09:キス











それは、ヴァリラとプラティが二人で優雅に紅茶を飲んでいるときのこと。

「――ねぇ、ヴァリラ?」

「なんだ、プラティ。」

少し紅茶を飲んで、カップを置いた。












「――――…キス、しよ?」


















「――っぐ!?」

そのプラティの言葉に、ヴァリラは珍しくむせた。

危うく、紅茶を吐くところで。

なんとか落ち着きを取り戻し、もう一度聞いた。













「…プラティ、お前、さっき何を言った?」

「だから、キスしようって言ったの。」

頬を膨らませて、可愛らしく、上目遣いでそう言う。

「意味をわかって言っているのか、プラティ?」

恥ずかしさの為か、ヴァリラの眉間には皺がよっている。

「もちろん。」

ケロッとした顔で答えられた。

「サナレやラジィに何か言われたのか?」

「ううん。わたしの意志だよ。」

そんなことをはっきり言う。






ヴァリラは、まさかプラティからはっきりと「キスをしよう」なんて言われるなんて、とか、俺の立場は一体どうなるんだ、とか色々と頭に廻って溜息をつく。

自分は帝王だと自称しておきながら、この少女のこととなると弱くなると自覚していた。







目の前のその少女を見ると心なしか、頬が赤くなっている。

目が合って、つい目を逸らしてしまった。














「―――…やっぱり、嫌、なんだ…。」









そんな言葉をプラティはポツリと呟いた。

「嫌だから目逸らしたり、キスしたくないんだ、ヴァリラ…。」

見ると、俯いて、小さく言葉を紡ぐ。

「…やっぱり、『好き』って…聞きたいのに、わたし…。」

彼女らしくない弱弱しい声でそう言った。

薄っすら涙が見える。












ヴァリラは溜息をまたついて、椅子から立ち、プラティの横に並んだ。

「ヴァリラ…?」

見上げてくるプラティの顎を持ち上げ、唇を重ねた。

まさか、キスをしてくるとは思わなかったプラティは驚いた。

長い時間、二人のそれは重なっていて、やっとそれが離れた。

ヴァリラとプラティの瞳が交差する。

「…お前らしくないな、プラティ。」

やっと口を開いたヴァリラはそう言った。

「俺は、嫌なんて一言も言っていないだろう?」

「けど、じゃぁ…。」

なんで、『好き』と言ってくれない、キスをしてくれない。

そんなプラティの意志が読み取れる。

「……。」

ヴァリラの顔が少し赤くなったように思えた。

それから、プラティの額に小さくキスをして、耳元で呟いた。











――――自分を、抑えられそうにないからだ、プラティ。













この気持ちは溢れ出るほど大きくて、キスをしたら、抑えられないだろう。

けれど、それで彼女を不安にしてしまって。

決して、嫌なわけじゃない。














「よかっ…た…。えへへ、ごめんね?ヴァリラ。」

涙を浮かべて、プラティは笑顔を作った。

それがまた可愛らしくて、ヴァリラは顔を染めた。

「――っ!」















意地悪く笑って、「…もう抑えないからな。」という言葉と共にキスが降り注いだ。



















あとがき。

マジで襲われる五秒前☆って言ったら、全国のヴァリプラファンに殺されそうです、私(え)とりあえず、ヴァリラさんはきっと素直に気持ちを言えないんでしょうね。それがプラティさんにとって不安材料だと。んで、今回の話ですよ(何)一歩間違えたら裏直行ですね、この小説。(コラ)

読んでくださいまして、ありがとうございました。

20050912 伊予