おもしれー!」 「うっうっさいわね!あたしにも色々と考えることが…!」
「そんなおまえに付き合って欲しいとこがあるんだけど?」
まだ笑みを浮かべた顔で、あたしにそう言ってきた。 なんだか、その低い声で言われて、顔が赤くなりそうだった。 「…え?その、良いよ?」 「―――っくあははっ!何、さっきあんなに騒いでいたのに。ホント、って、コロコロ変るヤツだな。」 また、そんなことを言われた。
しょうがないじゃない。 なんだか、あんたの仕草や声聞くと胸が苦しくなるんだから。 でもそんなこと決して口には出来なかった。 ただそう言った凌統を掌で殴った。
凌統に着いていくと、そこはただの広い草原だった。 その広い草原にどかっと凌統は腰を下ろした。 「もここに座れば?」 「うん。」 凌統の隣に座ると、風が吹き抜けた。 あたしがいた世界では感じることの出来ない、自然の風が。 どうして、あたしをこんなところに案内したんだろう? 「――父上とよくここに遊びに着たんだよ。」 まるであたしの心を読んだように、そう言ってきた。 「へぇ、父さんと一緒に?」 「あぁ、よくここで空を眺めて、鳥を見てた。」 あたしも凌統と同じように空を見上げた。 広い青空が広がっていた。 いつか見た、母さんと見上げた空のように。
「…鳥はどうして空に行けるのかと父上が言っていたっけなぁ。」
凌統が父さんの話をすること自体が珍しい。 この頃は甘寧との仲も良いらしい。 だからなのだろうか。 そんなことを思って、凌統の横顔を見つめた。 初めて会ったときは、夢の人だと思った。 現実に会うと、子供っぽくて、皮肉屋で。
そして。
「――あたしは 」
あたしなりの答えを言おうとしたとき、強い風が吹いた。 それでもきっと凌統には届いたのだろう。 彼はあの笑いを浮かべて、笑っていた。 それだけで、胸の切なさも、温かさも一杯になった。
その理由は必然だとしても、あたしは―――――
風になびくあたしの髪の毛の結び玉が淡く光っていた。 戦の、蜀との戦いが始まろうとしていた。
そして、もう一つの想いを伝えることを。
の恋愛感は姉ちゃんに似たんですねv(死)そろそろやっと趙雲が出てきそうです。うん。約束編は20話前後で終らせる予定です。 |
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