ぶっちゃけ、女の子ネタです。ハッキリと症状を書いていたりします。大げさ過ぎるところもあります。出てたりします(汗)
それでも良い方は下へどうぞ。
傍にいるから
ある晴れた午後の昼下がり。
いつものように机に向かいプラティは鍛聖の仕事に没頭していると下腹部に重い痛みを感じた。
「…いたっぁ〜…。」
書類の上に頭を突っ伏して呻いた。
「どうしたのですか、プラティ様?」
整理を手伝っていたシュガレットが聞き返す。
「なんか、今朝からお腹痛くて…何か変な食べ物でも食べたかなぁ…。」
お腹をさすりながら、プラティは記憶を探った。
悪いものを食べた覚えもないし、悪いものを食べたって今まで平気だったからお腹を壊すわけないし。
悩んでいると、頭もガンガンしてくるようなカンジもする。
だんだん、体調が悪くなっている気もする。
それが現実のものとなってきた。
「少し体調が悪いのではないのですか?今日のお昼だって全然お食べになりませんでしたし…。お腹のほかに痛いところありますか?」
「うーん…。ちょっと頭がガンガンしてるかな…。それとお腹も痛いけど…重い感じもするんだよねぇ…。」
プラティの症状を聞いた途端、シュガレットは疑問に思った。いつも元気ハツラツのプラティ様がこんなに体調を悪くするなんて、と。
その考えは一つの結論を導き出そうとしていた。
「あの、プラティ様…今年でおいくつに…。」
「シュガレット、わたし、今日は早退する…リンドウ師にそう言っておいて…。」
シュガレットの質問が途中でプラティに遮られた。
言葉を繋げようにも、シュガレットがプラティの方を見るともうすでにドアの前に立っていた。
お腹に手を当てて。
「じゃ、何かあったら家に来てね…。」
「プラティさまっ…!」
バタンと無機質なドアの閉まる音がして、部屋は静まった。
取り残されたシュガレットというと心配そうな顔をしているが、嬉しそうな顔もしていた。
「…プラティ様…も、もしや…!!」
「……痛い、いたい…。なんでこんなに痛いの…?」
プラティはお腹が痛いのでスクーターにも乗れず、遠回りしながら家に帰ろうとしていた。
顔には脂汗が出てきていた。
それを左腕で拭い、右腕はやはり下腹部に添えている。
「うぅ…体調管理も出来ないなんて、バカだなぁわたし…。」
ずきんっとまた痛みが増してきた。
とうとう歩けなくなってプラティは道端でうずくまってしまった。
いつもは心地よいはずの海風が今はとても不快になってしまう。
戦闘でたくさん傷を負ったときよりも凄く悪い感じがした。
(…ヤダな…こんなに……。)
意識が朦朧とするなかで、突然声がした。
「おい、どうしたプラティ?!」
誰かが駆け寄って、彼女の肩を抱いた。
その腕の感触は誰よりも知っている人の腕で少しプラティは安堵の息を吐いた。
「……あ…ヴァリラ…。へへ…ごめん、ちょっと体調悪くって…。」
笑った顔がどこかぎこちなかった。
「無理をするな、具合が悪いのだったら。」
「…うん。」
「――ほら、家まで俺が送ってやろう。」
ヴァリラのその気遣いが本当に嬉しくて、プラティは言われるままに身体を預けた。
突然、何かがどっと身体を流れ落ちる感じがして、ヴァリラの服を強く握ってしまった。
それを見て、ヴァリラは握っているところに視線を落とした。
ふと、プラティがいつも着ている服の下側に何かの模様らしきものが目に入った。
まるで水に濡れて色が濃くなったような。
それが、徐々に大きくなっていく。
ある知識が頭の中を廻る。
――プラティは俺の二つ下…。
それがなんなのか安易にヴァリラは予想がついた。
と、同時に、知識では知っていたが、実際の状況にかなり戸惑った。
「―――プラティ、お前の母親の家に行くぞ、いいなっ?!」
「…う、うん……。」
ヴァリラに抱き上げられ、そこでプラティの意識は途切れた。
ただその腕が頼もしかったことを覚えている。
プラティが目が覚めたのはふかふかのベットの中だった。
先ほどよりも痛みは幾分か軽くなっているが、やはり独特の重い痛みはまだあった。
「あら、プラティ起きた?」
いつもの笑顔でアマリエが入ってきた。
「ほら、これ食べられる?それと、湯たんぽ、まだあったかい?」
そう言われてみると、腰らへんに湯たんぽが置いてあった。
「う、うん…大丈夫…ありがと、お母さん…。」
「まだ痛む?」
スープを乗せたおぼんをベットの脇においてアマリエは続けた。
「あなたは私とおんなじで、重いかもね〜。」
それを聞いて、プラティは驚いた。
「お、お母さん…そ、それって、そのっわ、わたし。」
「あら、気づいてなかったの?ヴァリラ君は気づいてたのに。まぁ、あんな様子じゃ気がつくわよね。」
「えっ?!えっ??!」
目を真ん丸くして、だんだん顔が真っ赤になっていくのをプラティは感じた。
もちろん、プラティだって知識では知っていた。
知っていたけれど、まさか自分がもう『なる』なんて思いもしなかったわけで。
しかもこんなに痛いものだなんて。
考え付かないわけで。
「――まぁ、これで大人の女性の仲間入りね、プラティ。」
アマリエの笑顔がとても意地悪くてプラティは目を真ん丸くしていた。
ヴァリラに今度会うとき、どうしようかということで頭の中がいっぱいになった。
一方、プラティを送り届けてヴァリラはいつも会う、あの噴水に来ていた。
プラティが困惑しているのと同時に、彼らしくもなく、ヴァリラは戸惑っていた。
今日あった出来事もそうだけど、一番戸惑っていたことは。
『プラティは女の子』だということだった。
出会った時はまだあどけなくて。
ライバルに異性なんて関係ないと思っていても。
この頃、とても可愛く見えて、心をかき乱される。
会うたびにこの感情が増えていく。
噴水の水鏡を覗いてみた。
やはり自分は男で彼女は女。
その戸惑いについていけない自分がいた。
「……らしくないな、俺も。」
ふっと笑って、もう暗くなった空を背にして歩き出した。
ライバルとして傍にいるだけではなく。
今日みたいに傍にいて。
これからも『彼女』の傍に『男』として。
月を見上げ、自分はなんて欲深い男なんだとヴァリラは思った。
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