喧嘩










が案内された部屋は以前、が使っていた部屋だと言った。

普通の部屋のような感じがするが、シャープペンシルや消しゴム、カバンが置いてあった。

そこはがいた証でもある。

女官がいなくなって、は壁に落書きされた文字を見て、笑った。

「――叔父さんっぽいこと書くなぁ…。」

そこには、若い頃のが確かにいた。











「―凌統殿!」

いつものごとく、ぶらぶらと回廊を歩いていた凌統に陸遜が息を切らせながら、呼んでいた。

「どうしたんだよ、軍師さん?」

「いえ、あの女性…、殿を発見したのは貴方だと聞いて…。」

いつもの落ち着いた様子とは裏腹に、今は取り乱している陸遜がいた。

それを見て、凌統は変だなと感じながら、胸の奥がざわついた。

「…それがどうしたってんだよ。」

「何か言っていませんでしたか?」

そのとき、陸遜の面影が、重なった。

それと同時に真剣な陸遜の眼差しが刺さる。

それだけで、心が暴れだしそうだった。




「――『一族の、鳥だ』と、言っていた。」





不機嫌な低い声でそう言って、足早に陸遜の元を去った。

その言葉に、陸遜は信じられないと言った表情をしていた。












(…まさか、そんな…。)

一人立つ陸遜はそんな思いをしていた。

今でも心から愛した彼女を思い出す。

数ヶ月前の出来事だというのに、信じられなかった。

(いや…これも、の言ったとおりの『必然』なのでしょうか…。)

そう思いながらも、陸遜の顔には穏やかな微笑が浮かんでいた。














心がいらつく。

本当にどうして、こんなに騒ぐのかわからなかった。

ただ、戦場で見つけただけなのに。

陸遜があの女の話をするのを聞いていたくなかった。

「――チッ…!」

そうして、外を見ると、井戸で顔を洗っているあの女、を見つけた。

白い布で、顔に付いた返り血を拭いていた。








井戸の冷たい水が頬に沁みた。

白い布が見る見るうちに赤く染まった。

それをまた桶に入った水につけると、後ろを向いた。

そこには、戦場で初めてを見つけた男、凌統がいた。













は立掛けていた愛刀を握った。

「――何か用?」

ただ、無言で凌統は近づいてきた。

そして、風を切る音と共に、は刀を抜いていた。

刀と鎖が交差する音が響く。

凌統は自分のヌンチャクをに向けていた。

そして、それをは愛刀で受けた。

緊迫した空気が漂う。

先に口を開いたのは凌統だった。








「お前、本当に何者だ?」

「――あたしは、よ。そして、一族の鳥。」

「だから何者だ!」








そう怒鳴って、互いの武器を弾いた。

見たこともない群青色の瞳がまっすぐに見ていた。






「――はっ、それだけしか言えないんだったらそんな名前要らないんじゃねぇの?!」






そう言われて、の目に怒りが灯った。

素早い動きで、相手の懐に飛び込んで、刀を突き立てて、叫んだ。









「あたしの名前を侮辱するなっ!母さんと、父さんが付けてくれた名前を!!」












そう、時空を越えて出会った父と母が付けてくれた名前。

それは、自分が侮辱されたというより、両親を侮辱されたと言ってもよかった。

騒ぎを聞きつけて、城の者たちが集まってくる気配がした。

舌打ちをして、武器を引いた。

「――俺は、お前を信じないからな。」

そう吐き捨てて、背を向けて去った。

それは、自分とは違うものへの恐怖と胸の奥でうずくまだ気づかない気持ちとが入り混じったもの。










子供の喧嘩のような凌統の言葉に、は苛立ちを覚えた。

(――何よ、あれが夢の相手だって言うの?)

もともとの性格は、はっきりしている。こんな一方的に怒鳴られて、いい気分でもない。

そして、それが、夢に出てきた人だということも。

それならば、兄が壁に書いた助言通り、わけを話そうと思ったが、それをちゃんと聞いてくれるかどうか、心配になった。












売り言葉に買い言葉。

何かが動き出す歯車を二人は「喧嘩」という方法でしか、表せなかった。













まず、ごめんなさい(滝汗)えーっと、あれですよ、難産?v(コラ)実際凌統は陸遜にヤキモチを焼いて、戦場に、いきなりなんだか強い訳わからない女が着たってことで、怖いんですよ、のこと。えーっとちなみに、はいまだに、自分の性格、地を出しておりません。だから、なんだか、ちゃんに似ているわけですねー。…ホント、ごめんなさい(汗)