Pride










私は泣かない

あの人に笑われちゃうから

あの人の前では笑顔でいたいから

そう心に決めたから




――ねぇ、そう思うことは駄目ですか?










聞きなれないフレーズが耳を掠めた。

夕暮れの近いワイスタァンは帰宅を急ぐ人たちが多い。




金の匠合の仕事を済ませたヴァリラはいつもの噴水のある公園でその声を聞いた。






夕日に向かって流れるメロディー。







銀色の髪の毛が夕日色に染まっていて、誰が座っているのかわかった。











私は泣かない

微笑だけを浮かべていたいから

それだけが私の全てだから






――ねぇ、これが私の誇りなの










「――こんなところで何をしている、プラティ。」

歌を遮ってヴァリラは座っている銀髪の少女、プラティに話しかけた。

「あれ?ヴァリラ?どしたの?」

「それはこっちの台詞だ。」

いつものようにしゃべって、隣に座った。こんな風に話すのはあのトーナメント以来だった。





「うた…、歌ってたの。」

「聞けばわかる。」

なんともわからない顔をするプラティをヴァリラはただ見つめていた。

大抵、彼女がこんな顔をするとき、何かあったのだと知っていた。

「だが、聞きなれない歌だな。」

「うん。題名まではわからないけど、わたしの好きなうた。」







もう日は水平線の奥に沈んでいて星が瞬いている。

周りの街灯に灯が燈った。








「…仕事で、ヘマをしたのか?おまえらしくもなく。」

「――うぅん。そんなんじゃないの。ただね…。」








下げていた手に、彼女の手が重なる。偶然なのだろうけど、なんだか泣いているような気がした。









「――本当に、おまえらしくない。」










重なった掌を握ると、プラティは呟くように言った。




「…伝える、勇気って大事だよね、ヴァリラ。」

「あぁ。」









その勇気がなくて、胸が締め付けられるくらい苦しくなることだってわかる。







prideが邪魔して言えないでいる言の葉。








少しの沈黙の後。

プラティは立ってヴァリラの手をとったまま頬を染めて言った。








「―ヴァリラ、かえろ!」










胸が苦しくなっても

笑顔でいるから

泣きたくなっても

笑顔でいるから









ヴァリラは何も言わず、プラティの歩幅に合わせて歩く。




彼女が、泣きそうな顔じゃなくて。









笑顔だったから。
















この気持ちが本物なこと

――それがわたしの誇りなの










あとがき。

この小説のヴァリラ、別人100号くらいでしょうか?ヴァリラへ気持ちを伝えることが出来なくて悩むプラティを書きたかったんです。超微妙な小説…。私的に、ヴァリラはトーナメント終わってからは、プラティのこと見守っているってカンジが萌えるんですが。サモクラ小説のように、ちょっと大人になって口数の少ない彼が萌え(え)そうそう。本編は「オレ」、サモクラ小説では「俺」になっているんですよね。そこが大人になった感じしますよねヴァリラ!!

読んでくださってありがとうございましたv

2005 0325 伊予