右ほっぺのニキビ
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「むぅ〜〜…。直んないなぁ、このニキビ…。」
自分の右頬に出来た赤いニキビと鏡越しに格闘しているトリス。外の快晴とは裏腹に不思議なオーラを出している。 「痛いし、直んないし、もう…っ!」 ちょんちょんと直らないニキビを突付いてみる。やっぱり、痒いような痛い感じだ。 「どうしてくれるのよ〜…、今日クリスマス会なのに…。」 壁に掛かったドレスを見てぼやいた。彼女の先輩、ミモザが見立てたそれはトリスの雰囲気にあった大人っぽい、洒落た淡い紅色のドレス…。 今夜は毎年あるクリスマス会だ。 昔の旧友たちが一斉にギブソン・ミモザ邸に集まってくるのだ。 もちろん、ネスティも。 この頃、派閥の仕事が忙しく顔も合わせられない。 久しぶりに取れた休みはこのクリスマス会の日なのだ。 なのに…。というわけで。 大きなため息を付き、カタンッと鏡を置く。 「…しょうがないっか……。」 時間も時間なのでドレスに着替える。 今はニキビより久しぶりに会える愛しい人を思い浮かべ微笑するトリス。 笑うたびに右頬のニキビが痛くなった。 |
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夜――ギブソン・ミモザ邸に旧友が集まってくる。
昔より幾分か変わっている皆に話は弾む。 「ねぇっ見て!ほら、雪が降ってる!」 大人びた外見だが中身は全然変わっていないミニスが声を弾ませ窓の外を指差した。 その声で人々は窓を見る。 「わぁっ、ホントだぁ…っ。」 それはトリスも例外ではなくて。 今は隣りにいない人のことを思う。 「ねぇ、トリス。ネスティは?」 隣りに正装したフォルテをつれたケイナが飲み物を渡しながら尋ねる。 「うん…まだ、派閥の仕事があって…。少し遅れてくるって言ってた…。」 しょうがないねと苦笑いを浮かべる。 やっぱり寂しそうな笑顔で。 |
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会も終盤、トリスは一人テラスに居た。
はらりはらりと落ちていく雪を見ながら。 「…やっぱり、来れなかったんだ、ネス…。」 手すりに腰を下ろし、空を見上げる。 はらはらと雪が舞い落ち、その冷たい風が肩を掠める。 息も白くなり、その向こうにクリスマスツリーが見えた。 「……。」 視界がぼやけ、慌てて手で目元をぬぐう。 寂しさで、会えない切なさが胸にこみ上げてきた。 この寒さかニキビも痛さを増していく。 「――――トリスッ!」 突然、聞きなれた、それでいて胸をくすぐる声が響いた。 テラスから身を出し下を見る。 「……ネス?」 その声の主の名を出し、こちらも返す。 見ると、急いで来たのか息が荒い。 「――待っててネスッ、今からそっち行くから!」 勢いよく、トリスはネスティにそう言い、玄関ホールに向かい、外に出た。 走っている途中、履き慣れないヒールに足をとられて少し挫いたがそんなこと気にしない。 外に出ると雪が積もるくらいになっていた。 そして、愛しい人が――。 「…すまいない…遅れてしまって…。」 タキシード姿の彼は本当に素敵だった。自分の姿と比べられないくらい。 「…ううん、大丈夫だよネス。ちゃんと来てくれたんだから…。」 そう言ってトリスはネスティの冷えた手を握った。 今はきっと、言葉では表せない。 「トリス、右頬に…。」 この雰囲気だけがすべて。 「――いいの、言わないでネス?」 ニッコリと笑い、そして右頬のニキビが痛くなった。 fin. |
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あとがきv
何の偶然か(因縁か)うちのキリ番を踏んでくださった浩さんのリク(ネストリ)です〜;リク正式になかったのでこの季節のネタにしました…;ヘボくてマジにすみません…;久しぶりにネストリ書いていて楽しかったです♪ちなみに題名は真綾さんの「グレープフルーツ」から「右ほっぺのニキビ」から取らせて頂きましたv(ヲイ) 読んでくださってありがとうございました。 2002 11 29 伊予 |
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