Wish you were here.







「…おねぇちゃん?どこ、いくの?」



夜も更け、辺りは暗闇が押し寄せてきている時刻。

トリスはそんな時間に外に出ようとしていた。



「んっ、ちょっと、『あそこ』行って来るだけだから、心配しないで?ね?ハサハ。」


「…でも…。」



「…お休み、をネスに言って来るだけだから。」



そう言うとトリスは笑顔を見せた。

多分それは、ハサハを安心させる為に見せたものだろう。

だが、ハサハには寂しい、悲しい笑顔にしか見えなかった。


「……気をつけてね?おねぇちゃん…。」

「…ん。判ったわ。」




バタンとドアが閉じるのを待って、ハサハはか細い声で呟いた。



「…おねぇちゃん…泣きそうな顔してた…。」



持っていた水晶玉を強く抱きしめていた。







「―――ハァッ…!ハァ…。着いた…。」


少し小高い所にそれはあった。



「こんばんは…ネス。」


トリスはそう言い、大樹を見上げる。




あの戦いからまだ数ヶ月――。余韻は確実に残っていた。



「ネス…。ネス…ッ!!」


トリスは大樹にもたれかかる様にして、ずるずると倒れていった。

そして、大樹の根元には大粒の水の跡。




「ふ…っ!!ネ…スッ!ネス……ッ!!!寂しいよぉ……!ネスティ…ッ。」





ネスティは大樹になってもトリスを見守っていた。

けど。

トリスはどうしても、この考えを捨て切れなかった。




「…ここに…っ!貴方がここに居てくれたら、いいのにっ…!!あたしの傍で、また叱ってよぉ…っ!!ネスティ…!」








暗闇の中。



悲しみの雫は



輝きを帯びて



落ちていった。






fin







あーとーがーき。

涙を流すトリスを書きたかっただけです(爆)

女泣かせなネスティさん。

何気にネタバレな小説です。

読んでくださいましてありがとうございました。

2003年12月29日 伊予