何もかも消え去ればいいのに









「――子龍、ありがとっ迎えに来てくれて。」

私は雨の中、学校に迎えに来てくれた子龍に笑顔を向ける。

「…いや。ほらっ、雨に濡れるぞ。」

私に笑顔を返して、濡れないよう一つの傘に入った。

私を気遣ってか、ぴったりと寄り添って、子龍の手が私の肩にある。

彼がこの世界に、この異世界に来てもう三ヶ月にもなる。

私の中で彼の存在が大きくなるのには十分な時間だった。






他愛の無い話で、私は笑顔で彼に話をする。

例えば、学校での友人たちのことを。少し子どもっぽい言動の私をいつもからかってくるってことも。だけど、そんな彼女たちは大切な友人でもあるということも。

例えば、兄や妹のことを。妹の料理を真似て姉の私が料理をしたら酷いモノを作ってしまったことも。だけどそれを美味しいって子龍は食べてくれたよね、なんてことも。

そんな話を、彼はまた興味深そうに時々笑って聞いてくれる。











この異世界に子龍が来て、私は嬉しかった。

それは心からの私の想い。

子龍はどう思っているのかわからないけれど。

彼のその笑顔を見れるだけで私は幸せになれる。

いつまでもこの幸せが続けば良いなんて思ってしまう。

けれど。









いつかきっと「別れ」が来るって知ってた。















「――?」

長身の彼の声が上から降ってきた。



見上げるとそこには子龍がいる。

紛れも無い子龍の存在がある。

私は笑顔を作って、答える。



「…子龍が近くにいるとあったかいね…本当に。」










もし「別れ」が来たとしても、彼が思い出す私は「笑顔」の私が良い。

初めてこの世界に彼が来たときから、彼の不安を少しでも和らげられるように。






「私も――が傍に居てくれるだけで暖かい――。」








いつの間にか繋いだ手から伝わる。

彼のその言葉を聞いて、少し頬を赤らめて二人で「笑顔」になる。












本当の気持ちも笑顔で。

悲しく寂しい気持ちも笑顔で。










そんな風に思うと、全てが「別れ」も「笑顔」でさえも。

こんな風に思ってしまう私のこの気持ちも。

彼との幸せが続くのなら。




















何もかも消え去ればいいのに。なんて思ってしまう。




















丸裸の私を見て欲しいなんて我が儘。










――きっと思っちゃいけないんだ。





















罪を隠すように私はまた「笑顔」を作る。











「何もかも消え去ればいいのに」














そんな我が儘を。















あとがき:またまた投稿させて頂きました。あいはらさん、すみません、こんなもので(滝汗)うちの連載見てくださればわかると思いますが、姉ちゃんと趙雲の番外編のように書きました。いや、読んでなくても楽しめるように書きましたが…;ダークですみません…。20060815