月のダンス

〜Moon Dance〜
月の綺麗なある夜に空を見上げればきらきら踊っている。
それが儚くとも切なくとも踊り続ける月のダンス。
漆黒の闇のベールで覆われている一筋の光のステージ。
見てくれる「人」がいなくてもいい。
きっと自分だけを見てくれる「人」が現れるから。
たとえ、それが哀しい運命でも。
「あれ〜?ネス、どうしたの、こんな所にいて。」
いつものテラスに行くと先客がいた。
だけどトリスはそれがいつものようにごく普通に受け入れる。それはネスティも同じで。
「ここで僕が読書をしていて悪いか?」
「ううん、ゼンゼン。」
えへへっと笑い、ネスティのとなりにある椅子に腰掛ける。
ネスティは本の方に目をやっていたが内心、嬉しそうだ。
と、ネスティは気づいた。
この時間はいつも派閥の制服をまだ着ているのに今日は白いワンピース。おそらく寝着なのだろう。
「おい、トリス。そんな姿じゃ風邪をひくぞ。」
「えっ?あ、大丈夫よ。今日はちょっと早めに寝ようかなって思って。」
「早めに寝るのはいいがちゃんと起きてくれよ。」
「あはは...明日も起こしに来てね!」
ハァ...とため息をつくとネスティはまた本を読み始めた。トリスはというと月を見ていた。
今日はいつも以上に光が強い。
凛と輝く月は強さを感じる、とトリスは思っていた。
太陽のイメージがあるトリスだが実は結構月も好きなのだ。
きっと、この物語を聞いたから。
「ねぇ、ネス。覚えてる?昔「月」の物語を話してくれたこと。」
突然聞かれて驚いていたネスティはふと何かを思い出しそれまで読んでいた本をパタンッと閉じた。
「ああ、もちろん覚えているよ。」
「こんな夜に話してくれたからすっごく覚えてて。」
スッと椅子を立ちネスティの前に立つ。
「知ってた?昔物語に出てた「月のダンス」。すっごく憧れてて隠れてそれっぽいの踊ってたんだ。」
白いワンピースのまま、くるくる回った。まるでドレスを着て踊っているかのように。
…あの物語は僕たちの運命のようだった…
ネスティは楽しそうに回るトリスを見、目を細めた。
「…なぁ、トリス。その人たちを見てくれる「人」は現れたと思うかい?」
苦笑しながらネスティはトリスに問いかけた。
「えっ?う〜ん……。」
少し考え、パッと笑顔になり答え始めた。
「うん!絶対現れたと思うな、あたし。」
きっぱりと言い切るトリスにネスティは目を丸くした。
「きっと現れたよ。たとえ、どんなに辛くてもその先に希望を信じて待っていたと思うわ。」
トリスの答えにネスティは笑った。いかにもトリスらしい答えで。
「そうだな、トリス。」
―大丈夫...きっと現れるから――
それだけを信じて踊り続けた。
そして一人、また一人と現れ、いなくなってしまう。最後の一人になったその人は泣きながら踊った。
だって夢の中で聞こえる声があるから。その声の人は哀しい運命を背負っていたから。私も同じ運命を背負っていたから。
やっと現れたその人はとても綺麗な瞳をしていて私だけを見てくれて私だけを想ってくれる。
そしてその人と出会った瞬間、踊り続けてきた意味がわかった。
二人でいれば哀しくても悲しくてもきっと楽しいダンスになるから。
一筋の光のステージで私は踊る。
月のダンスを。
私だけを見てくれるその人の為に。
                                         fin
あとがきv
いやんv殴らないで下さいね〜!私お得意の歌の題名からSSを作りましょうvなSSでしたvちなみに松たか子さんの「月のダンス」です。
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