時計 |
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今日も鐘がなる
街に 始まりを告げるように 終わりを告げるように どこまでも響いていた。
今年は暖冬なのかゼラムには雪は降っていなかった。 それを少し寂しく思うトリスが居た。 「むぅ〜寒くなるだけでつまんないなぁ〜…。」 その言葉を冷静に隣りで歩いていた兄弟子兼恋人が返す。 「君は何を言っているんだ?いいか、雪は確かに綺麗だが積もりすぎると交通機関や…。」 「あー、ハイハイ!わかりました!」 またいつもの…と思い、いい加減に踵を返す。 この二人の会話はいつものことだ。 「それより、今日は何を買うの?」 「そんなことって…まったく…。今日は掃除用品だな。」 年末といえば掃除。 彼らは尊敬する先輩、ギブソンとミモザのパシリとして商店街を歩いていたのだ。 いつも世話と、迷惑を掛けていた。 このような買出しは今回で数回目だ。 何故こうのようになったかというと話しはこうだ。 丁度あの日はクリスマスパーティーがあった日だった。 忙しくて遅くに来たネスティを迎えるために履き慣れない靴で走ったトリスは足を挫いてしまい、ネスティと再会した後彼と一緒に転び、ドミノ倒しのように家具を壊してしまったのだ。 『す、すみませんっ!先輩!!』 『いや、いいんだよ、トリス?』 『ちゃんと僕たちが弁償しますので…。』 『――あら、いいのよ、ネスティ。』 ギブソンとミモザがにっこりと怪しい笑みを浮かべた。 『その代わり…ハイッv』 トリスの手にカサッと紙切れが渡された。 『そこに書いてある品、全部君たち二人で買ってきてくれないかい?』 『えっ??!こ、こんなに大量にですか?!』 その紙切れにはゴマのような文字でたくさんの掃除用品込み年末年始に関する物がびっしりと書いてあった。 『あら、ネスティ。嫌なのぉ〜?まさか、断るわけぇ?うちの家具を壊したりしたのに〜?』 『いえ、先輩、そんなわけでは…!』 『…断ると怖いよ、ネスティ…?』 『…あ〜んなことやこ〜んなことをバラすわよ?』 『『――行きます――。』』 と、こうなったのだった。 さすが、ネスティとトリスの先輩だ。 最後に「ネスティの仕事はエクス様から休みを貰っているから大丈夫よv」と付け足していた。 と、言うわけでこうして数回に分けて二人で買出しに来ているわけである。
空気も澄み渡り、いつもより「音」が良く聞こえる。 「――あっ…もう12時だね、ネス。」 聞くとゼラムのシンボルの時計台が12時を告げていた。 「ああ、そうだな。じゃぁ、そろそろ昼食にするか、トリス。」 「よかったぁ!もうお腹ペコペコ…。」 「ああ…さすがの僕も疲れた…。」 溜息を一つつき、近くにあったカフェテラスへと入っていった。
「―――でね...あっ、そういえばあの時計台にも話があるんだよ?」 「ほぅ…どんなのだ?」 「えっとね…。ずぅーっと昔のことだったんだって。あの時計台は昔お城とくっついていて、そこには綺麗なお姫様が住んでいました。そのお姫様は何故、そこに一人で居たのか。 それは実の父である王がお姫様の能力を恐れていました。 その能力は異界の者を話せる能力。 ほとんどの人はその能力を異質なものとして考えていました。 だから、お姫様は一人で監禁されていました。」 「トリス…話が長いんだが?」 「これでも短く省略してるつもりなんだけど〜?」 手元にあったジュースをさらに飲み、話を続ける。 「でも、お姫様は寂しくありませんでした。何故なら時計台から街を見ると決まって一人の青年と目が合い、優しい気持ちになれたからでした。 お姫様はそれだけでよかったのです。」 「…。」 「ちょうどその頃、いつ同じように外を眺めていると空から鳥が舞い降りてきました。その鳥の足には手紙がついていて、不思議に思いながらもお姫様はその手紙を開いてみました。 開いてみるとそこには淡いピンク色の花びらと丁寧な文字で書かれた手紙…。下を見ると青年が見ろと合図を送っていました。」 「…オチは見えているな…。」 「あ”−っ!もうネスってばぁ!」 ガタッとイスを立ち、ネスティが行く合図をする。 「ほら、行くぞ、トリス。」 「まだ話は終わってないのよ?」 「また、あとでな。今は買い物が先だ。」 「はーい。」 ブツブツ言いながら二人は街に消えた。 物語の最後を聞かずに。 ただ、それを気になっている者は居るが。
「まぁ、この街は古くからあるからな。」 「もう、ネスってば夢がないわね。」 二人は夕暮れに影を写しながら大きな荷物を両手に持ち、帰路についていた。 さっきまで昼を告げていた時計台の鐘が今度は夕方を告げていた。 「失礼な、僕にも一応夢と言うものはあるぞ?」 「へぇ、じゃぁ聞かせて?」 トリスの顔には好奇心と…何かの期待の色が出ていた。 しかしネスティはそれに気づかなかった。 「それは…。」 ――君と、ずっと一緒に居ること―― のどまで言葉が着たが口をつぐんだ。 「ネス…?」 「…な、なんで君に言わなくちゃいけないんだ?」 少し頬が赤くなり焦りながら答えた。 それを見、トリスは少し寂しそうな顔をした。 「…行こっか、ネス…。」 「?…ああ。」 後々、ネスティはこの行動を後悔することになった。
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