「メイプル・キス」 この頃、私、は悩みがある。 それは…。
「零一さん…。」 大好きな、零一さんの部屋で、大好きな、零一さんの綺麗な顔が近づいてくる。 私は瞳を閉じ、お互いの呼吸が分かるほどになった。 あぁ、これから甘いキスが繰り返されるんだ、そんなことを思いながらこの僅かな時間を楽しむ。
慌てて、とっさに零一さんの顔を押しのけてしまった。
「うっ…!」
そして、その場は一気にダークネス突入。
「…ぁっ…ご、ごめんなさい、零一さん…ッ!」 その表情に耐えられなくて、私は飛び出してしまった。 「っ!」 後ろから私を呼ぶ声がしたがそんなことお構いなし。 私の、ただ小さな悩みで大好きな人を傷つけてしまった。 今更後悔して、私はただ走り続けた。
そこのブランコに腰を下ろした。
触りながら心が痛んだ。 「これじゃぁ…キス、出来ないよぉ…したいけど…っ。」 でも、こんな理由で零一さんを傷つけてしまった。 もう訳も分からなくなって、無性に涙が溢れた。 「…ぅう〜ッ…クッ!」 桜も散り始め、花びらが足元に落ちた。 それを目で追うと、いつの間にか私の足元に、花びらと、見慣れた靴があり、見慣れたあの人が立っていた。
「…ヒッ…ック…!れ、零一さんっごめんなさい!!」
いきなりの行動に驚いた様子だったが何も言わず、抱きしめてくれた。 やっぱり、私は、大好きなんだ、零一さんのこと…。
「うん…本当にごめんなさい…。」 優しく涙を拭いてくれて頭を撫でてくれた。 それだけで私の心は暖かくなる。 「さて…じゃぁ、どうしていきなり飛び出して行ったんだ?」 ちゃんと零一さんに伝えよう。 女のプライドなんか捨てて。 だって 大好きな人だもの。 「あ、あの…笑わないでね?…わ、私、この時期になると唇が荒れるの。今も荒れてて…恥ずかしかったの…。」 零一さんの表情を見ると、目が点の状態になっていた。 それから、ゆっくりと微笑み、手を私の顔に添えてきた。 「それなら…。」 「…んっ。」
「…俺がこうして、直そう…。」 そう呟いてまた、先ほどとは違う、甘いキスをしてきた。
毎年直されるので私にリップがいらなくなった。 そして、今日もそれが繰り返される。
fin. |
|||||
あとがき
いや、女の子って唇がガサガサのときキスしたくないですよね?私はそういうカンジでしたけど。ま、先生に毎日キスしてもらったらすぐに治ることでしょう(笑) 読んでくださいましてありがとうございましたv 2003 4 22 伊予 |
|||||