バカ







大広間では盛大なクリスマスパーティーが開かれていた。

なんとなく私はそこに行く気がしなくて、校内をブラブラ散歩していた。






兄たちやハリー、ハマイオニー、友人たちの誘いもあったけど、断って一人歩いていた。





一人で散歩って、ちょっと楽しかったりする。

いつもは見落としがちなところが見つかったり。

それに今は夜だから、面白いことも起こるかも知れない。

だって今夜は聖夜だもの。







そう思いながら少し微笑んで歩く。

窓から見る夜空の星が笑いかけているようだった。

廊下は松明の明かりがあるけれど、やっぱり薄暗い。

そんなとこも面白いなと思っていると、先の空き教室から物音がした。








「…何かしら?」

そう呟いて、私はその教室に向かった。

杖を出して教室を照らす。

見るとそこはスリザリンの生徒がよく集まる教室だった。

「…やだなぁ…。」

小さく呟いたつもりが、教室に響き渡る。








すると。

「なにがいやだ、だ。」

声がした。








驚いて悲鳴を上げそうになったけど、頑張ってその声のするほうに光を向ける。

おばけとかじゃなく、人間だった。

しかも、よく私をからかっていじめるスリザリンの。








「…なんだ、あなただったの。」

面白いくらい間抜けな声が出てきた。私ってこんな声だったっけ?

「僕がここにいて悪いのかい、ウィーズリー。」

ほら、口を開けば、こんなことばっかり彼は言う。

「いいえ、この教室から物音がしたから、入ってきただけ。それより、大広間に居なくて良いの、マルフォイ?」

「あんなつまらないパーティーにか?もう飽きたさ。」

やっぱり、面白いことは起きるものね。

私、初めて彼と普通の会話をしている。

「抜け出してきたの?」

「あぁ。」








彼は短くそう答えると立ち上がって私の近くに来た。

今まで、あんまり見えなかったけど、近くにきたら、彼の顔が良く見えた。







薄暗いこの教室でも綺麗な髪の毛とブルーアイ。

ドラコ・マルフォイという人物はあまりにも綺麗過ぎる。









頬が熱くなるのを感じた。





「ウィーズリーは?」

「え?」

「君はどうしてこんなところにいるんだ?」

「えっと…散歩していたの。面白いこと起こらないかなって思いながら。」

至極真面目に彼にそう言ったら、いきなり笑い出した。

「くっ…はは!面白いことか…っ!」

「な、何よっ笑うこと無いじゃない!」

「起こるとは思えないな。」








そう口に出して彼はなんだか、少し考え出した。

意地悪い笑みが見えた気がした。






「……面白いこと、僕が起こしてやろうか。」

「――え?」









その言葉と同時に、彼が目の前に来て、手があごに添えられて、唇が暖かいものに塞がれた。









一瞬、何が起きたのか判らなかった。

きっと一瞬だったんだろうけど、私には充分長い時間に思えた。







しばらくして、それが離れて、目の前にはやっぱり意地悪な彼の顔があった。








「―――ほら、面白いことが起きただろう?ジニー・ウィーズリー。」








私の顔は私の髪の毛と同じくらい真っ赤だろう。

呆然としている私を見て、彼が笑って、教室を出て行く。






彼が出て行く瞬間、小さく呟いた。









「―――…バカッ…こんなのないじゃない…!」







「…こんなことも、起きるのさ。」

そう言って彼は去る。








私は、ペタンとそこに座ってしまう。

聖夜のいたずらなのか、立場の違う私たちが、起こしてしまったこと。









窓から外を見ると、雪が降っていた。


クリスマスフリー小説、ドラジニです。自分が書きたかったものですが(笑)

2004年12月22日 伊予